BTCのATH
Bitcoinの価格がATH(All Time High)、つまり過去最高額を更新しました。
米国初のBitcoin ETFの開始をうけて価格があがり、Bitcoinの時価総額はスイス・フランの時価総額を上回り、世界第13位の通貨となりました(現在は少し下がって14位に戻しています)。
■ Last Week in Crypto
1.Worldcoin, Now Valued at $1B, Has Grand Plans to Get You to Gaze Into the Orb
今週分は、なんだかスキャムのようなタイトルになってしまいましたが、話題になっているWorldcoinについてです。
Y Combinatorの元CEOで有名なSam Altman氏が、急に新しいプロジェクトを発表しました。物理学者のAlex Blania氏と共同で、Worldcoin.org というプロジェクトを進めているそうです。
さらに、a16z、Coinbase Ventures、Three Arrows、FTXのSam、LinkedInの創業者 Reid Hoffman など有名な投資家から$25Mドルを調達したことも発表しています。評価額は現在1Bドルです。
地球上のすべての人間がワールドコインという暗号通貨を手にできるようにするという野望で、ベーシック・インカムの文脈でみることができます。
オーブという球体に対して、自分の網膜をスキャンさせて、暗号通貨ワールドコインをまだ受け取ってない人間だと確認し、うけとることができるそうです。
Worldcoinの予測によると、2023年までに10億人以上の人々がオーブを眺めるようになると考えているそうで、未来的だという声や、ディストピアだという声もあり、賛否両論です。
※実は6月にBloombergですでにリークされていました
「Sam Altman Wants to Scan Your Eyeball in Exchange for Cryptocurrency」
オーブ・オペレーター
ワールドコインは今ベルリンに拠点を置いていて、70名の従業員がいて、約30個のオーブ(球体)を持っているそうです。
このオーブは、パートナーになった人や事業者が「オーブ・オペレーター」となって取り扱い、村や駅、大学のキャンパスなど色々な場所にオーブを持ち込んで、人々に対してワールドコインを受け取るように説得するそうです。
そしてその場でオーブが、網膜を元にアイリスハッシュと呼ばれる固有の識別子を作成し、ワールドコインをまだ受け取ってない人間だと確認し、配布します。
共同設立者いわく「プライバシーを保護する手法」らしく、ユーザーの網膜の写真はどこにも保存されず、ゼロ知識証明を使って情報を公開せずに安全に保つことができるそうです。またユーザーの名前やその他の識別情報が収集されることはないそうです。
ワールドコインは11月から、毎月4,000個のオーブを生産し、世界中のオーブ・オペレーターとマッチングさせる予定になっています。
コインの分配
各人が受け取る価値は、いつ参加したかどうかによって異なり、参加者が増えるにつれて価値は減少しますが、大体10ドルから200ドルの間だろうと言われています。これらは2年間をかけて分配されますが、10%はオーブが生成したウォレットアプリですぐに利用できることになっています。
どのチェーンでコインが発行されるかに関しては、Ethereumのレイヤー2上で動作するそうです。
分配としては、ワールドコインの合計供給の100億枚に対して、80億枚(80%)を「地球上のすべての人」に提供することを目標にし、残りの20億枚(20%)は、ワールドコイン財団と投資家に確保される予定になっています。
ちなみにオーブのデザインは、アップルやポルシェのデザインを手がけたThomas Meyerhoffer氏がデザインしたそうです。
2.Facebook's Novi will lanch a pilot with Paxos's stablecoin
しばらく更新がなかったFacebookのウォレットNoviですが、米国とグアテマラで試運転を少しずつ進めると発表しました。
元々の構想は独自チェーンを作って、独自のステーブルコインを発行することでしたが、今回の発表では、USDP(Pax Dollar)を使うそうです。つまり独自チェーンは必要なく、「Facebookが Ethereum を利用する」形となっています。
将来的にはDiemステーブルコインをローンチする予定は変わっていないようで、「Diemが規制当局の承認を得て稼働したら、NoviをDiemとともにローンチする予定」とプレスリリースに記載されています。
3.Introducing Timeswap: Fully Decentralized AMM based money market protocol
新しいDeFiのレンディングプロトコルTimeswapが、Multicoin Capital、Mechanism CapitalとDefiance Capitalなどからシード資金を調達しました。エンジェル投資家では、Balaji Srinivasan、Larry Cermak(TheBlock)、Ryan Sean Adams(Bankless)など界隈の有名な個人が参加しています。
