Tepmusインタビュー
評判の良かったインタビューシリーズですが、今回はTempusの創業者にインタビューをしました。(原文である英語は Mirror上 で公開します)
Tempusは、先週 Jump や Lemniscap、Distributed Global、GSR、WintermuteなどのVCやファンドから$4Mを調達したことを発表しました。また今週に、LBPでトークンセールも行われるので、ぜひ読んでみてください。
本文にも登場しますが、創業者David Garai氏は、弁護士として東京にも住んでいたそうです。
共同創業者のĐorđe Mijović氏は、元Ethereum財団のSolidityコアチームにいた方です。
それでは以下、インタビューになります。
コーヒー: こんにちは Davidさん、前に少し書いたことがありますが、一応さくっとTempusについて教えていただけますか?
デイビッド: もちろん! Tempusは、Ethereum上の「将来の利回りのトークン化と固定金利プロトコル」です。資本効率が良く、ユーザーフレンドリーな固定利回りのアプローチを提供することを目指しています。
例えば、ETHやステーブルコインをTempusのプールに預け、ボタンをクリックするだけで、(他の選択肢よりも高く)固定レートの利回りを得ることができます。
またLP(流動性の提供者)にとっても良い利回りの機会を提供します。例えば、すでにCompoundでDAIを貸し出していたり、LidoでETHをステーキングしていたら、cDAIやstETHをTempusに預けることで、今後数ヶ月間のイールドファーミング報酬を確定することができます。また流動性提供者として追加のLP収入を得ることもできます。
バックエンドでは、stETHやcDAIなどの利回りを得るトークンを、プリンシパルとイールドに分割しています。これらはTempus上で相互に取引されます。
コーヒー: ありがとうございます。メインネットで利回りの動きを見てみたいです。ちなみにこのプロジェクトを始めたきっかけは何ですか?以前は東京に住んでいたと聞きましたが。
デイビッド: そうなんです。私は、クリプトやDeFiの分野に入る前は、弁護士として働いていました。研修期間中は、Allen & Overyの東京オフィスに6ヶ月間出向していました。三菱商事のような日本の大手コングロマリットのアウトバウンドM&Aのアドバイスをしました。
その後さらに1年間、丸の内にある Linklaters (19ヶ国に展開する法律事務所)で、主に大手銀行やファンドのデリバティブやストラクチャード・ファイナンスの案件を担当しました。このTradFi(トラディショナルな金融)での経験が、DeFiで分散型の金利スワップを構築するきっかけとなりました。
コーヒー: おー、弁護士バックグラウンドの創業者は珍しいですが、金融の経験があったということなんですね。ちなみにElementやSenseのような似たようなビジョンを持つプロジェクトがありますが、それらとの違いは何ですか?
デイビッド: 主な違いは、資本効率とユーザーエクスペリエンスの2つです。
1つ目の資本効率についてですが、他のプロトコルでも、元本と将来の利回りのポジションをトークン化していますが、それらの2つをステーブルコインと交換できるようになっています。つまり各プールには、プリンシパル/ステーブルコインと、イールド/ステーブコインのAMMがあります。一方Tempusではアーキテクチャが異なり、プリンシパルとイールドを直接交換することができます。
これは、例えば流動性提供者にとって非常に有益なことで、流動性提供者は原資産であるイールド全体(例えばETHのステークの利回り)への機会を維持しつつ、プリンシパル/イールドAMMからスワップ手数料を得て、1つの高いイールドに集約することができます。その結果、TempusのLPイールドはElementやSenseよりも常に高くなる予定です。
2つ目のUXについてですが、 最新のUIを試してみて、違いを実感してください。私たちは、ElementやPendleなどが複雑で理解しづらいと感じている人たちのために、ユーザ体験をシンプルにすることを目指しています。
コーヒー: ETHステーキングといえば、今やLidoが最大のステーキングプロジェクトになってますね。Lidoとはどのように知り合って、連携したんですか?あとBalancerとも連携してましたね。
デイビッド: 機関投資家の強いニーズとして「トラストレスで、資本効率の高いETH 2.0ステーキング」というニーズがあって、そんな中でLidoを見つけました。私たちはLidoと連絡を取り、助成金のチームに提案書を提出することにして、結果的にすぐに受け入れられました。
Balancerとは、EthCCというイベントで Fernando Martinelli 氏に会いました。そのときにBalancer v2がTempusにどう活用できるか、という素晴らしい会話をして、最終的にBalancerを応用することになりました。
幸運なことに、両チームとはとても良い関係を築いています。
Tempusトークンについて
コーヒー: Tempusは独自のトークンであるTEMPを発行すると最近発表してましたが、このトークンを使って何ができるのでしょうか?
