Ethereumマージの予定
Ethereumの開発者コールにて、マージ(PoS実装)のタイムラインが議論され、Goerliテストネットでのマージ予定が7月27 ~ 28日になりました。
またメインネットでのマージは9月19日に仮置きされています。
あくまで仮日程なので、変わる可能性もあると強調されていますが、大きな進展です。
■ Last Week in Crypto
1.Empiric Network: The ZK-Native Oracle
StarkNet上のオラクルである Empiric が $7Mを調達しました。
Variantがリードで、Alameda、CMT、Flow Traders、FTX、Geminiがデータ提供者として参加し、StarkWareも支援しています。
エンジェル投資家には、Sandeep(Polygon), Luke Pearson (Polychain), Max Kleiman-Weiner (Sequoia), Tekin Salimi (DAO5), Tarun Chitra (Gauntlet), Robert Leshner (Compound) などが参加しています。
オラクルについて
ブロックチェーンにおける「オラクル」とは、「スマートコントラクトに対して現実世界のデータを提供する役割」と言えます。
もっと言えば、(1)オフチェーンの情報をブロックチェーン内に報告して、(2)その入力された情報が正しいことを検証する仕組み、と言えると思います。
オラクルが提供するデータの例としては「価格フィード」があり、これを使ってDeFiが成り立っています。例えば、DeFiでの清算のトリガーとなる価格を、いろいろな取引所でのトークン価格を元にする場合などです。
オラクルの課題
そのためオラクルは、スマートコントラクトにとっては必須の要素といえますが、中央集権的で、透明性が低いという課題があります。
非公開のソースからデータを探してブロックチェーンに提供するため、すべてが検証可能ではなく、エラーに繋がることや攻撃されることもあります。
例えば、本当は「1BTC = $40,000ドル」なのに、「1BTC = $5,400ドル」という誤ったデータを出してしまった事例も去年ありました(Pythのオラクル)。
そこでオラクルをオンチェーンに移行させることができれば、透明性が高く、より安全になりますが、オンチェーンのガスコストがかかりすぎてしまいます。
Empiricのオラクル
そこでEmpiricでは、StarkNetの安い検証計算力を利用して、オンチェーンでオラクルを作っています。
データや計算がオンチェーンなので、データ元からデータ配信まで検証可能になり、攻撃リスクが軽減され、より柔軟なデータを提供することも期待されます。
仕組みとしては、まずデータプロバイダーが、データに署名し、StarkNetに投稿します。Empiricがその署名を検証して、投稿されたデータを保存します。そしてオラクルが呼ばれたときにそのデータを提供します。
今後
すでに StarkNet のテストネット上で、ZKLend、Magnety、CurveZero、Canvas、FujiDAOにデータ提供をしています。
このように短期的には、StarkNet上のDeFiで利用されると思いますが、長期的には、天気予報、スポーツ、ニュースなど、いろいろなデータを提供できます。
そうすると、現実世界のニュースに基づいた自動のトレードや、予測市場やスマコン保険などのユースケースが実現できそうです。
Empiric自体は今後コミュニティ所有になって予定としているので、何らか形で所有権が配布されていくと思います。
2.Hologram: The Self-Expression Company
Hologramが、$6.5Mドルを調達しました。
Polychain Capitalをリードに、Nascent、Inflection、The Operating Group、Quantstamp、Foothill Ventures、Neon DAO、Yat Labs、South Park Commonsなどが参加しています。
メタバースでの自己表現を多様にするプロジェクトとのことですが、最初のプロダクトとして、アバターの「動画対応」を進めています。
具体的には、Chrome エクステンションかアプリを入れることで、電話会議で表示される顔を、NFTアバターの顔に変えることができます。
カメラが自分の顔の動きをトラッキングして、NFTアバターが同じように動きます(ホームページ上で試すこともできます)。
またこのプロダクトに限らず、個人クリエイターと協力して、独自NFTドロップをインキュベートすることにも取り組んでいます。
3.Quadrata is proud to announce its $7.5 Million Seed Round, led by Dragonfly Capital
Quadrataは、$7.5Mを調達しました。
Dragonfly Capitalがリードで、Franklin Templeton、Abra、GSR Ventures、Orange DAO、Fellows Fund、GreatPoint Ventures、August Capitalなどの投資家や、Balaji Srinivasan氏や、MessariのRyan Selkis氏などが参加しています。
Quadrataは、Web3のIDである「Quadrata Passport」 を開発しています。複数のブロックチェーンで利用でき、オンチェーンの評判スコアもつく予定になっています。
こういったDIDのユースケースとしては、「KYC情報と紐付いて、Passport NFTを持っているアドレスだけが利用できるスマートコントラクト」や「複数アカウントによるエアドロップを防ぐ」などがあります。
4.Introducing Hang, the future of membership for brands
Hang が $16Mドルを調達しました。
Paradigmがリードで、Tiger Global、Kevin DurantのThirty Five Ventures、Mr.BeastのNight Ventures、Tiffany&Co.のAlexandre ArnaultなどVCや起業家が支援しています。
このプラットフォームを使うと、ブランド側が顧客向けにNFTメンバーシップを、ノーコードで簡単に立ち上げることができます。
顧客はこのメンバーシップを利用して、特典を受けたり、コミュニティの一員となったりすることができます。
すでにPinkberry、Budweiser、Bleacher Reporter、Superflyなどの有名ブランドと連携しています。
5.What if the Smithsonian was Owned and Curated by the Internet?
