公共財にエグジットを与えるOptimism
下のLast week in crypto の項目で書いていますが、Ethereum L2であるOptimismがトークンを発表しました。
Optimismのビジョンは「公共財を支援すること」で、ここでいう公共財とは、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を指します。
オープンソースの開発を持続的にするための資金調達やマネタイズは、課題となっていますが、スタートアップでいうところの「エグジット」があれば、オープンソースのプロジェクトをより活発に、かつ持続的にすることができる、とOptimismは考えているようです。そんなビジョンは、ドキュメントを読むとよく分かります。
そのためOPトークンのモデルは、L1トークンのようにガスに使われたり、ステーキングやバーンをするようなモデルとは異なり、ガバナンス重視のGitcoinに似たモデルとなっています。
バーンなどの、トークンが直接的に価値を獲得する機構がないため、OPの価格がどの程度支えられるのか疑問ですが、ETHがEIP1559でバーンモデルに移行したように、将来的にいくらでも議論やアップグレードの余地があると思います。
■ Last Week in Crypto
1.Ethereum scaling startup Optimism confirms governance token as part of broader shift
Optimismが、OPトークンの導入とエアドロップ、また新しいガバナンス体制を発表しました。他の大型エアドロップとは異なり、今後も複数回のエアドロップを予定しています。
最初のエアドロップは、初期のOptimism利用者とアクティブなEthereumユーザーに、OPトークン供給量の5%が割当られています。
そして今後プロトコルの使用や貢献に対して、供給量の14%がFuture Airdropsとして割当られています。これらは、第2四半期に来る予定になっていますが、対象の条件に関しては新しいガバナンス体制「Optimism Collective」によって決められます。
この「Optimism Collective」は、Token HouseとCitizens Houseの2つから構成されています。
Token Houseは、OPホルダーで構成され、プロトコルのアップグレード、プロジェクトのインセンティブなどを担当する
Citizens Houseは、譲渡制限のあるNFTを保有する人たちで構成され、主に「公共財の資金調達」を担当する
この「公共財への資金提供」に関しては、以前かいた記事もご覧ください。『公共財にエグジットを与えるOptimismの実験』
ちなみに関係あるのか分かりませんが、Optimismの発表記事からNFTを手に入れることができました(今は中断されているようです)。
今後この2つのハウスが、Optimismから得られる収益を使って、どのように公共財を支援するかを決めていきます。時期としては2022年後半に開始される予定だそうです。
またOptimism Foundationが新しく設立され、この財団が「スチュワード」として方向性を提案して、実験をし、最終的には解散することになります。財団には、Optimismの創設者2人などが含まれています。
スチュワードという言葉は、Gitcoin DAOでも使われていますが、DAOの中でも積極的に方向性を決めていく役割を指します。
2.Introducing Polygon Supernets, Powered by Polygon Edge; $100M Ecosystem Fund
Polygonが、「スーパーネット」という機能を発表し、それを利用して開発するプロジェクトに合計で$100Mを投資していく、という発表です。
「スーパーネット」は、プロジェクト側がコストをかけずカスタマイズ可能なチェーンを作ることができる機能です。
スーパーネットを利用したネットワークの構造は、大きく4つのタイプが想定されていて、例えば「MATICステーキングで担保されるセキュリティを享受できる」などを選ぶこともできます。
またどのタイプでもいつでも変更することができるようで、例えば、限られたノードが運営するProof of Authorityからスタートして、その後Proof of Stakeに移行する、最終的にはEthereumのL2に移行する(rollupやvalidium)、などもできます。
先週かいた話にも繋がりますが、アプリケーションに特化したブロックチェーンが必要で、今後需要が増えていくだろうという予想なのだと思います。
3.Peter Thiel's Founders Fund co-leads $20 million Series A for Ondo Finance
Ondo Financeは、$20Mドルを調達しました。
ピーター・ティール氏のFounders Fundと、Pantera Capitalがリードしました。Founders Fundがトークンベースのプロジェクトへの投資をリードしたのは今回が初めてだそうです。他にもCoinbase Ventures、Tiger Global、GoldenTree Asset Management、Wintermute、Flow Traders、Steel Perlotなどが参加しています。
ネイティブトークンONDOは数週間のうちにローンチということで、CoinListでパブリックセールすることが発表されています。
Ondoの仕組み
Ondoは、DEX上に対応した「Vault」という商品を提供していて、固定利回りと変動利回りの2種類のVaultがあります。
