アメリカの規制と a16z のチーム強化
先週Coinbaseの創業者兼CEOのブライアン・アームストロングが、TwitterでSECに対する不満をツイートしました。
DeepLで翻訳したので、読んでみてください。
その後すぐ、ブログでも同様の内容が、Chief Legal Officer(法務のトップ)から投稿されています。
要約すると、
Coinbaseが「ステーブルコインを預けると利回りが得られるレンディング製品をだしたい」とSECに打診したところ、「このレンディング製品は証券に関連する」「ローンチしたら訴訟を起こす」という姿勢を示された、という内容になります。
そしてSECが明確なガイドラインを出してくれないため、Coinbaseがブログやツイートなどでロビイングしている、という構図になります。
最近米国では、上記の話だけでなく、インフラ法案など規制の話題が増えています。それに対応するように、Andreessen Horowitz (a16z) がチームを強化していて、CFTC(アメリカの政府機関)の元コミッショナーのBrian Quintenz氏をアドバイザリーとして採用したと発表しました。
Brian氏は、4年間CFTCの中でもクリプトに強いコミッショナーとして活躍した人です。この期間にCFTCは、デリバティブ取引所で初めてBTCとETHの先物契約を承認しました。
他にも a16z は、規制関連の人材を多く採用し始めていて、
アンソニー・アルバネーゼ(ニューヨーク証券取引所の元COO)
トミカ・ティルマン(バイデン大統領のシニア・アドバイザーを務めた人物)
ビル・ヒンマン(元SECの法人金融トップ、ETHは証券ではないと演説した人物)
ブレント・マッキントッシュ(元財務省国際担当次官)
などを最近仲間に加えています。この動きについて、a16zのジェネラルパートナーのKatie Haunは、ブログで以下のように書いています;
クリプトは岐路に立たされています。この分野のイノベーションは急速に加速しており、信じられないような新しいプロジェクトが毎日のように立ち上がっています。ビジネス、金融、政府のあらゆる分野のリーダーたちが、インターネットの未来はクリプト技術によってもたらされるという当社の見解を認め始めています。
だからこそ、クリプトの規制が、国家的な議論の最前線に立っているのも不思議ではありません。インフラストラクチャー法案で見たように、クリプトコミュニティが規制当局や政策立案者と生産的な対話を行うことが、かつてないほど重要になっています。
a16zが多額の投資をしているクリプトに規制面で逆風が吹いていることを考えると、このような採用がもっとも有効なのだと思います。
これは、a16zのポートフォリオ企業としては、強いリーガルチームの力を借りることができることを意味しています。このように資金だけでないサポートができるというのが、a16zの強みになっています。
■ Last Week in Crypto
1.Fractionalized NFTs Get Funding Boost as SZNS Raises $4M From Framework, Dragonfly
SZNS(シーズンズと発音するそうです)が、Framework VenturesとDragonfly Capitalがリードで、$4Mを調達しました。
ユーザが、複数のNFTをまとめてインデックス化して、分割所有権を売り出すことができます。
NFTが成熟してくると、NFTを集めるキュレーターが増えてきます。キュレーターは、自分の集めたNFTをまとめて、SZNSでトークン化し、世界中のNFTコレクターに投資してもらうことができます。
sznsの仕組み
ユーザーは、インデックス化したい複数のNFTを、SZNSのコントラクトに預けるだけで、UCF(ユーザー・キュレーション・ファンド)というERC20トークンを作成することができるようになります。
そこで売出し条件を設定することができるようになります。
トークンのティッカー
トークンの総供給量
売却されるトークンの割合
1トークンあたりの販売価格
販売期間
例えばアリスが複数NFTコレクションを分割化して売り出したい、またはキュレーターとして名を馳せたい、とします。
$aliceという名前を設定し、総供給量は10000 $aliceトークン、売り出されるトークンはそのうちの50%、1トークンあたりの価格は0.01ETH、販売期間は2週間、などと設定し、売り出すことができます。
また、$aliceを買って所有している個人やグループが、分割所有権ではなく、NFTそのものを所有したい場合は、バイアウトを提案することができます。
バイアウト
バイアウトは、価格を提示して全部の分割所有権を「買い取る」ことで、分割されたものではなく、NFTそのものを得られるプロセスです。
実際にやるには、以下の条件を満たす必要があります。
バイアウト提案者は、UCFトークンの20%以上を所有している必要があり
トークン保有者の85%以上の賛成が得られる必要があり
という条件です。
例えば、ボブが $alice を買い取るために、10ETHを提案したとします。すると$aliceトークンの保有者は、受け入れる or 拒否する について投票することができます。
受け入れられたら、この10ETHは$alice保有分に応じて分配されます(つまり$aliceの10%を持ってる人は、1ETHを得ます)。
拒否するには、$aliceトークン供給量の10%以上の投票が必要となりますが、これらのパラメータは、ネイティブトークンである $SZNSトークンのガバナンスで変更される可能性があります。