デイビッド: TEMPトークンの役割は大きく分けて2つあり、1つ目はガバナンス、2つ目はネットワークフィーのシェアを受け取るためのステーキングです。
まずガバナンスですが、Tempusが完全に分散化されていく中で、TEMP保有者は、例えば、プロトコルレベルの手数料の調整やTEMPトークンのミント・バーンなど、プロトコルの変更を提案する役割を担います。また、TEMP保有者は、Tempus Treasuryに蓄積された資金をどのように使用するかについて投票することができます。
次に、ステーキングに関して、まず知っておくべきことは、Tempusはプールでのトランザクション(入金、出金、スワップなど)から手数料を得ることができるということです。これらの手数料の一部はTempus Treasuryが獲得しますが、その一部はTEMPをステークした人が直接獲得します。正確なステーキングと価値の発生メカニズムは、後日、TEMP保有者が合意することになります。
コーヒー: ありがとうございます。TEMPのトークノミクスは決まってますか?
デイビッド: はい、最初に10億TEMPがミントされ、3年間でアクセスできるようになります。Tempusの長期的な開発とコミュニティのサポートを確保するために、4年後には先ほどのガバナンスに次第で、年2%のインフレーションをトリガーする可能性があります。
コーヒー: トークンはどのように配布されるのでしょう?
デイビッド: 当初の10億TEMPトークンのうち、26%が現在および将来のチームメンバー(3年の権利確定)、22%が投資家およびアドバイザー(2.5~3年の権利確定)に割り当てられます。分散化を信じているため、初期供給トークンの残り52%は、Tempusのエコシステム全体に利益をもたらすために割り当てられました。
その内訳は、48.07%が流動性マイニングとコミュニティへのインセンティブ、38.46%がTempus Treasury、そして13.47%が今後予定されているパブリックセールに分配されます。
将来の計画やロードマップについて
コーヒー: 今後数ヶ月間の計画について、簡単に教えて頂けますか?
デイビッド: 今後数ヶ月間、エキサイティングな計画を立てています。次の大きなイベントは、11月16日(火)にCopperのバランサーLBPで行われるトークンローンチで、7,000万のTEMPトークンがオークションにかかる予定です。
コーヒー: LBPは公平でいい方法ですよね。簡単に補足してくれますか?
デイビッド: 価格が48時間かけて徐々に下がっていく方式です。この期間中の買い圧力とバランスをとるため、理想的には価格を市場価値付近に保つことができます。これにより、ボットによる操作が抑制されます。また大口の買い手は、長期間にわたって細かく買うインセンティブが与えられ、誰もが参加しやすくなります。
ちなみに、開始から8時間以内に10,000 TEMP以上を購入すると、Tempus SersのNFT発行のホワイトリストに入れることになっています。詳細は、Mediumの記事をご覧ください。
あとはLBP以外の計画でいうと、今月末にメインネットのローンチを予定しています。それに先立って、この前ウェブサイトとdAppの新バージョンをリリースしました。
メインネット後の数ヶ月間は、変動レートのステーキングをサポートすることに注力し、ローンチ時には、Lido、Yearn、Compound、Aaveベースのプールを展開する予定です。
その後はユーザーが好きなプールを展開して、どのような種類の利回りであっても、変動利回りを固定したり、利回りをトレードできるようになるまで、いろいろなDeFiプールの統合を進めていきます。
コーヒー: 特にLidoとAaveは、個人的に利用する機会がありそうです。
Tempusの創業ストーリー
コーヒー: ちょっと話はそれますが、現在のチームはどのようにして結成されたのでしょうか?最近は、共同創業者やチームメンバーをTwitterやDiscordで見つけているところが多いようですが。
デイビッド: 面白いことに、共同設立者や残りのチームを探している間に、私が自分自身でシードラウンドを調達しました。新しく加わってもらう人には、やっていることをすべて辞めてまでジョインすべき理由を、納得してもらわなければなりません。私の場合はLinkedInで多くの人に連絡を取り、リクルーターを利用したりもしました。実際にLinkedInで共同創業者と出会い、会って意気投合し、そこからは自然とチームが増えていきました。
コーヒー: ところで、なぜTempusという名前なのでしょうか?
デイビッド: Tempusとはラテン語で「時間」を意味します。このプロトコルでは、イールド・ベアリングトークンを、満期のあるコントラクトに預け、プリンシパルとイールドを相互に取引することができます。これにより、*時間に基づく* リスクの最適化が可能になります。このプロトコルでは、「時間」が重要な役割を果たすため、この名前が付けられました。
コーヒー: 最後に、読んでくださってる方にむけて何か一言お願いします!あ、これは毎回聞いてるんですが、日本のクリプトについて何か印象に残っていることはありますか?
