今週のコメント
このニュースレターでは、たまに Last week in crypto の前に、別に何かトピックを取り上げることがありますが、そのような「今週のコメント」的なものを一言でもなるべく書いていこうと思っています。今週分は、個人的に健康上アクシデントがあり、あまり時間がとれなかったため、来週以降になります。
■ Last Week in Crypto
1.3LAU Raises $16M to Tokenize Music Royalties for Artists and Fans
3LAUという米国で有名なDJが、「Royal」という音楽投資プラットフォームを発表しました。Paradigm と ピーター・ティールのFounders Fundが、それぞれ$7Mドルを投資し、共同創業者のJDロスが自身のベンチャーキャピタルファンドであるAtomicから$1Mドルを出資し、残りの$1Mは少数のエンジェル投資家が出資しています。
Royalでは、楽曲の著作権をトークン化し、誰もが購入・取引できるようにします。最終的には音楽ファンが楽曲使用料の一部を得ることができ、従来のレコード契約を覆すことになるかもしれません。
プロジェクト内容
Royalが開発するリミテッド・デジタル・アセット(LDA)というNFTを利用します。
これは曲の原盤権をトークン化したもので、ホルダーは、コンサートチケットやバックステージパス、グッズなどの特典を得ることができます。
またホルダーは自分の好きな曲やアルバムに投資するだけでなく、その権利を所有できるようになります。つまりアーティストの音楽が人気になったときに、ファンはアーティストと一緒にロイヤリティを得ることができるようになります。
ロイヤリティの仕組み
アーティストは、LDAを保有するファンのために、自分のロイヤリティシェアをどれだけ確保するか、また特定の楽曲に対していくつの「公式版」を作成するかを発行時に決定します。
例えば、ロイヤリティの50%をアーティストがとる設定にして、100個の公式版が作られた曲の場合は、NFTの所有者が残りの50%を得ることができます。100個発行なので、それぞれの所有者は、その曲が生み出すロイヤルティの0.5%を受け取ることができることになります。
どのような収入源を確保するかはアーティスト次第で、ストリーミングに限定されるかもしれませんが、アーティストにケースバイケースのビジネスで決定する柔軟性を与えたいそうです。
こういったことが実現すると、クリエイターは仲介者やレーベルを介さずに、ファンに直接アプローチすることができますし、逆にファンは自分の好きなクリエイターに投資することができます。
今後
今後6ヶ月間、アクセスを限定したベータ版のプラットフォームを徐々に展開し、今後8ヶ月から1年の間にオープンに公開することを目指しています。短期的には通常のNFT販売の10%以下の手数料をアーティストに請求し、最終的にはコミュニティ運営のプロジェクトにしたいそうです。そうなると独自トークン発行の可能性もあるのだと思います。
2.Open Sourcing Our Token Delegate Program
a16z は、DeFiのガバナンスにおける委任の手続きを公開しました。
「Open Sourcing our Token Delegate Program(トークン委任プログラムのオープンソース化)」という投稿で、a16zがその膨大な議決権を委任する個人や団体をどのように選択するかが説明されています。
公開の理由
a16zは、多くのガバナンス・トークンをもっているため、透明性への取り組みといえます。またガバナンスを考えている開発者、委任を検討しているトークン保有者、委任者になることを検討している個人やチームなどに役立たせるための公開で、フィードバックも受け付けているようです。
ガバナンストークンの委任者を決める方法
ガバナンストークンの委任者を決める基準として、詳細はGithubのページにまとめられていますが、以下のような各項目について評価して点数をつけていく方針になっています。
例えば、「専門知識」の項目では、「その組織(人)の経歴と、それがどのように参加する資格があると判断するか?」をみていて、
(+2点) ガバナンス、スマートコントラクト開発、コード監査、財務リスクモデリング、DeFiプロトコルなどに直接関連する経歴を持っていて、理想的。
(+1点) ソフトウェア、クリプト、金融など間接的に関連しているバックグラウンドを持っていて、一般的に適格。
(+0点) プロトコルの中核となる目標や課題とは関係のないバックグラウンド。
という風にスコアづけされます。
そして、現在はCompoundとUniswapのトークンは以下の組織に委任して、影響力を分散させていることを公開しています。
その他にも記事では、トークン委任する上で経験上ベストな方法や、法的な仕組みとテンプレート文書も公開されています。
プロトコルチーム
また今後a16zによるDAOへの投票と委任は、a16zのパートナーであるジェフ・アミコが率いる4人の新しいチームによって管理されるそうです。元0x社のエンジニアであるアレックス・クローガーも先週、このチームに参加することを発表しています。
このプロトコルチームは、a16zの投票権の半分以上を受け取る事業体を選んだり、残ったトークンの投票方法も検討していくそうです。
3.Bright Moments DAO, Union Square Ventures
大手VCのUnion Square Ventures(USV)は、Bright Moments DAOに投資をしたことを発表しました。500 ETH(約$1.5Mドル)を投資し、100万のBRTトークンをうけとっています。