SZNSトークン
SZNSで作成されたUCF(分割所有権のトークン)は、$SZNSをリザーブとして持ちます。こうすることで、常に$SZNSと交換可能になります。またUCFが作成されるごとに手数料として1%が、SZNSのトレジャリーに溜まっていきます。
近々SZNSトークンの初期配布の詳細が発表される予定になっています。
2.Eden, priority transaction network for Ethereum, raises $17.4 million
Eden Networkが、$17.4Mを調達しました。EDENトークンのセールによる調達で、Multicoin Capitalがリードし、Jump Capital、Alameda Research、DeFiance Capital、Yearn創始者のAndre Cronje氏などが参加しています。
もともと Archer DAO というプロジェクトでしたが、つい先月リブランドし、Edenという名前になりました。
Edenとは何かを書く前に「MEV」について触れる必要があります。
MEVについて
パブリックであるトランザクションの内容をみて、処理されるトランザクションの順番を並び替え、得られる利益のことを MEV (Miner Extractable Value)と呼びます。最近では、MEV(Maximal Extractable Value : 最大抽出可能価値)などとも呼ばれ始めています。
例えば、設定されているガス価格を見て、それを上回るガス価格を設定した先回りするトランザクションを発行して利益をあげる「フロントランニング」も、MEVの一種といえます。
ユーザからすればMEVによって損することもあるため、これを保護するプロジェクトも多く出てきて、ここ1年ほどでよく取り上げられるトピックになりました。
とくに大手VCのParadigmはこの分野に積極的で、研究をしたりMEVを防ぐプロジェクトに投資をするなどしています。
Eden
このMEV問題から、ユーザを守るためのプロジェクトの1つがEdenです。
利用すると、トランザクションがEdenのプライベートネットワークを介して処理されるため、トランザクションの順番を入れ替えられないで済み、MEVやフロントランニングなどから保護されます(より良い価格で取引を行うことができます)。
ユーザ視点で、Edenを利用してメリットを得る方法は2つあります。
1つ目の方法は、十分な量のEDENトークンをステークしたDEXを利用する方法
2つ目の方法は、EDENトークンをステークし(最低100 EDEN)、MetaMaskの設定し、Eden RPCと直接つなぐ方法
です。
こうすることで、Edenのネットワークに接続してトランザクションを処理できますが、EDENブロック内では、EDENトークンのステーク量に応じて処理される順番が優先されます。
画像:Edenホワイトペーパー
Edenのホームページを見ると、Ethereumのハッシュレートの54.83%が、Edenのブロックで占めているそうです。つまり半分以上がEdenのブロックになりますが、これが本当かどうかパブリックに検証できないため、今ダッシュボードの開発に取り組んでいるそうです。
CowSwap
Edenとは別プロジェクトですが、MEV保護のDEXといえば、CowSwapも開発がすすんでいます。
Gnosisプロトコル v2 をベースに作られた実験プロジェクトで、様々なチェーン上の流動性ソースに対してバッチオークションで取引をマッチングする、DEXアグリゲーターとも言えます。
ユーザはCoW(Coincidence of Wants)という注文を出すことができます。これは、「欲しい物の偶然の一致」と訳すことができますが、2人のユーザがそれぞれ相手の欲しい資産をもってるときに、外部のマーケットメーカーや流動性提供者を介さずに、2人の間で直接取引が決済されます。
他のCowSwapユーザとの間で直接決済できない余剰の注文量は、AMM(今はUniswap、今後順次追加予定)に送られて交換されます。
バッチオークションを利用し、出された注文は一時保留されて一定間隔ごとに決済されるため、一つのバッチ内でのトランザクションの順番を決める必要がなく、マイナーやフロントランナーが操作する余地がない → MEV対策になっていると言えます。
3.Liquid staking protocol Lido now supports Solana's SOL token
Ethereum 2.0とTerraのステーキングをサポートしている Lido が、Solanaに対応しました。これでLidoのユーザーは、SOLをステークして、その見返りとしてstSOLを受け取ることができるようになりました。
通常トークンをステークするとロックされるため、他の活動に使用できません。そこでLidoは、stSOL、stETH、stLUNAなどの合成トークンをつくり、DeFiで利用できるようにすることで、さらなる利回りを得れるようにしています。(参照:Bspeak! 2020年10月19日号)
stSOLの場合は、Serum、Raydium、Saber Labs、Phantom、SolFlareなどが対応するそうです。
今後
Lidoは現在 ETH2.0のステーキングでも人気があり、Dune Analyticsをみると、同様のサービスではLidoが1番利用されていることがわかります。
