EPNSのローンチとAMA
ウォレットへのプッシュ通知プロトコルである EPNS が、1月11日にメインネットでローンチする発表をしました。またウォレット to ウォレットのメッセージも今後サポートされると発表されました。
まずは、エアドロップ、保険の請求、攻撃時などにユーザーに通知するような、プロトコル to ウォレットの通知が開始されます。
私は投資家としてEPNSチームと2020年から一緒に働いているのですが、今回のメインネットローンチに向けて、創業者とのAMA(ask me anything)をすることになりました。
前にTempusでやったのと同じように、テキストベースで、かつ日本語の翻訳をして実施するので、ぜひ参加してみてください!
事前に質問をした人の中から、良い質問については $PUSHトークン(or NFT?)が配布されるそうです。
また今回、メインネットのローンチに向けてインタビューしたことを短めにまとめたので、以下でぜひご覧ください。
CoffeeTimes: こんにちは! EPNSとは何かを簡単に教えていただけますか?
EPNS: Ethereumプッシュ通知サービス(EPNS)は、Ethereumのユーザーがオンチェーンまたはオフチェーンのアクティビティに関する通知を受け取ることができる分散型プロトコルです。
CoffeeTimes: なぜこのプロジェクトを始めようと思ったんですか?
EPNS: 今、日常的にWeb2アプリのプッシュ通知に慣れていますが、この「ユーザーに情報を提供したり、関心を持ってもらうための方法」がなかったら、Web2.0全体はまったく違ったものになっていたかもしれません。
Web3には、今のところユーザーにプッシュ通知を送信する機能がありません。例えばDeFiで清算されたことを知るには、パソコンでアプリにログインする必要があります。これは、2000年代の最初の10年間によく似ています。メールが届いているかどうかを確認するには、メールアカウントにログインしなければなりませんでした。
EPNSは、ゲームやDeFi、ソーシャルメディアなど、Web3アプリがユーザーにプッシュ通知を送れるようにすることを目指しています。
CoffeeTimes: いまEPNSがやってるコラボレーションで、おもしろいものは何でしょうか?
EPNS: DeFiのコミュニケーションレイヤーを構築するために、常に新しいパートナーシップを模索しています。
最近では、Ethereum Name Service(ENS)とUniswapなどとコラボをしています。例えばENSでは、ドメインの有効期限が近づいているユーザーに通知を配信して、ドメインの更新を促しています。
また、Symphony Finance、Huobi Global、CoinDeskなどと提携し、ユーザーにプロトコルの最新情報を提供し、参加を促しています。
CoffeeTimes: メインネットのローンチするにあたって、マルチチェーンに対応しますか?
EPNS: Ethereumだけでなく、Web3全体のデフォルトの通信レイヤーを構築したいと常に考えていました。主要なスマートコントラクトであるEPNS Coreはイーサリアムに残り、今年のフォーカスとして、他のブロックチェーンネットワークにサービスを拡大します。
Binance Smart ChainやPolygonは、すでにエコシステムが整っているため最初のターゲットとし、そこからDeFiの残りの部分へと拡大していきます。
CoffeeTimes: どうやって分散型のメッセージング・インフラを実現するんでしょうか?ネットワークがノードにインセンティブを与えたり、トークンをステークさせて悪意のある行動を罰する?
