■ Last Week in Crypto
1.Polygon acquires Hermez; the projects are merging their tokens
Polygon(旧Matic)が、ZK-RollupsベースのHermez Networkを$250Mドルで買収しました。$250Mに相当するMATICトークンは、Polygonのtresuryの約12.5%に相当します。そしてHermezの26名メンバーもPolygonの80名のチームに加わります。
それぞれのネイティブトークンであるMATICとHEZも統合するようですが、トークンを含めて合併するのは初めてのケースかもしれません。
以前Bspeak!でも書いたように、KeepとNuCypherがプロトコルを統合してKEaNUとなりましたが、トークンは統合しませんでした。Yearn.FinanceとPickle Financeの合併も、トークンは独立して残っています。
今回のケースでは、トークンのペグは、3.5 MATIC:1 HEZで固定となり、HEZトークンの保有者はMATICと交換できることになります。
ZK系の技術への$1 billion 投資
今のPolygonはサイドチェーンに近い認識ですが、ZK-RollupベースのHermezを統合したことで真にL2ソリューションを提供できるようになり、数年後に振り返って最高の一手だったと言えるかもしれません。
またこの発表の1時間前には、Polygonが$1 billion ドルをZK系の技術に投資していくことを発表しています。
今回の買収もこの一環ということで、買収したチームやプロジェクト、構築するソリューション、戦略的パートナーなどを徐々に発表していくそうです。文章をみている限り、すでにいくつかディールが決まっているようです。
2.Decentralized wireless network Helium raises $111 million in token sale led by a16z
Heliumが、a16zなどから$111Mドルという大きな額を調達しました。他にもRibbit Capital、10T Holdings、Alameda Research、Multicoin Capitalなどが投資しています。
HeliumについてはBspeak!で2年前に触れたことがありますが、改めて書きます。
Helium
Heliumは2013年に設立ですが、2018年にIoTデバイスのための無線ネットワークにブロックチェーンを利用することを発表しました。2019年には、誰でもネットワークに貢献できるようにホットスポットをローンチしています。
このHeliumのネットワークはLoRaWANという無線の規格を利用していて、現在は10万以上のホットスポットが112カ国にあるそうです。
LoRaWANとは
LoRaWANは「Long Range Wide Area Network」の略で、直訳すると「長距離広域ネットワーク」となります。
特徴としては、4GやWiFiと比べて低消費電力で、かつ長距離の通信が可能です。またノイズにも強く、広域のネットワークを作るのにも向いていると言われています。
これによって、遠隔地や長距離にあるデバイスの追跡に役立ちます。例えば、ワクチンの注射器に小型の温度計を接続して、輸送中の温度をモニターする・適温を保つなどのことができると言われています。
Heliumを使うプロジェクトの例は、農業、環境、ヘルスケアなどの分野でいくつか存在していて、以下に一覧になっています。
https://docs.helium.com/use-the-network/community-projects
Heliumのトークン
Heliumのカバレッジがどれだけ広がるかは、どれだけ一般ユーザーが自宅や会社などにホットスポットをおいて運用するかどうかにかかっています。
そしてユーザーは、ホットスポットを運営する代わりに、ネイティブトークンであるHNTで報酬を得ます。Airbnbが自分の場所を収益化できるのに近いです。
受け取ったあとは、HNTをバーンして「データ・クレジット」を作ることもできます。このデータクレジットを使ってHeliumチェーン上での手数料に使用し、Heliumネットワーク上でデータを転送することができます。
価格は1データクレジット=0.00001ドルで固定になっていて、航空会社のマイルのように、データクレジットは譲渡できず、元の所有者のみが使用できます。
今後
草の根的なコミュニティの活動が必要なプロジェクトですが、New York, San Francisco, Los Angelesなどの米国の大きな都市ではかなりカバレッジが広がっています。
またIoT向けのネットワークだけでなく、FreedomFiと連携し、5Gネットワークを今秋にローンチする予定になっています。