また最近では、Coinbase VenturesやParadigmなどの著名な支援者から投資をうけていて、$75Mドルを調達しています。
今後Lidoは、PolkadotとPolygonのサポートもしていく予定になっています。
4.SubQuery, indexing protocol for Polkadot ecosystem, raises $9 million
PolkadotとKusamaのエコシステムにおけるインデックスのプロトコルであるSubQueryが、$9Mドルを調達しました。
以前の調達は、TheLAOやDeFi Allianceなどが参加していますが、今回は DCG(Digital Currency Group)やNGC Venturesが参加し、自分もこのラウンドに参加しています。
SubQueryは、The Graph と似たようなプロジェクトです。今は集権型のサービス提供をしていますが、来年の初めあたりにはネットワーク分散化とトークン発行を予定しています。またSolanaやTerraなどの別のL1もサポート予定になっています。
The Graph はすでに確固たるポジションを築いていて、Polkadotにも拡張する発表をしているため、競合となります。すでにPolkadotエコシステムで利用されていて、今後もPolkadot/Kusamaによりそった開発を進めていくというのが差別化になるかと思います。
5.Cross-Chain Protocol DeBridge Gets $5.5M in Seed Funding Round Led by ParaFi Capital
クロスチェーンのプロトコル deBridge は、ParaFi Capitalがリードで$5.5Mドルを調達しました。
このラウンドには、Animoca Brands、Huobi Ventures、Lemniscap、Crypto.com Capital、MGNR、IOSG、Fundamental Labs、bitScaleなどの投資家が参加しています。
deBridgeは、今年の春のChainlinkのハッカソンで生まれて、優勝したプロジェクトです。メインネットのローンチは、今年の後半を予定していて、Ethereum、Binance Smart Chain、HECO、Polygon、Arbitrumをサポートする予定です。まずはプロジェクトやユーザーが、クロスチェーンのスワップやブリッジングを実行できるようになります。
このブリッジの領域も、取り組むプロジェクト数が増えてきました。Axelar や LiFi などは注目しておくといいと思います。
6.Solana-Based Game Raises $4.1M to Teach You How to DeFi
DeFiのコンセプトをゲーム化することを目的とした「DeFi Land」が、$4.1Mドルを調達しました。Animoca Brands、Alameda Research、Jump Capital、NGC Ventures、Solana Foundation、Gate などが参加しています。
DeFi Landは、Solana上のゲームで、今年後半にリリースされる予定です。DeFiの要素をもつゲームとして、クリプト外の人たちにリーチすることを目指してゲームを開発しているそうです。ゲーム内の、木や建物などのモノを表すNFTが登場する予定になっています。
7.OpenSea bug destroys $100,000 worth of NFTs, including historical ENS name
OpenSeaのバグで、42個のNFTが誤ってバーンされたという件です。
ENSの開発者ニック・ジョンソン氏が、Opensea上の転送機能を使って、ENSのNFTを送信したところ、誰も管理していないアドレスに送られてしまい、もう二度と利用できなくなってしまったそうです。
ENS名と紐付いているアドレスに関してはまだ変更することができるそうですが、ENSそのものは、誰も秘密鍵をもっていないアドレスが所有しているため、動かすことはできません。
その後、同様の被害がほかにも報告され、影響をうけた32個のトランザクション(42個のNFT)がリストにまとめられています。
それぞれのNFTのフロア価格(市場で入手可能な最低価格)を合計すると$100,000ドルになるそうです。現在はOpenSeaはバグを修正しているそうですが、ユーザ視点からすると、Openseaに預けたわけでもなく、防げた事例でもないため、運が悪かったとしか言えません。
8.Mastercard acquires Cipher Trace to boost crypto security and compliance
Mastercardは、自社のサイバーセキュリティツールを強化し、クリプト規制ガイドラインへの対応を強化するために、ブロックチェーン分析会社のCipherTraceを買収すると発表しました。買収額は非公開です。
CipherTraceは、クリプト領域のデータ収集に加えて、動向に関するレポートを毎年発行しており、DEX用のコンプライアンスツールなども構築しています。
最近ではVisaやMastercardが大きなニュースを出すのが当たり前になってきました。今後も大手企業によるクリプト企業買収は増えていきそうです。
ちなみにこの分野はChainalysisが圧倒的に強く、アメリカの連邦政府との契約・支払いを見ると明らかです。
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