Uniswapのx*y=kのようなAMMコンセプトを、固定満期のレンディングに持ち込んだものと言えます。
Timeswapの特徴
Timeswapでは、貸し借りプール内のトークン量が変化することで、金利と最低担保率が変化します。例えば、貸し出し用に多くのトークンがプールに供給されると、金利と最低担保率は減り、逆に借りる人が多くなると、金利と最低担保率は増えるように自動で変化します。
金利や担保率が市場価値から乖離したときは、アービトラージャーが貸し出し or 借り入れをして是正することを期待する、という設計になっていて、外部の価格オラクルを参照しません。Uniswap(v1/v2)と同じようなスタンスです。
なので特徴をまとめると、
オラクルを使わない
価格オラクルを必要とせず、プール内のトークンの需要と供給(X*Y*Z=Kという内部の数式)によって必要な金利と担保が決まります。
パーミッションレス
この前書いたFuseのプールのように、パーミッションレスなので、誰でも好きなトークンを貸し借りプールを作ることができます。任意の満期日を設定することもできるようになっています。固定満期
Timeswapプールは固定満期になっていて、ボンド(債券)やオプションのような固定満期の金融商品を作ることができるそうです。プールが独立
これもFuseと同じように、各プールが孤立しているため、ある担保が崩壊しても他の市場に影響を与えない設計になっています。攻撃耐性
プロトコル外部のオラクルやリクイデーターは使わないので、攻撃の受けにくいと言えます。
となります。
ここ最近はレンディング・プロトコルの進化版がいくつも準備されていて、先日かいたFuseに加えて、Euler、Silo、Timeswapなどが間もなくローンチされ、レンディングプロトコルの進化が進みそうです。
またDeFiレンディングの話題ですが、Morphoというプロジェクトが、NascentとSemanticをリードとして、$1.35Mドルを調達しました。他にAngelDAO、Cherry Ventures、Stake Capital、Atka Capital、Faculty Capital、20人以上のエンジェルが参加しています。
Morphoとは
コンセプトとしては、AaveやCompoundなどの既存のレンディングプロトコルを利用して、APYを改善するプロトコルです。ホワイトペーパーは来週リリースされる予定になっています。
Morphoを利用すると、既存のレンディングプロトコルの『貸すAPY』と『借りるAPY』の中間の値(P2P APYと呼ぶそうです)を利用できるようになり、貸す側はより高いAPYを得られ、借りる側はより低いAPYで借りることができるようになります。
Morphoのスマートコントラクトが、既存のレンディングプロトコルの流動性プールに接続し、接続先の流動性と清算条件を維持しつつ(AaveならAaveの、CompoundならCompoundの条件を維持しつつ)、資本効率を向上させます。
ユーザーは「Morphoによってマッチングされている間はP2P APYを享受し、マッチングされていないときは、接続先プールの元のAPYに戻される」となるそうです。
5.Obol Technologies raises $6.15 million to build a crypto staking protocol
Obol Networkが$6.15Mを調達しました。創業者は、元ConsenSys幹部のCollin Myers氏です。
ConsenSysの創業者であるJoseph Lubinが設立したVCであるEthereal Venturesがリードし、Coinbase Ventures、Acrylic Capitalなどが参加しています。
Obolはステーキングのインフラとなるプロジェクトで、Ethereum2.0にステークするためのテストネットを近日ローンチ予定です。将来的にはより多くのブロックチェーンをサポートする予定になっています。
Obolの技術「SSV」
Obolネットワークは、Ethereum財団と共同でとりくんだ技術、SSV(secret shared validator)を活用しています。
SSVは、バリデーターキー(バリデーターを操作するためのパスワード)を複数のオペレーター間で分割することができ、「マルチシグウォレットの考えをバリデーターに応用したもの」と言えます。Obolのドキュメントでは『マルチ・オペレーター・バリデーター』と名付けています。
そのためObolでは、複数のバリデータ運用者によるステーキングが可能になり、単一のオペレーターによる障害を防ぐことが期待されます。
Lidoグラント
LidoのようなLiquid Stakingのプロジェクトは、将来バリデータのインフラをObolに移行する可能性があります。実際Lidoは、先月Obolに100,000ドル分のグラント(LDOトークン)を提供しています。