EPNS: EPNSには、悪意のある行動やスパム通知を回避するための複数のメカニズムがあります。
まず、このプロトコルのユーザーは、自分の好きなチャンネルを選び、それだけを購読する権限を持っています。ユーザーが特定のチャネルの購読を解除すると、そのチャネルは二度とそのユーザーに通知を送ることができません。
次に、EPNSのプッシュノードは、チャネルが送信した通知を検証する役割を担っています。
ノードは、チャンネルが関連性を維持し、後の段階で悪意のある行動を取らないことを保証します。また、チャンネルにはスパムスコアが割り当てられていて、ポジティブな行動とネガティブな行動の両方で更新されます。
これにより、チャンネルがユーザーに迷惑をかけることを防ぎ、ユーザーはどのチャンネルを信頼すべきかを知ることができます。さらに、常に関連性を維持しているチャンネルは、プロトコルによってインセンティブが与えられます。
CoffeeTimes: 今後の予定を簡単に教えてください。
EPNS: 今週に予定されているメインネットのローンチの後、ブロックチェーンに依存しないマルチチェーン化が最優先事項で、続いて重要なガバナンスのアップデートを行います。また今年は、チャンネルやサブスクライバーにインセンティブを与えることを目指しています。
フロントエンド、バックエンド、PUSHモバイルSDKとツールキット、サブグラフ、EPNS dAppの開発も、継続して行われます。
また、iOSおよびAndroid用のモバイルアプリを更新して、ユーザーがブラウザ上でWeb3サービスからの通知を受け取ることができるようなブラウザ拡張機能を構築することも計画しています。
CoffeeTimes: ところで、EPNSがマルチチェーンに対応した場合、Ethereumだけに限らないので、名称は「Ecosystem Push Notification System」とかに変更するのでようか。笑
EPNS: いい提案ですが、おそらくEPNSがDeFiのほとんどに統合されたときに検討したいことです。しばらくは Ethereum Push Notification Serviceです。
CoffeeTimes: コミュニティは成長していると思いますが、これまでどのようにしてプロトコルを推進してきたのでしょうか?徐々に成長してきたのか、それとも一気に加速する出来事(ハッカソンや資金調達、発表など)があったのでしょうか?
EPNS: ETHGlobalの「Hack Money 2020」ハッカソンで、プロトコルのPoCを考え出したことが、私たちにとってのゲームチェンジャーだったと思います。このハッカソンでDeFiが注目され、それ以来、イーサリアムのエコシステムから注目されるようになり、最終的には投資家、パートナー、支援者を獲得することができました。さらに、EPNSを今日のようにするためにたゆまぬ努力を続けてきた高度なスキルを持つチームを構築しました。
CoffeeTimes: ありがとうございました!EPNSについてもっと知りたいのですが?
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■ Last Week in Crypto
1.Australian Open Apes Into Tennis NFTs and Decentraland, Too
テニスの全豪オープンは、コート上の区画に対応する6,776個のNFTを発行すると発表しました。1つ1つがジェネラティブアートになっていて、1個 0.067 ETHという価格で、1月13日に販売を予定しています。
また各NFTは、テニスコートの区画のどこかを表すことになっていて、「テニスコートの一部を所有する」そうです。
Gif:Twitter
そして、ウィニングショット(試合を決めるショット)がバウンドした区画のNFTホルダーは、NFTがアップグレードされ、メタバース内のウェアがエアドロップされたり、実際のテニスボールがプレゼントされたり、という特典があるそうです。
各NFTが、コート内のどの区画を示すかについては、1月13日にNFTが発行された後に決まる予定になっています。
このときのランダムの生成は、ChainlinkのVRFを利用するらしく、しっかり企画がされているなぁと感心するのですが、メタバースのデザイン会社であるRun It Wildと協力してイベントの企画・実行をしたそうです。
メタバース
さらに、メタバースプラットフォームであるDecentraland上で、大会のバーチャルイベントをするとも発表しています。コロナ渦で多くの人が集まれない状況が続いているということもあって、このようなバーチャルイベントがより一般的になる可能性があります。
2.LinksDAO NFT Sale Books First $10M Toward Buying an Actual Golf Course