3.Introducing The Rarible Protocol: An Open-Source, Cross-Chain Tool For NFT Innovation
NFTのマーケットプレイスとして有名なRaribleは、「Rarible Protocol」を発表しました。NFTプロジェクトの構築を簡素化するためのオープンソースツールとなっています。
Raribleプロトコルを使うと、NFTのストアフロントやマーケットプレイスをゼロから構築する必要がないという点が売りです。その他の利点(主な機能)は以下の通りです。
・手数料の分割
交換の手数料を分割することができます。Raribleプロトコルを使ったアプリはこれでマネタイズをすることもできます。
・流動性の共有
Raribleプロトコル上のアプリは、オーダーブックを共有することができます。つまりNFTがあるアプリ上で売りに出されると、プロトコル上のすべてのアプリで売りに出されます(入札が行われた場合も同様です)。
・レイジーミント
これはOpeaseaが実装している機能ですが、ガス料金を支払うことなくNFTを売ることができます。NFTが売れたときに初めて、購入者によってガスが支払われてNFTが発行され、転送されます。
・ロイヤリティ規格
現在、SuperRareで発行されたNFTがOpenSeaで販売された場合、ロイヤリティが作ったクリエイターに還元されませんが、Raribleプロトコルで販売されるNFTは、出所に関わらず、クリエイターとプラットフォームのロイヤリティが適用されます。
プロトコル普及のためのトークン配布
本家のRarible.comはもとより、ZerionやDecentralandなどがRaribleプロトコルを利用してアプリにNFTマーケットプレイス機能を組み込んでいます。上で書いたように手数料分割によってマネタイズできたり、NFTデータ分析ツールを簡単に作成できるようになっています。
またRaribleは、このRaribleプロトコル上の構築を促すために、毎週に40,000 RARIトークン(約5000万円分)を、Raribleプロトコル上のアプリに(売上高に比例して)配布することも発表しています。
現在Ethereum上のみでの展開ですが、まもなくFlowとPolygonでも利用可能になる予定です。
4.DAOs, VCs Put $6M Behind Governance Startup Tally - CoinDesk
以前Bspeak!で触れたDAOのガバナンス用ツールを開発する Tallyが、今回$6Mドルの調達を発表しました。
Blockchain CapitalとPlaceholderが主導していますが、VCだけでなく、調達資金の約25%は、DAOから調達したそうです。具体的には、The LAO、MetaCartel Ventures、Fire Eyes DAOなどのDAOや、Banklessの創業者であるRyan Sean Adamsなどが参加しています。
Tallyは、DAOの投票ができるだけでなく、投票構造をわかりやすく表示したり、アナリティクス(分析ツール)などのツールを提供していて、すでにGitcoin、FEI、UniswapなどのプロトコルDAOで利用されています。
オンチェーン投票において、DAOからガス手数料を払い戻しすることを簡単にするコントラクトも間もなく出る予定になっていて、ガス価格がxx以内なら払い戻し、などの設定ができるようです。
5.Dune Analytics, Home of DIY Data Dashboards, Raises $8M in USV-Led Series A
ノルウェー拠点のデータ分析プラットフォーム Dune Analyticsが、$8Mドルを調達しました。USVがリードし、Dragonfly CapitalやMulticoin Capitalも参加しています。
エクイティによる資金調達で、チームを拡大して異なるブロックチェーンをサポートするために利用されます。
Duneは現在、Ethereum, Polygon, Optimism, xDAIという4つのネットワークに対応していますが、今後はEVMベースのすべてのブロックチェーンやその他のネットワークをサポートすることを計画しているそうです。
ビジネスモデル
Duneのプラットフォームは無料で公開されていて、ユーザーは分析したい指標のデータチャートを作成することができます。
有料のサブスクリプション製品もあり、1ユーザーあたり月額390ドル~となっています。有料ユーザーは、非公開のクエリやデータのエクスポートなど、よりカスタマイズされたサービスを利用することができ、ほぼすべてのトップ企業が有料のユーザとなっているそうです。
Duneは、界隈では愛されているイメージがあります。また少しのスキルがあれば誰でもクエリを作って分析して公開できるため、コミュニティが利用することによって拡大していくようなモデルになっています。
1)コミュニティがクエリを作成する
2)クエリのライブラリが豊富になる
