Pectraアップグレード
先週Ethereumのメインネットで「Pectraアップグレード」が無事に有効化されました。
2022年のマージ以来、もっとも大規模なアップグレードで、全部で11個のEIP(Ethereum Improvement Proposal)が含まれています。中でも個人的に大事だと思う5個を以下にピックアップして下に書いていきます。
☕ EIP-7702:アカウント抽象化
Vitalikも関わったEIPで、ウォレットがスマートコントラクトとして動作できるようになり、ガス代の肩代わりが可能になります。また複数の操作を1つのトランザクションで処理できるので、例えば「トークン承認+スワップ」を1つにでき、UXとガス代が改善されます。またソーシャルリカバリー(信頼できる人による鍵の復元)もできるようになります。
☕ EIP-7251:ステーキング上限の引き上げ
バリデータの最大ステーク額が32ETHから2048 ETHへ引き上げられ、大口ステーカーは複数ノードを1つに統合できるようになります。これによってノード運用コストが削減されます。
☕ EIP-7691:blobの倍増
L2用のデータ領域「blob」の数が、3-6個だったのが6-9個に増えます。これによってRollupのコストが10 - 100倍ほど削減されることが見込まれます。
☕ EIP-2935:ブロックハッシュのステート保存
過去のブロックハッシュ(直近8192ブロック分=約36時間分)をオンチェーンで保持し、スマートコントラクトから履歴参照ができるため、分散型オラクルやクロスレイヤーの検証などに利用できます。
☕ EIP-6110:バリデータのオンボーディング短縮
バリデータのデポジット処理がエグゼキューションレイヤーに移行されるため、約12時間かかっていたアクティベーションのプロセスが、約13分で完了することになります。新たにバリデータを始めるノードにとって便利になります。
ちなみにEthereum財団のリーダーシップに変更があり、コミュニティの動きも変わり、今後はアップグレード(ハードフォーク)をもっと速めていくことを目指すようです。次のアップグレードFusakaは今年の年末を目指しています。
■ This Week in Crypto
1.Coinbase agrees to acquire crypto derivatives exchange Deribit in record $2.9 billion deal
Coinbaseが、暗号資産のオプション・先物取引所であるDeribitを$2.9Bドルで買収することを発表しました。$700Mドルの現金 + Coinbaseの株式での買収になっています。
この発表の翌日には、「Coinbase Derivatives」にて、24時間365日のBTCとETHの先物取引を発表していて、Deribit買収でデリバティブ事業を伸ばしていく方向なのが分かります。
また将来的にはパーペチュアルも追加される予定になっています。
2.Stripe unveils new stablecoin feature following $1.1 billion Bridge acquisition
決済大手のStripeが、新たなステーブルコイン機能「Stablecoin Financial Accounts」を発表しました。この機能により、世界101ヶ国の事業者が、ステーブルコインを保有したり、グローバルに送金することが可能になります。
リリース時点では、USDCと、BridgeのUSDBという2種類のステーブルコインに対応していて、今後さらに追加する計画です。
3ヶ月前にこのニュースレターで触れたことがありますが、StripeはステーブルコインのプラットフォームBridgeを$1.1Bドルで買収完了していました。その買収の結果のプロダクトといえます。
さらにStripeは、AIをつかった取引の不正検出の仕組みも発表しています。
3.Web3 consumer rewards platform T-Rex nets $17 million in pre-seed funding
Web3のコンシューマー向けエンタメプロトコル「T-Rex」が、プレシードで$17Mドルを調達しました。Portal Ventures、North Island Ventures、Framework Ventures、Arbitrum Gaming Venturesなどが参加しています。
T-Rexは、TwitterやTikTok、YouTubeなどのプラットフォームでコンテンツを視聴するユーザーにクリプトで報酬を与える仕組みを作っています。なおArbitrum Orbit上で構築されています。
ユーザーはブラウザ拡張機能をインストールして、コンテンツ視聴中に画面端に表示されるポップコーンのアイコンをクリックすることでポイントを獲得し、それをトークンに交換できるようになります。
(zkTLSをつかって、プライバシーを保ちながらWeb2とWeb3間のデータ検証ができます。)
またユーザーの好みを学習して、より特化した分散型アプリやコンテンツをレコメンドするようになるそうです。
Q3に拡張機能をローンチ予定で、メディアやIPとのコラボを目指しています。
4.DogeOS Raises $6.9 Million in Funding Round Led by Polychain Capital to Launch Dogecoin App Layer
DogeOSは、Polychain Capitalがリードする資金調達ラウンドで$6.9Mドルを調達しました。
DogeOSは、DOGEをつかったプロダクトを使っています。ユーザーはDogecoin上で、DOGEでのイールドファーミングやステーブルコインなどのDeFi活動が可能となります。
MyDogeウォレットの開発チームが手がけています。
5.Doppel Raises $35 Million Series B
直接クリプト系のプロジェクトではありませんが、AIをつかった「ソーシャルエンジニアリング防止プラットフォーム」であるDoppelが、シリーズBで$35Mドルを調達しました。(評価額は$205Mドル)
Bessemer Venture がリードし、9Yards Capital、Sozo Venturesなどが新たに参加し、既存投資家であるa16zやSouth Park Commonsも再出資しました。
Doppelは、ドメイン、SNS、メール、アプリなどを経由した攻撃に対して、可視化し無力化する「Doppel Vision」を提供しています。LLMと人間の専門分析を組み合わせたアプローチととり、法人の顧客がすでについています。
OpenAIとも連携していて、サイバーセキュリティ専門家の判断を学習したAIエージェントを開発中です。
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