将来パブリックチェーンのステーキングは、(障害やそれに伴うステークされたトークンの没収を防ぐため)SSVを使って複数のプロバイダーで行うのが多くなるかもしれません。
6.Cross-chain DEX zkLink raises $8.5 million in seed funding
ゼロ知識証明ロールアップ(zk-rollups)を活用したクロスチェーンのDEXであるzkLinkが、シードで$8.5Mドルを調達しました。
Republic Cryptoリードし、Arrington Capital、DeFi Alliance、Huobi Ventures、Ascensive Assets、Morningstar Ventures、GSR、Marshland Capitalが参加しました。
今年後半にメインネットをローンチ予定になっていて、現在テストネットで、試すことができます。
テストでは、Ethereum、BSC、Polygon、Huobi Eco Chainのクロスチェーンのスワップができます。今後他のチェーンもサポートし、クロスチェーンのファーミングやステーキングが追加される予定になっています。
今回の調達は、SAFT(Simple Agreement for Future Tokens)による調達ということで将来トークンの発行を予定しています。メインネットのローンチ後に、トークンセールをするそうです。
7.Andreessen Horowitz Invests in New Meta4 NFT Fund
Meta4 Capitalは、a16zなどから投資をうけ、NFTに特化した新しいファンドを立ち上げると発表しました。
Bored Ape Yacht Clubなどのアート、コレクタブルNFT
Zed RunなどのゲームNFT
バーチャルの土地などのメタバースNFT
などを保有・投資する予定です。
8.DeFi Protocol Element Finance Raises $32M in Series A Round
DeFiの固定金利プロトコル Element Finance が、$32Mドルを調達しました。
Polychain Capitalがリードで、前のラウンドでも投資していたa16z、Placeholder、A.Capital Ventures、Scalar Capitalが参加し、新たな投資家としてRepublic、Advanced Blockchain、P2P Validator、Rarestone Capital、Ethereal Venturesが参加しました。
Element Financeは、前回書いたTempusと同じように、Principal と Yield に分割して、それらを交換できるようにして、固定利率の利回りやレバレッジなどを可能にするプロトコルです。
このElement, Sense, Tempusあたりは、機関投資家の参入が増えると伸びる可能性があるので、触っておくと良いと思います。
9.Zaki Manian's DeFi project Sommelier raises $23 million in new funding
DeFiのトランザクションを自動化するプロジェクト「Sommelier Finance」が、シリーズAで$23Mドルを調達しました。
Polychain Capitalがリードで、Alameda Ventures、Zola Ventures、Byzantine Ventures、Tendermint Ventures、Secure Ventures、D1 Ventures、Ferngrove Venturesが参加しました。
SommelierはCosmosを利用したネットワークで、Ethereumの状態をリアルタイムで監視し、ユーザ条件に合わせてトランザクションを作って、署名することができます。
すでに利用することができますが、例えば、
「ソムリエノードがEthereumを監視して、ある条件(インパーマネント・ロスが高すぎるなど)が満たされると、ユーザーの資産をLPプールから引き出すトランザクションを自動に作り署名する」
などができます。
今回新たな資金を手に入れたソムリエは、プロトコルをアップグレードして、DeFiプロトコル全体の流動性を管理しやすくする「ソムリエセラー」をローンチ予定です。
10.Cosmos is building a new blockchain called Sagan for experimentation
同じくCosmosの話題ですが、テストと実験のために、Cosmosに加えて『Sagan』という新しいブロックチェーンを作ると発表しました。
Polkadotに『Kusama』という実験ネットワークがあるのと同じで、Cosmosにも『Sagan』という実験ネットワークができ、メインネットで稼働する前に試行錯誤するためのブロックチェーンになります。
実験ネットワークといっても、テストネットとは異なり、実際に価値をもつトークンが流通します。そのため、バグや悪用を見つけようとする人のインセンティブも高まります。
11.Arkadiko — Strategic Raise.