デイビッド: クリプトに最も影響を与えたのは日本の文化だと言えると思います。寿司、柴犬、"waifu"のようなミームなど、すべて日本から生まれたものです。とはいえ、日本での実際の普及率はまだ低いと思いますし、この分野でもっと多くの日本人に参加してもらいたいと思っています。Tempusでは、そのために日本語のDiscordチャンネルもあります。私自身も日本が大好きなので、日本の人たちに興味を持ってもらえる良い方法があれば、ぜひ教えてください。
コーヒー: お忙しい中、ありがとうございました! もっと知りたい場合はどこを見ればいいでしょうか。
デイビッド: Discordに参加したり、Twitterでフォローしたり、Mediumを見てみてください。
■ Last Week in Crypto
1.Reddit co-founder to invest $100 million in social media on Solana
Reddit共同創業者のアレクシス・オハニアンは、Solana上のソーシャルメディア系プロジェクトに投資する$100Mのファンドを発表しました。特定チェーンの特定領域で$100Mというサイズは珍しいと思います。
ちなみに先週、Solanaのカンファレンスがポルトガルで行われていましたが、そこでの発表となります。同じカンファレンス内で、FTXのCEOであるSam Bankman-Fried氏は、「ブロックチェーン上でソーシャルメディアを構築は非常に大きなものになる」と発言もしています。
Solana上だとSolcial
などソーシャル系はいくつかありますが、NFTに限らずDeFiが一般層にリーチするのは実はこういったところかもしれません。
2.Neon Labs, developer of EVM on Solana, raises $40 million
Solana上にEthereum仮想マシン(EVM)環境を作る『Neon Labs』は、$40Mドルを調達しました。Jump Capitalがリードし、Three Arrows Capital、Solana Capital、IDEO CoLab Venturesなどが参加しました。
Neon LabsのEVMチェーンは、現在Solanaのテストネットで稼働していて、メインネットはまもなく稼働する予定になっています。これが動くと、Ethereumベースのアプリやツールを簡単にSolanaにデプロイできるようになります。
Aaveの創業者も、「AaveがもうすぐSolanaに使えるようになる」というようなツイートをしていましたし、Sushiなども興味を示しているようです。そして今後Neon Labsは、流動性マイニングも計画しているそうです。
ちなみに同様の動きでいうと、NEAR上にEVM環境を開発するAuroraがありますが、こちらもちょうど今月トークンセールを実施しています。
3.Saddle Raises $7.5M to Reduce Slippage in DeFi Trading
USDCとUSDTのように同じカテゴリのトークン同士を、スリッページを少なく交換できるDEXの『Saddle』 が、$7.5Mを調達しました。PolychainとElectric Capitalがリードで、Nascent、Project Galaxyなどが参加しています。
SaddleはCurveとコンセプトが同じなので、「シリコンバレーのSaddle vs 草の根フェアローンチCurve」のような構図と1月に書きましたが、まさにその状態が続いています。UIは圧倒的にSaddleのほうが見やすいですが、Curveのほうが流動性があります。
TVL(コントラクトにロックされた価値)でいうと、Saddleが $166M に対して、Curve は $20 Billion となっていて、桁2つ違っています。(参照:Dedi Llma)
今回の調達もあり、Saddleもそろそろトークンを発行するのではないかと想像しています。
4.Ethereum Layer 2 developer Matter Labs raises $50 million
Ethereumのレイヤー2技術「zkSync」を開発しているチームMatter Labsは、a16zなどから$50Mを調達しました。他にもPlaceholder、Dragonfly、1kx、Consensysや、多くのエンジェル投資家が参加しました。
最近までは技術に注力していましたが、今後はユーザーや開発者へのアプローチにも力を入れてるべくコミュニティやエコシステムを構築していく、としています。
zkSync を始めとする ZK-rollup(ゼロ知識証明を使ったスケーリング手法)は、Vitalikが「中長期的にすべてのユースケースで勝つ」と言っているように、非常に大切になる技術の1つだと思います。
5.Twitter's new crypto team to incorporate more and decentralized tech
Twitterが、「Twitter Crypto」というチームを作っていることを明らかにし、Tess Rinearson氏をエンジニアリングのリーダーとして採用したことが報じられました。
まずはクリエイターが商品や通貨を管理したり、ファンがコミュニティを支援したりするためのアプリを開発するそうです。また、Twitterにおけるアイデンティティやコミュニティの機能を向上するために、クリプトを利用することも示唆しています。
6.Miami to Give ‘Bitcoin Yield’ From MiamiCoin to Its Citizens
マイアミ市の市長が、マイアミコインのステーキングから得られるBTCの利回りを、近々マイアミ市民に配ることを発表しました。
これを実現しているCityCoinsの仕組みについては以前書いたので、読んでいただければと思いますが、過去3カ月間で$21Mドル以上を稼いでいるそうです。
またマイアミに続き、New York City コインも開始されましたが、24時間ですでに$2Mを越えています(ウォレット:NYC Wallet Value)。次は Austin というテキサス州の都市のコインが作られる予定になっています。
ちなみにこのCityCoinsをはじめとしてStacks(旧Blockstack)コミュニティが活気づいているのを感じていて、他のプロジェクトにも投資資金も集まり始めています。
7.DeFi liquidity provider WOO Network raises $30 million in Series A round
CeFiとDeFiで、ディープ・リクイディティプロバイダーであるWOO Networkは、シリーズAで$30Mドルを調達したことを発表しました。Three Arrows CapitalやFenbushi Capitalなどが参加しています。
WOO Networkは、今回の資金でチームの拡大し、先物やソーシャル・トレーディング、DeFiに関連するプロダクト開発をする予定になっています。
すでにWOOは、ディープリクイディティを取引手数料ゼロで提供するプラットフォーム「WOO X」を最近ローンチしています。ディープリクイディティは、流動性が十分にあり、大量の買い手と売り手が両方ともいる状態です。
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