「LinksDAO」という、ゴルフコースを購入する予定のDAOが誕生し、ガバナンス権を持つNFTを販売して $10.4Mドル を調達しました。
LinksDAOが、NFTの10%を予備として保有し、将来の景品や、アスリートとのパートナーシップのために使用するそうです。
ちなみにプロジェクトのリーダーのMike Dudasは、メディアThe Blockの創業者です(現在はPaxosで勤務)。
ガバナンストークン
またLinksDAOは、LINKSというガバナンストークンを2022年の早い時期にローンチする予定になっていて、NFTホルダーに配布されます。
NFTは
Global Membership
Leisure Membership
という2種類があって、Gobalのほうは4倍のLINKSが割り当てられることになっています。
そしてガバナンストークンLINKSの保有者が、買収するゴルフクラブを決める等のガバナンスに参加します。今のところニューヨークとマイアミの地域の候補が多いそうです。
他にもNFTには、ゴルフのティータイムの割引、著名人がゲスト参加するDiscordへのアクセスなどの特典を得ることができます。
「NFTを購入してレストランの会員制クラブに入会する」モデルや、「集団で資金を提供するConstitutionDAO」のモデルなどを参考にして、良いところを組み合わせていて、世界最高のゴルフレジャークラブを作ることが目標になっています。
今後
一流ゴルフコースを購入して運営するには 数百 million ドル以上かかるそうで、そのため追加の資金調達をする予定としています。
またDAOは現実世界の資産を保有できないので、「LinksDAO Inc.」という事業体を作り、そこがゴルフ場の所有やメンテナンスの運営会社となることを目指しているそうです。
DAOメンバー(NFTホルダー)に、その会社を購入する機会を与えたいらしく、実現すれば、NFTホルダーがゴルフ場の一部を取得して、その運営からの収益を受け取ることになります。
音楽NFTも流行ってきましたが、スポーツNFTも盛り上がりつつあります。
3.PayPal Explores Launch of Own Stablecoin in Crypto Push
PayPalが、独自のステーブルコインの発行を検討しているという、Bloombergの報道です。iPhoneアプリ内にPayPal Coinのロゴがあり、Bloombergが見つけたそうです。
PaypalのシニアVPのホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ氏も「当社はステーブルコインを検討しています」と答えています。
PayPalのクリプト部門で最近あった社内ハッカソンに由来しているそうで、ロゴや名前、機能は変わる可能性があるとのことです。
Arbirtum上で、資産効率の高いステーブルコインを目指す Vesta Finance が資金を調達しました。
エンジェル投資家によるラウンドになっていて、Tetranode, DCFGod, Fiskantes, Not3Lau Capital, Sam Kazemian, 0xmons, Wangarian, OmniscientAsian, PopcornKirby, Nick Chong, Calvin Chu, Jae Chung, Anthony Sassano, Eric Conner, Mariano Conti, Shuyao Kong などが参加しています。
ドキュメントを読むと、マルチ担保のLiquityというイメージで、それをArbirtum(EthereumL2)上で実現します。前回かいたSolana上のHubbleにも近いです。
マルチコラテラル
ETHとrenBTCを担保にして、VSTというUSDステーブルコインを借りることができます。またすぐにgOHMを担保にする予定にもなっています。
最初はこの3つから始まり、今後はガバナンスによって、他の資産を担保にしていくことになっています。
110%の最低担保率
ETHを担保にすると、最低担保率110% かつ金利なしで借り入れができるようになります。例えば$100ドル分のETHをロックして最大$90.9ドルのVSTを発行できます。(最大で借りると、ETH価格が下落したときにすぐ清算されてしまうので、攻めすぎない担保率の管理が大切です)。
またリカバリーモードもあり、このあたりもLiquityのモデルと同じです(リカバリモードのときの最低担保率が何%なのかはまだドキュメントには書いていませんでした)。
今後、1月中にフェアなローンチを予定しています。
ガバナンストークンの大部分(総供給量の50%以上)は、インセンティブ・プログラムを通じてコミュニティの手に渡るという配分になっています。
5.Coming on 1/11: Nas Drop on Royal!
