クリプトVC
ここ数年は強気市場だったこともあり、クリプトVCが増えてきました。規模も大きくなってきていて、先週は、元a16zのKatie Haun氏が$1.5Bを調達して2つのファンドを発表しています。
また、Web3という言葉が浸透してからは、既存ファンドもクリプトに投資するところが増えています。VCとしては、資金以外でどう価値を提供できるかがこれまで以上に大切になってきているため、コミュニティやDAOを作るVCも出てきました。
将来的には、活発なコミュニティとVCがますます連携していくことになると思います。そんなDAOとVCのつながりや評判、実績をもとにしたソーシャルグラフができて、新しいソーシャルメディアが誕生するかもしれません。
投資DAOとクリプトVCの進化は今後も面白い分野です。
■ Last Week in Crypto
以前Bspeak!で、元Metaエンジニア4人によって設立された『Mysten Labs』というスタートアップが、a16zなどから資金調達したことを書きました。
そして先週そのMysten Labsからレイヤー1ブロックチェーン「Sui」が発表されました。
Suiは、Diem(旧Libra)の進化版として設計されています。高性能であることを売りに、Solanaよりも高いスループットである 200,000 tps を目標にしているそうです。Metaで開発していたプログラミング言語「Move」もサポートされます。
NFT機能
ゲーム、メタバース、分散型ソーシャルメディアに最適なブロックチェーンにしたいようです。
特にゲームで使われるNFTに注力していて、「ゲームをすることで変化するNFT」を開発しています。
例えば、「ドラゴンを倒した剣(NFT)が、火を放つ能力を得られる」といった変化機能です。
テストネットは今後数カ月に予定していて、メインネットはトークンと共に今年後半にローンチ予定になっています。
2.Former Polychain partner launches $125 million crypto fund with goal of DAO transition
Polychain Capitalの元GPであるTekin Salimi氏は、$125Mドルのクリプトファンド「dao5」をローンチしました。
プライバシー技術、DeFi、NFT、DAOs、レイヤー1インフラなどに投資する予定だそうです。
アドバイザリーボード(案件の審査や発掘を支援するメンバー)には、Avalancheの創設者であるEmin Gün Sirer氏、Terraform LabsのCEOであるDo Kwon氏、Moonpay創業者のIvan Soto-Wright氏、Espresso Systems創業者のBen Fisch氏、CoinSharesのMeltem Demirors氏が参加してます。
面白いのは、将来的にDAOに移行する点です。そのため、dao5がプロジェクトに投資するたびに、投資を受けた創業者側は、将来dao5のガバナンストークンを受け取ることになります。
dao5から投資を受けたプロジェクトが、ポートフォリオの他のプロジェクトとお互いに協力する金銭的インセンティブを持つことになります。
dao5の仕組み
詳細をもう少し書いていきます。2025年に完全なDAOに移行する予定で、この3年の移行期間で、トークンとガバナンスモデルを決めていき、かつファンド資金の70%以上を投資するとしています。
移行時は、
DAO5トークンが発行され、ファンドの投資チーム、アドバイザリーボード、投資先企業の創業者に割当られる
ファンドを構成する法人は解散し、GPの資産はオンチェーンのトレジャリーに移され、トレジャリーはDAO5トークン保有者が所有し管理する
という動きになるそうで、既存VC + 投資DAO という形になっています。
BessemerというファンドがDAOを作ったことも以前書きましたが、付加価値をつけるためのVCの変化(および競争)も始まってきました。
3.Cosmos Protocol Archway Raises $21M to Provide Developer Rewards
Archwayの開発元が$21Mを調達しました。CoinFundとHashedが共同でリードし、Blockchain Capital、Wintermute、Figment、Chorus One、stake.fish、Lemniscap、Hypersphere Ventures、Cosmostationが参加しています。
Archwayは、アプリ開発者に報酬を与えるCosmosベースのチェーンです。
仕組み
Archwayでは、チェーン上にユーザーを増やしたアプリが、ARCHトークンを得ることができます。この報酬は開発者が自由に使用できるため、そのアプリのユーザーに対してインセンティブを与えることもできます。
具体的には、アプリへの報酬として、以下のようなものが用意されています:
Archwayチェーン上の『ガス手数料』は、50%がアプリへ、50%がノードへ
Archwayチェーン上で新規発行される『ブロック報酬』は、25%がアプリへ、75%がノードへ
また任意で『スマートコントラクト手数料』を設定できる
3つ目のスマートコントラクト手数料は、開発者が設定し、いつでも手数料を調整することができます。この手数料は、ガス代に組み込まれるので、エンドユーザーには、トランザクションに署名する際に合計手数料が表示されるだけになります。
またインセンティブ付きテストネットも発表されていて、4月11日から開始予定になっています。
4.prePO Raises $2.1M in Strategic Round
プライベート市場の合成資産を取引できるDEX『prePO』は、$2.1Mを調達しました。Republic CapitalとIOSG Venturesがリードで、その他多くのファンドとエンジェル投資家が参加しています。
prePOは、IPO前のスタートアップの株式や、まだローンチしていないトークンを(合成資産として)取引できるようにすることを目指しています。
シミュレーターを触ることができますが、例えば SpaceXの株を取引したいときに、評価額レンジを自分で選ぶことができるようになっています。