Stackというチェーン上で、ステーブルコインを発行するプロジェクトArkadikoが、$2.5Mドルを調達しました。将来発行されるDIKOというトークンによる調達になっています。
DeFi中では珍しく、Stacksというチェーン上で開発されています。前回書いたマイアミコインのCityCoinsと同様です。
Ethereum上のDAI(MakerDAO)と同じように、Stack上のSTXを過剰担保にして、USDAを発行することができます。
投資家はCoinSharesやStacks Acceleratorなど、Stacks(STX)の支援者になっていて、これらの投資家は、DIKO/STXや、DIKO/USDAプールの流動性を最初に提供することにもなっています。
12.‘Bridge Szn’ Continues With $2M Raise for Stablecoin Connector Symbiosis
ステーブルコインのブリッジを提供するSymbiosis Financeが、$2Mドルを調達しました。Blockchain.com Venturesがリードで、Wave Financial、BTC Inc、KuCoin Labs、Injective Labs、DAO Maker、Primitive Ventures、Kairon Labs、Gate.io、Richard Daiが参加しています。
現在、Ethereum、Binance Smart Chain、Polygon、Avalanche、(Huobiの)HECOをサポートしていて、今後レイヤー2や、Solanaのようなレイヤー1もサポート予定になっています。
Symbiosis Financeでは、SMBトークンと、セキュリティのためのステーキング&スラッシングを利用します。バリデーターが、スワップやブリッジングの手数料を受け取るようです。
現在はEthereum上でホストされていますが、最終的にはSolanaに移行する予定です。チームの投資家が最初のバリデーターになる予定だそうですが、今後一般にも公開される予定になっています。
13.Solana-based play-to-earn NFT game MonkeyBall raises $3 million
Solana上の Play-to-earn NFTゲーム MonkeyBall が、$3Mドルを調達しました。Jump Capital、CMS Holdings、Solana Capital、6th Man Ventures、NFXなどの投資家が参加しています。
MonkeyBallはイスラエルのチームで、プレイヤーと観戦者に報酬を与えるNFTサッカーゲームを作っています。
プレイヤーは、ゲームに勝ったり参加したりすることで、MonkeyBucks($MBS)トークンを獲得することができます。ローンチはクリスマス頃を予定していて、ゲームはデスクトップとモバイルの両方のプラットフォームで利用可能になるそうです。
14.Solana-based DeFi platform Synchrony raises $4.2 million
Solana上を資産管理プロトコル Synchrony Finance は、$4.2Mドルを調達しました。
将来発行するトークンによる調達で、Sanctor Capital、Wintermute Trading、GBV Capital、HashKey、Magnus Capital、0xVenturesなどの投資家が参加しています。
Synchronyのメイン製品は、コピートレーディングとインデックスです。
自分以外のウォレットの取引戦略をコピーすることができたり、インデックス投資して、Solanaエコシステム内の色々なトークンにポジションを持つことができます。
インデックスには例えば、Solana Ecosystem Index (SEI)やStableCoin Index (STX)などの予定になっています。
またファーミングを集約するアグリゲーターの機能もつける予定になっています。
15.PsyOptions Raises $3.5M for Options Liquidity Mining and NFT Derivatives
またSolanaの話題ですが、Solana上のオプションプラットフォームPsyOptionは、$3.5Mドルの資金を調達しました。Alameda researchがリードし、CMSホールディングス、Ledger Prime、MGNR、Wintermute、Airspeed18などが参加しています。
今回の投資家のほとんどは、流動性を提供することに同意しているそうです。チームは今後、『流動性マイニング・オプション』や『NFTオプション』など新しいタイプのオプション製品を作っていく予定になっています。
16.Polynomial raises $1.1M to build a DeFi options marketplace.
Polynomial Protocolが、Acrylicをリードに、Genblock Capital、Caballeros Capitalなどから$1.1Mドルのプレシード資金を調達しました。DeFiにおけるオプション取引のアグリゲータです。
DeFiのオプションの流動性が少ない問題を解決するために、Uniswap V3 と UMA を組み合わせて、流動性プロトコルを作っています。
UMA、Opyn、Pods、Lyraなどを土台にオプションを集約することで、DeFiオプションの流動性を向上させ、簡単にオプションを利用できたり、プロトコル間のアービトラージをすることができるようにするものです。流動性提供者のヘッジとしても活用できるそうです。
具体的には、2種類の仕組商品をローンチする予定です。
プット売りとコール売り
ロングボラティリティとショートボラティリティ
そして10月30日にテストネットを開始する予定です。
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