3)Duneで作られたグラフが、ブログやTwitterで共有されて注目を集める
4)新しいユーザーがDuneを見つける
というサイクルがうまく回っています。
6.Messi receives crypto fan tokens as part of his PSG package
サッカー・アルゼンチン代表のリオネル・メッシは、パリ・サンジェルマン(PSG)への移籍を発表し、契約金の一部としてファントークンを受け取ったという件です。
金額は明らかになっていませんが、large number(大量のトークン)を受け取ったそうです。
このPSGトークンは、Socios.com上で発行されていて、パリ・サンジェルマン(PSG)が2020年2月にローンチしました。現在はBinanceなどに上場していますが、メッシのニュースを受けて、PSGトークンの取引量が急増しているようです。
Socios.comでファントークンをローンチしているのは、他にもFCバルセロナ、ユベントス、マンチェスター・シティ、アーセナル・ACミランなどの有名チームがあります。これらのトークンはChilizチェーン上に発行されています。
7.Crypto wallet Liquality raises $7 million in seed funding
マルチチェーンのウォレットLiqualityが、$7Mドルを調達しました。HashedとGalaxy Digitalがリードし、White Star Capital、Accomplice、Coinbase Ventures、Alameda Researchなどが参加しています。
エクイティによる調達で、今回の資金を使ってチームを拡大し、より多くのブロックチェーンをサポートする予定になっています。
今はBitcoin、Ethereum、Rootstock、Binance Smart Chain、Near、Polygonをサポートしていてトークンを交換することができますが、今後はPolkadot、Cosmos、Thorchain、Arbitrum、Solana、Lightning Networkを統合する予定になっています。
特徴はアトミックスワップで、どこかに預けることなく、取引相手と交換することができます。手数料や預かりリスクを抑えることもできるのが利点です。
現在はブラウザのエクステンションのウォレットですが、モバイル化も予定していて、最終的には、DAOの立ち上げも計画にしているそうです。そうするとトークンを発行するような流れになるのかと思います。
8.Gemini acqui-hires Guesser to grow adoption of its GUSD stablecoin
取引所Geminiが、予測市場のプラットフォームGuiserを買収しました。GuiserのチームがGeminiに加わり、Guiserは閉鎖されます。
今回の買収は、Geminiドル(GUSD)というステーブルコインを拡大することが目的で、GuiserのチームがDeFiの開発に精通しているためと公表されています。
Geminiにとっては4件目の買収となり、
NFTマーケットプレイスのNifty Gateway
クレジットカードのスタートアップBlockrize
カストディ技術のShardX
の次になります。
Guiserが出てきた当時は、Veilなどもローンチし予測市場が盛り上がると思われていましたが、結局どちらも閉鎖してしまいました。今後予測市場が増えるとしたら、DeFiの保険に加えて、先日のバーチャル競馬のようなNFTとメタバースを組み合わせたものから始まるかもしれません。
9.Venmo is launching crypto cashback for credit cards
PayPalが所有するモバイル決済のVenmoが、キャッシュバックツールを発表しました。
Venmoクレジットカードのユーザーは、クレジットカードの購入で得られるキャッシュバック報酬を暗号通貨で受け取ることができるようになります。
10.Twitter's collection of 140 NFTs generates over $5 million in trading volume
Twitterが6月30日に発行して配ったNFT「The 140 Collection」は、OpenSeaでの総取引量が1,700ETH($5.3Mドル)にもなっているという記事です。
他のプロジェクトと比べると低い出来高ではありますが、140個という数にしては大きな取引量です。最近は40 - 60ETHくらいで取引がされているようですが、OpenSeaのフロア価格(購入可能な最低価格)は90ETHまで上昇しています。
またNFTをもっている人たちによるコミュニティも結成されていて、現在は70名ほどのメンバーとなっているそうです。
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