■Last Week in Crypto(先週のニュース)
主に海外の記事や英語の論文について触れます。
1.https://blog.circle.com/2020/03/10/programmable-dollars-for-your-internet-business/
Circleは USDC(ステーブルコイン)のビジネス利用を拡大するために、USDCビジネスアカウントとAPIを発表しました。 利用する企業はパブリックチェーンを使って、USDCの支払いを受けつけることができます。
開発者がUSDCを簡単にシステムに統合できるように、Payments API、Wallets API、Marketplaces APIの3つが提供されます。このうちの1つは、企業がクレジットカードの支払いを受け入れて、USDCに決済できる支払い用のAPIで、今後数週間でさらに多くのAPIを展開する予定になっています。
Circleは、Poloniex等のUSDC関連以外のビジネスを売却した後、ステーブルコインのビジネスに全リソースを投下しています。USDCはCoinbaseのおかげもあり巨大になっているため、選択と集中という意味では英断だったのではないでしょうか。パブリックチェーンを使った支払いアプリやシーンを増やすために便利なものとなるはずです。
2.INX's $130M IPO to Launch Next Month as Exchange Seeks NY BitLicense
暗号通貨/セキュリティトークンの取引所であるINXは、Ethereum上でINX自身のセキュリティトークンを発行し、$130 millionドルのIPOを計画していることが明らかになりました。実施は4月を目指しています。
また米国の規制当局をなだめるために、INXは本社をジブラルタルからNew Yorkに移すようです。New Yorkでは、米国で最も厳しいと言われるBitLicenseというライセンス取得する必要があるので、他の取引所は逆にNew York州民をブロックするか他の国へ逃げる取引所が多い中、INXはライセンス取得と遵守の算段があっての移動かと思います。
目論見書によると、今回のトークン公募は、(株式の販売と違って)会社所有権を付与するものではなく、トークン保有者はINXの営業活動の純キャッシュフローの40%が、トークン持ち分に応じて配分される、というものです。
また他の取引所トークンと同様に、取引手数料として利用することもでき、その場合は10%の割引になります。破産の際は、株式保有者が先に(優先的に)返済され、残った分がトークン保有者に返済されます。
INXは規制を回避するよりも正面から進むことを選び、取引所トークンを正当化しようとしていて、うまく機能すれば、他の取引所も同様のステップを踏むかもしれません。
3.https://forum.makerdao.com/t/black-thursday-response-thread/1433
市場価格が大幅に下落した先週、MakerDAOが課題に直面しました。主要な担保であるETHの価格が急落し(24時間で-30%以上)、ローンが一気に担保不足となり、前例のない清算が引き起こされました。下の図の、青色が清算(強制的なポジションクローズ)の数、赤色がETH価格になります。
そして、ETH価格が下がって担保比率が150%を下回ると、担保ETHがオークションに出され、Keepersという清算ボットが入札することができます(手数料要)。このオークションでシステムが維持され、ローンが返済されます。
しかし先週はEthereumネットワークが混雑しガス代が高くなり、オラクルからの価格取得・更新がおいつかず、MakerDAOのシステムが清算をするための正しいETH価格を参照できていなかったと言えます。ある時点で、Makerの価格フィードは 1 ETH = $166ドルとなっていましたが、実際の価格は15%低い$140ドルでした(GDax参照)。
それだけでなく、KeeperのボットのGas price(ガス価格)をあげる設定がなかったため、担保の入札も行われず、ある人(たち)がオークションに出された大量のETHを$0で手に入れました。
ローン返済されずに担保が取り出されたとも言えるため、Makerシステム全体で$4 million (4億円)ほどの赤字となりました。(MakerDAOのForum参照)このコミュニティForumでは1987年に起こった世界的株価大暴落「ブラックマンデー」のように、フォーラム内では「ブラックサースデー」とタイトルがついています。
この後、MakerDAOでは投票を経て、各種パラメータ変更が可決されました(Makerブログ)。まだ色々と議論中なので、このメール配信時には変更や進展があるかもしれません。