さらに面白いことに、USVがDAOに投資するのはこれで3回目で、残りの2回については今後数週間のうちに紹介するそうです。また今後も投資を続けていく予定と明言しています。
VCがDAOに投資をするという今後の流れを表す上でも、象徴的な出来事と思います。少数の知り合いで始めたプロジェクトが、まずはNFTなどでコミュニティから少し資金を集めて活動し、規模を大きくするためにVCから調達する、ということが増えると思います。もしくはすでに現在進行系で進んでいて、向こう1,2ヶ月でこのような発表が増えると予想しています。
実際の投資については、トークン取引以外の書類はなく実施され、Bright Moments側はこのディールについて投票を行い、満場一致で承認されたそうです。
Bright Momentsとは
Bright Momentsは、現実世界で、NFTのアートギャラリーを開催するプロジェクトです。
まずは、カリフォルニアのベニスビーチで、NFTのアーティストが新作を展示し、コレクターがそれをリアルタイムで購入するという、ポップアップギャラリーとしてスタートしました。
その後、ベニスビーチのイベントにきた人だけが1日10人限定で発行できるNFTシリーズCryptoVenetiansを作成し、合計で1000枚のNFTを発行しています。クリプトを利用したことのない人がほとんどだったそうです。
ちなみにイベントの様子は以下のようになっています。
これと同様のことを、秋にはニューヨークで予定をしていて、そのあとに世界の8都市をまわり、合計で10,000個のNFTを発行することを予定しています。
投資したUSVが、(ガバナンスとNFTの作成に利用できる)BRTトークンを保有してどのようにリターンを生み出すつもりなのか分かりませんが、活発的なコミュニティがあれば今後も収益化につながる色々なプロダクトを出していけるという考えなのだと思います。
今回のアートギャラリーについては、「クリプトを触ったことのない新しい人々に、自然に利用させるモデルになっている」との評価のようです。
4.Mark Cuban-backed startup that fuses AI with NFTs raises $16 million
NFTとAIを組み合わせたAlethea AIは、制限付きトークンセールで、VCから$16Mドルを調達したことを発表しました。投資家として、Multicoin、Alameda、Dapper Labsなどが参加しています。
クリエイターは、AletheaのAIをNFTに組み込むことで、リアルタイムのインタラクションを可能にしたりすることができます。例えば、AIを利用したCryptoPunksは、他の人とラップバトルをすることができるそうです。
Twitterに投稿された動画では、NFT42の創業者であるJimmyが、「パンドラ」というNFTとリアルタイムで会話しています。
またAletheaは、AIを搭載したNFTを「インテリジェントNFT」=「iNFT」と呼び、6月に$478,000ドル以上で販売しています。
5.NFTs mark a new chapter for digital commerce
クレジットカード大手のVisaが、CryptoPunksのNFTを約1500万円で購入したことを発表したことで話題になりました。
購入した理由は、「NFTやコミュニティついて学びたかった」とホームページに記載されています。
また
NFTは、小売、ソーシャルメディア、エンターテイメント、コマースの将来において重要な役割を果たすと考えている
Visaの中心的な役割として、消費者がNFTを購入し、加盟店が従来の商品や電子商取引と同じように簡単にNFTを受け入れることができるようにしたい
などと述べられています。
ちなみにVisaはカストディアンである Anchorage と協力して、法定通貨で購入したそうです。そして Anchorageが VisaのためにNFTを保管しています。
このVisaのニュースをうけて、CryptoPunksの価格は急上昇し、NFT市場がさらに熱狂的になっています。またVisaにインスパイアされてか、ビールブランド大手のバドワイザーも、NFTアーティストのTom Sachsがデザインしたロケット船を8ETHで購入し、Twitterのプロフィール画像にし、Beer.ethのドメイン名も30ETH(約95,000ドル)で購入しています。
6.Paradigm leads $8 million Series A into DeFi lending company Euler
Euler というDeFiレンディングのプロトコルが、Paradigmが主導のシリーズAで$8Mドルを調達しました。Lemniscapや、Anthony Sassano氏、Synthetixの創業者Kain Warwick氏、ParadigmリサーチャーのHasuなども参加しています。
Eulerは昨年12月にシードで $ 0.8Mドルを調達し、株式の10%と交換していましたが、今回はトークンによる調達なのかは明らかになっていません。
Eulerについて
Eulerは、昨年9月にあったEncodeのハッカソンで創業者が優勝し、その後Encode Clubのインキュベートに参加したプロジェクトです。
AaveやCompoundのような貸し借りを実現するプロトコルですが、それらとの違いは、Eulerでは誰もが独自のレンディング市場を作成できるようになります。つまりUniswapで交換ペアを誰でも作れるのと同じように、Euler上で貸し借りできるトークンを誰でも追加できるということになります。