固定利回りのほうにデポジットした人は、期間終了後に固定の利回りを受け取り、残りのリターンを、変動利回りにデポジットした人がすべて受け取ります。
LaaS
Ondoは上記の仕組みを利用して、LaaS(流動性サービス)も提供しています。これは、DAOが自分たちのトークンの流動性を高めるために使うもので、DAOのトークンとステーブルコインをペアにして、どこかのDEXに流動性提供することができます。
最初の例として、まもなくSaddle FinanceがOndoの流動性サービスを利用して、SDLトークンローンチをする予定になっています。
この例では、Ondoに対して、FraxがステーブルコインFRAXを提供し、SaddleがSDLを提供します。それらをOndoは2つをペアにしてSushiswapに流動性として提供します。
一定期間後、Fraxは、元本と金利を受け取り、Saddleがプールから残りのすべてトークンを受け取ります。それぞれの利点としては、
Saddleチームは、$5MのSDLトークンを使って合計$10Mの深い流動性を作れる
Fraxチームは、固定金利を得られる + ステーブルコインFraxの普及につながる
と理解しています。
4.USN stablecoin goes live on Near Protocol
Near上のステーブルコインUSNがローンチされました。NEARトークンを担保として預けることで発行することができます。ドル価格に安定させるための仕組みは、2つです。
1つ目は、USNが、1ドル相当のNEARトークンで取引されるようにする裁定取引システム
2つ目は、NEARトークンとUSDTトークンをもつ「準備基金」
そしてステーブルコイン発行者は10%ほどの年利を得ることができるようです。これは担保を預かるDecentral DAOが、NEARトークンをNEARチェーンのバリデータにステーキングすることで報酬を得て、そこから払われるそうです。当初は追加のインセンティブによって20%以上のAPYを追加する可能性が高いとのことです。
5.CXIP Labs Taps Celebrity Investments in $6.5M Round for NFT Development Suite
CXIP Labsが、NFT発行の際の課題を解決すべく、$6.5Mドルを調達しました。
開発する新プロトコル 『Holograph』 は、オムニチェーンNFTプロトコルと紹介されていて、
クリエイターがコーディングなしに新しいNFTを発行できるインターフェース
開発者が、ブロックチェーン間のNFT移動を簡単にできるようにするAPIとブリッジ
という機能を含む予定になっています。
6.Web3 startup Rain raises $6 million to launch corporate credit cards for DAOs
米国のスタートアップRainは、DAO向けにクレジットカードを提供するため、$6Mドルを調達しました。
Lightspeed Venture がリードで、Coinbase Ventures、Uniswap Labs、Terraform Labsなどが参加しています。
Rainは、DAOに対して、クレジットカードと経費管理ツールを提供する予定です。これはけっこう需要があって、銀行はWeb3スタートアップと連携したがらないことが多く、資金調達の凍結につながってしまうからです。
Rainカードを使うには、USDCを持つウォレットに接続します。カードで支払いをすると、RainがUSDCから法定通貨への交換をし、加盟店はVisaネットワークで法定通貨を受け取ります。
7.DeFi wallet Argent raises $40 million and takes aim at gaming
ロンドン拠点のウォレット企業 Argent が、$40Mドルを調達しました。
Fabric VenturesとMetaplanetがリードし、既存の投資家であるParadigmや、新たにStarkware、Jump Crypto、Animoca Brandsが参加しています。
ArgentはまだDeFi中心ですが、NFTゲームやメタバースなどでに力を入れていきたいそうです。特にゲームのためのデファクトウォレットになることを目指しているそうです。
ブラウザウォレットの「Argent X」はStarkNetに対応しているので、ゲーム開発者が増えているStarkNetに今後注力していくような気がします。そう考えるとStarkwareが今回の投資に参加しているのも納得です。
ちなみにArgentのモバイルウォレットのほうも、zkSyncのアカウントが作れたりと便利なので、利用しておくと良いと思います。
8.Mad Realities Raises $6m Seed Led By Paradigm
メディア企業 Mad Realities は、$6Mドルを調達しました。
Paradigmがリードし、パリス・ヒルトンの11:11 Mediaなどが参加しています。またエンジェル投資家としては、Friends with Benefitsの共同創業者や、Syndicateの共同創業者などが参加しています。
Mad Realitiesは、NFTを通じて動画を共同制作できるプラットフォームを目指しています。3月には実験のデート番組「Proof of Love」をYouTubeで開始していて、出演者はNFT保有者の投票によって選ばれたものでした。
これまで172ETH(約$0.5M)をコミュニティから調達し、その資金で運営されていましたが、今回の投資によりエンジニアを増やしてスケールさせる予定です。
将来的には、ガバナンストークンを導入し、新しいタイプの番組を共同制作していく予定になっています。
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