Arkiveが、$9.7Mドルを調達しました。
Offline VenturesとTCG Cryptoがリードし、NFX、Freestyle Capital、Coinbase Ventures、Not Boring Capital、Precursor、Chainforest、Coil、Julia Lipton、Joe McCann、Chris Cantino、Marty Bell、Paul Veradittakitなどが参加しています。
Arkiveは、現実世界のモノや文化をキュレーションし、所有するコミュニティです。分散型の博物館を作ることも目指すようです。
メンバーになるには、他のメンバーによる審査があり、将来的にはメンバーシップを表すNFTが販売される予定になっています。
Arkiveが最初に取得したのは、世界初のプログラム可能な汎用コンピュータ「ENIAC」の特許になっています。展示会で飾ったあとは、メンバーが選ぶ博物館で保管される予定になっています。
6.DRAUP IS RESHAPING THE FUTURE OF FASHION
DRAUPが$1.5Mを調達しました。
Variant Fundをリードに、クリプト(TCG Crypto、FLAMINGO DAO、NEON DAO、GMoney、Cozomo de' Medici、Ashleigh Schap)や、ファッションの関係者が支援しています。
詳細はまだ分かりませんが、DRAUPのプラットフォームは3つの要素で構成される予定になっています。
デジタルファッションを購入できる
購入したデジタルファッションを展示できる
購入したデジタルファッションで稼ぐ(再販や"wear-to-earn")ができる
7.ZKX raises $4.5m in Seed Round
StarkNet上のデリバティブの取引プロトコル ZKX が$4.5Mを調達しました。
StarkWare、Alameda Research、Amber Group、Huobi、Crypto.com、Hashkey Capital、Orange DAO、Angel DAO、Dweb3、Caballeros Capital、Cluster Capital、Gateなどが参加しています。今回は縁があって自分も参加しました。
メインネットは第4四半期に予定されていて、来年にノードの分散化を計画しています。
マルチシグウォレットの Gnosis Safe が $100Mを調達しました。また名前をSafeにリブランドしています。
このラウンドは、1kxがリードで、Tiger Global、A&T Capital、Blockchain Capital、Digital Currency Groupなど多くの投資家が参加しています。
前に少し書きましたが、SafeはほとんどのDAOで利用されてます。またDeFiのプロトコルや、ウォレット、DAOツールなどの裏側でも統合されています。そのため全体で見ると、とても大きな金額(一時は $100 billionを超える額)がSafeによって管理されています。
つい先月Bspeak!の冒頭で書いたWeb3版Twitterのようなソーシャルメディア 『Farcaster』が$30Mドルを調達しました。
a16zがリードで、Standard Crypto、1confirmation、Scalar Capital、First Round Capital、Coinbase Ventures, Multicoin Capitalなどが参加しています。
Ethereumアドレスがアカウントになり、所有しているNFTがプロフィールに表示されたり、ウォレットで実施したことが自動的に表示されます。
自分のサッカークラブを作って販売できるCLUB Gameが、$3.1Mを調達しました。
Zee Prime Capitalがリードで、ATKA、Merit Circle、CitizenX、Moonlanding Ventures、Petrock Capitalなどが参加しています。
CLUB Gameでは、サッカークラブのオーナーになって、現実の世界のスター選手たちの成績をもとに、クラブを作り上げることができます。
選手を移籍させて売買しながら、クラブを成長させて、売却することも可能になっています。
11.a16z and Variant lead $18 million round into DeFi lending protocol Morpho
DeFiレンディングプロトコルMorphoは、a16zとVariantがリードで $18Mドルを調達しました。
その他にNascent、Semantic Ventures、Cherry Crypto、Mechanism Capital、Spark Capital、Standard Crypto、Coinbase Venturesなどが参加しています。
調達が発表されたのは先週ですが、実際の調達は2月に行われたそうです。
Morphoについては以前書いたことがありますが、AaveやCompoundなどの既存のレンディングプロトコルを利用して、高い利回りを提供するプロトコルです。
既存のレンディングプロトコルの「貸すAPY」と「借りるAPY」の中間の値(P2P APYと呼ばれています)を利用できるようになり、貸す側はより高いAPYを得られ、借りる側はより低いAPYで借りることができるようになります。
12.Cross-Chain Infrastructure Protocol LI.FI Raises $5.5M
ブリッジのアグリゲーションをするプロトコル LI.FI が、$5.5Mドルを調達しました。
1kxがリードで、Dragonfly Capital、Lattice Capital、Scalar Capital、6th Man Ventures、Coinbase Venturesなどが参加しています。
LI.FIは、ブリッジとDEXを集約したSDKを提供しています。これを使うと、チェーン間のブリッジやトークン交換をするのに、最も安いルートを特定することができ、その機能を開発者が自分のプロダクトに組み込むことができます。
13.NFT financing platform Supermojo raises $6 million in seed funding
NFTのレンディングプラットフォームSupermojoが、$6Mドルを調達しました。
Supermojoのプラットフォームは、NFT向けのBuy Now Pay Later(今買って後で払う)サービスを特徴としています。先週書いたApe Nowと同じように、頭金を払い、残りの金額を後日利子付きで払うというものです。
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