ホワイトペーパーによると、Uniswap v3でWETHペアを持つトークンについては、誰でもすぐにEulerのレンディングマーケットとして追加することができるようです。
幅広い資産を取り扱うという戦略は、Rari Capitalの『Fuse』も同じようなモチベーションをもっていますが、異なるアプローチをとっているといえます。
また清算の際のフロントランニングを防ぐことも強みとしているそうです。確かにParadigmは最近、MEV自体やMEVを防ぐような研究にかなり力をいれているので、その点で助言したり、一緒に研究・開発しているのだと思います。
ローンチ
セキュリティ監査を経て、年内に本稼働する予定です。ガバナンストークンであるEULが、ローンチの1日目からプロトコル上の貸し手と借り手に配布される予定になっています。
7.Solana's Apricot Finance Raises $4M in 'Party' Funding Round
Solana上のレンディングプロトコル Apricot Finance は、Delphi Ventures、Lemniscapなどから$4Mドルを調達しました。
Apricotは、主力のサービスとして、クロスマージンのレバレッジド・イールドファーミングと自動化されたセルフデレバレッジを提供することを目指しています。
テストネットのローンチは来週、メインネットのローンチは9月に予定されています。
8.1inch Network Aiming for $70M Venture Round at $2.25B Valuation
1inch Networkが、シリーズBラウンドのトークンセールで、$22 billionドルの評価額で、$70Mドルの調達を目指しているとの報道です。
まだ決まっていませんが、1INCHトークンを $1.50ドル & ロックアップ期間付きで、プライベートに販売する予定だそうです。この分はトレジャリーから拠出されます。
調達は、2021年末までにクローズすることを目指していて、さらに2つのプロトコルをリリースすることを目指しているそうです。
9.Jack Dorsey says plan for 'TBD' bitcoin project is to build a decentralized exchange
TwitterとSquareのCEOであるジャック・ドーシーは、ビットコインに特化したオープンソースの金融サービス用プラットフォームの開発に注力するとしていましたが、今回「分散型取引所をつくる」という目標が明かされました。
開発担当者は、
「現在、ビットコインを入手するには、CashAppやCoinbaseのような中央管理型のサービスでフィアットを交換するのが一般的です。これらのビットコインへのオン/オフランプには多くの問題があり、世界中に均等に分散されているわけではありません」
とコメントしていて、法定通貨とビットコインの取引を分散的に、ノンカストディアル(どこかに預ける必要なし)に実現したいということのようです。
このプラットフォームはすべて公開で開発され、オープンソース、オープンプロトコルで、どんなウォレットでも利用できるようになる予定になっています。
10.A16Z-backed content platform Substack begins accepting bitcoin payments
このニュースレターを配信するのに利用しているSubstackが、有料ニュースレターの支払いオプションとしてビットコインを統合しました。
ライトニングネットワークも使用していて、ビットコイン決済プロセッサーであるOpenNode社と提携して実現しています。
現在、クリプト関係の一部のニュースレターにのみ提供されていて、今後より広げていくそうです。
初期からSubstackの利用している立場から感想をいうと、Substackは「個人のジャーナリストがマネタイズできるようにする」というビジョンがあり、クリプトに思想が近い部分があります。機能もかゆいところに手が届きますし、メーリングリストの管理も企業に頼らず個人で管理することができるため、プラットフォームリスクも少なく、 "Web2.5"くらいのイメージです。
11.Ethereum Name Service now lets you use most domain names
ENSが従来のドメイン名のサポートを追加し、○○.ethだけでなく、○○.comのようなアドレスにもETHを送金できるようになりました。今回のサービスでは、.com、.org、.ioなどほとんどのDNS名をサポートしています。DNSのTXTレコードにアドレスをいれて、紐付けてるようです。
これはちょうど Handshake ドメインでやってみたかったことです。Handshakeであれば、トップレベルドメインの部分はICANNに管理されているもの以外でも利用できるため、.bspeak! のような好きな名前や、.☕ のような絵文字ドメインを利用することもできます。
おそらく Namebase.io がそのうちやってしまうとは思いますが、追加の案があるので、手伝ってくださる人はぜひご連絡ください。
12.Facebook Considering NFT Support in Novi Digital Wallet
Facebookが、開発しているウォレット「Novi」を使ってNFTをサポートすることも検討しているというBloombergのインタビュー記事です。
まだ可能性もあると答えた程度ですが、承認欲求を満たすためのNFTはソーシャル・ネットワークとうまく組み合わさると思うので、展開が気になるところです。
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