以前このメルマガでも説明をした音楽NFTプラットフォームのRoyalが、ヒップホップ界の伝説的存在であるNasと提携して、2つの曲の所有権をNFTとして販売することになりました。ちなみにNasは、Coinbaseなどに投資するなど、前から界隈で活躍している1人です。
今回のNFTは、ストリーミングの収益を受け取ることのできる権利が組み込まれたNFTで、1月11日にリリースされます。
1つ目は、2020年グラミー賞受賞アルバム「King's Disease」のトップ曲で、合計760トークンが販売されます。
2つ目は、2021年グラミー賞にノミネートされたアルバム「King's Disease II」の中で最もストリーミングされた曲で、合計1110トークンが販売されます。
クレジットカードと、Ethereum、Polygonの両方でUSDCを受け付けています。
6.Samsung to introduce NFT platform within its new smart TVs
サムスンが、新型スマートテレビでNFTの購入が可能になると発表しました。今年中に発売予定の各モデルがNFTに対応します。
NFTエクスプローラーとマーケットプレイスの集約機能があり、テレビ画面でNFTアートを見たり、そのまま買ったり、持っているNFTを展示することができるプラットフォーム、ということのようです。
Samsung Nextは、Axie Infinityや Dapper Labs、The Sandboxなどにも投資をしていて、実は以前から熱心な企業です。
7.Animoca Brands Leads $9M Round in NFT Data Aggregator CryptoSlam
NFT業界のデータアグリゲーターであるCryptoSlamは、$9Mドルを調達しました。Animoca Brandsがリードし、LinkedIn創業者のリード・ホフマン氏、Zynga創業者のマーク・ピンカス氏などが参加しています。
CryptoSlamは、CoingeckoやCoinMarketCapのようなポータルをNFTコレクションランキングとして提供しています。
今後は、エンタープライズ向けにNFT情報のAPIを開発することを予定していますが、こういったNFTのデータのアナリティクスは、今後も需要が出てくるかと思います。
8.Solana DeFi Protocol Exotic Markets Raises $5M Ahead of Mainnet Launch
Solana上のDeFiプロトコル Exotic Markets は、$5Mドルを調達しました。MulticoinとAscensive Assetsがリードで、トークンによる調達になっています。
他にもAlameda Research、Animoca Brands、Morningstar Ventures、Solana Capitalなどが参加しました。今回の資金の一部は、2月下旬に予定されているメインネットローンチ時のマーケットメイキングに充てられます。
Exoticは利回りとリスクを調整するプロトコルのようで、ガバナンストークンではなくステーブルコイン建ての利回りを得れるようにするなどのストラクチャード商品とのことです。
ステーブルコイン建ての利回りといえば、TokemakやOnfidoなどのLaaS(Liquidity as a Service: 流動性サービス)の登場によって、今年はガバナンストークンを配るだけの流動性マイニングが不要になっていく感じもします。
9.Aave launches permissioned DeFi platform Aave Arc, Fireblocks becomes first whitelister
レンディングプロトコルの Aave が、許可制バージョンである「Aave Arc」をローンチしました。
Aaveの許可制バージョンについては7月に書きましたが、コンプライアンス準拠した方法でDeFiに参加したい機関投資家向けのプラットフォームで、審査に通った機関だけが、クリプトの貸し借りできるようにするものです。
(参考:Bspeak! 2021年7月12日号『Aave Pro』のねらい)
カストディ会社のFireblocksが、Aave Arcの最初のホワイトリスター(ホワイトリストに入れる企業を精査する役割)として加わり、Aave Arcを使いたい機関のデューデリジェンスをします。
ここではFATFのガイドラインに沿ったKYCとデューデリジェンス行い、ローンチ時点で、Bluefire Capital、Celsius、CoinShares、GSR、Ribbit Capital、QCP Capital、Wintermuteなどを含む30の機関投資家をホワイトリストに登録したそうです。またこの時点では、ETH、wBTC、USDC、AAVEの4つの資産に対応します。
「Permissioned DeFi」は最近たまに目にするトピックで、賛否両論わかれるテーマですが、個人的にはそこまで大きくなる予想はしていません。もちろん一部DeFiを利用することで効率化される部分があると思いますが、DeFiのポイントは「許可なしで誰でも参加できるオープンな金融」だからです。
10.Ethereum-based video streaming platform Livepeer raises $20 million in new funding
分散型ビデオストリーミングのプロトコルLivepeerは、$20Mドルを調達しました。
Alan HowardとTiger Globalが参加したほか、Digital Currency Group、Northzone、Warburg Serresといった既存の投資家が参加しました。
まもなくConfluenceと呼ばれるアップデートが予定されていて、ここでLivepeerプロトコルがArbitrumに移行する予定になっています。
Livepeerは、動画をトランスコードするためのプロトコルです。トランスコードとは、あるファイル形式から別のファイル形式に変換するプロセスのことで、それを世界中のノードがリソースを出し合って、分散型のネットワークで実施する、というプロジェクトです。
将来的には、動画NFTをサポートすることなどにも計画しているそうです。
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