(シミュレーターには、トークン未ローンチのクリプトプロジェクトもあります。)
独自トークンであるPPOトークンが2022年2Qにローンチ予定で、その後Arbitrum上でプラットフォームをローンチ予定になっています。現在PPOトークンのホワイトリストも公開されています。
5.Do Kwon reveals plan to increase UST's bitcoin reserve to $3 billion
TerraのCEOであるDo Kwon氏は、Luna財団(LFG)がビットコイン準備金のために$2.2 Billionドルを調達したと発表しました。短期的には$3 Billionドルに増やし、長期的には10Billionドルにしたいとツイートしています。
つい最近Bspeakで触れましたが、ステーブルコインUSTの準備資産としてビットコインを使う予定です。
USTの価格安定のためにどのようにビットコインを使うのかは謎のままでしたが、これについて、大手トレーディング企業Jump Tradingが提案を投稿しました(Jump Tradingは、LUNAに投資をして、このリザーブを作るのに協力している企業です)。
Jump Tradingの提案では、以下2つのルールでリザーブプールが動作します。
1.UST価格が通常通りなら、トレーダーはBTCをつかってUSTを購入することができます。例えば、1ドル分のBTCを渡して、1USTを購入することができます。
(UST価格の市場価格が$1以上になったときは、トレーダーがこのリザーブでUSTを買って、市場でUSTを売るので、UST価格は$1に近づきます)。
2.もし価格がUST価格が不安定になって、1UST=$0.98より下落した場合は、ユーザーは1USTを提供して、$0.98ドル分のBTCを手に入れることができます。
例えば極端な話、市場価格が 1UST=$0.90になってしまっても、このリザーブを使って$0.98のビットコインに交換できます。
これでUSTが1ドルから下に乖離しても、とりあえずは$0.98のレートで交換できるという状況を作ることができます(もちろんリザーブの$3 Billionで支えられるところまでが限界なので、リザーブ資金を増やそうとしているわけです)。
まだ提案段階ですが、いずれにしても、「UST保有者の信頼感を高めるため」にリザーブの資金を使う予定になっています。
6.Worldcoin to Raise $100M at $3B Token Valuation: Report
以前話題になった、「目をスキャンして受け取る」Worldcoinというプロジェクトが$100Mドルを調達していると報じられました。
投資家にはa16zやKhosla Venturesなどがいると噂されていて、Worldcoinのトークンの販売を通じての投資のようです。前の調達ラウンドでは、a16z、Coinbase Ventures、FTXの創業者SBFや、LinkedInのリード・ホフマンなどが投資していました。
ただ先週のbloombergの記事では、あまりうまくいっていないことが書かれています。
規制や運営上のハードルがあって、7カ国語での事業を停止して、ローンチ計画を練り直すそうです。具体的には、スマートフォンの所持が限られている場所があったり、精神的な抵抗があったり、詐欺があったり、などが問題になっています。
目標であったローンチも何度か延期し、現在は、今年後半に設定されています。
7.Decentralized Creator Platform Joystream Raises $5.8M
クリエイター動画プラットフォームJoystreamは、$5.85Mドルを調達しました。
Digital Currency Group (DCG)、Hypersphere、Defi Alliance、D1 Venturesが投資しています。
Joystreamは、Polkadotベースのチェーンで、分散型YouTubeのような動画プラットフォームを目指しています。
クリエイターは、自分の動画を『Joystreamブロックチェーン』上のNFTとして発行でき、各チャンネルは独自のネイティブトークンを持ちます。利用者は、お気に入りのクリエイターの成功に投資したり、NFTを転売することができるようになります。
もともとBitTorrent上で開発していたそうですが、いろいろとピボットして今年の2Q か 3Qにローンチ予定になっています。
8.Crypto data firm The TIE raises $9 million in Series A funding round
クリプト関連のデータを提供するThe TIEは、$9Mドルを調達しました。
TIEの主力製品は、マーケットや企業のニュース速報を見ることができる「SigDevターミナル」で、機関投資家をメインのユーザとしています。
またデータとパターン分析をして、マーケティング支援するサービスも始めていて、Ava labs(Avalancheの開発元 )などが利用しているそうです。
最近はデータサービス分野の調達が増えています。Lukkaが$110M、Dune Analyticsが$69.42Mを調達しましたが、評価額はどちらも$1Bドルを超えるユニコーンです。
9.Trading giant Jane Street backs NEAR-based lending protocol in new funding round
NEARブロックチェーン上のレンディングプロトコルBastionが調達しました。
大手トレーディング企業のJane Streetが参加し、他にもParaFi Capital、Digital Currency Group、CMSなどのファンドや、Darren Lau氏、0xMaki氏などの個人投資家も参加しています。
Jane Streetは、既存金融のマーケットメーカーとして有名です。過去には1inchのシリーズBに参加していますが、これまではクリプトに積極的な投資はしてきませんでした。そのため今回のクリプト側への投資は注目されているようです。
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