4.Coinbase rolls out Bitcoin transaction batching - The Coinbase Blog
Coinbaseは、Bitcoinトランザクションバッチ処理の開始を発表しました。これまでCoinbaseのユーザはビットコインを送信するたびに、1つ1つチェーン上にトランザクションをブロードキャストしていたわけですが、バッチ処理によって複数の送信を1つのトランザクションにまとめることになります。
これにより、ビットコインネットワークの負荷が50%以上削減され、ユーザの払う手数料も同様に削減されます。調べてみると、Kraken、Bitfinexなどが、すでにトランザクションバッチ処理を提供しています。(参照:CoinMetrics)
5.BitGo Launches Institutional Digital Asset Lending Services | Business Wire
ウォレットプロバイダー&カストディ業者のBitGoですが、レンディング市場に参加すると発表しました。BTC、ETH、LTC、またステーブルコインや米ドルでローンを提供する予定となっています。
これBitGoはカストディビジネス以外にも積極的になってきていて先月は Harbor を買収しました。Harborはセキュリティトークンという言葉が使われ始めた時期に、おそらく最初にセキュリティトークンに注力すると名乗りを上げたプラットフォームとして知られています。そうしたBitGoの最近の動きをみていると、保管だけでなく取引や貸付など一貫した企業になっていきたいという狙いが見えます。
6.Paradigm leads $12M round for DeFi-friendly Argent wallet as it eyes April launch - The Block
評判の良いウォレットArgentが、シリーズAの資金調達で$12millionドルを調達しました。ロンドンを拠点とする、MakerやCompoundなどのDeFiアプリを統合する暗号通貨ウォレットです。
とても多機能で素晴らしいのですが、今週のガス代高騰を受けて、ガス代を肩代わりするArgentは非常に苦しい状況になっていたようです(水曜~土曜で55 ETHもガス代を使用)。
それをうけていくつか改善が予定されています。ユーザごとにガス量/月の上限をつくる検討をしたり、トークン交換の際にETHを挟まないようにしたり(例えばDAI → ETH → USDC とせず、DAI → USDCなどが可能)、またUI/UX面の改善などです。
7.Arweave announces new funding from Andreessen Horowitz, USV, and Coinbase Ventures
インターネット上のストレージのプロトコルArweaveは、a16z、USV(Union Square Ventures)、Coinbase Venturesから$8.3million を追加調達しました。一応現在もArweaveにはデータが保存されており200以上のアプリが構築されているそうです。
ArweaveなのかSiacoinやFilecoinなのかわかりませんが、それらに加えてIPFS,Handshakeが組み合わりUnstoppableなウェブというのが密かに熱くなるかもしれません。
a16z、Coinbase Ventures、Polychain Capital、他おおくのクリプト会社が、Celoブロックチェーン上に金融アプリを構築するため「Alliance for Prosperity」というアライアンスに参加しました。アライアンス企業が、送金や人道支援、マイクロレンディングなどのいくつかのユースケースを探求していくことになっています。ビジョンはLibraと重なるところがあります。
Celoは、a16zとPolychainなどから昨年 $30 million を調達しています。Celo Dollarというドル建てステーブルコインの他に、様々なステーブルコインを発行できるネットワークですが、今回のアライアンスに入った企業は、これらステーブルコインを組み込むアプリを作る予定です。
世界中の60億のスマートフォンにCelo Dollarsをできるだけ普及させることを目指しています。アライアンスには、ウォレットプロバイダーAbraやBlockchain.com、カストディアンのAnchorage、インフラ/ノード企業のBison Trails、ハードウェアのLedgerなども参加しています。このあたりもLibraと重なります。
ちなみにCeloの仕組みあたりはこちらで詳しく書いています(モバイル×ステーブルコイン本命『Celo』の仕組み)
9.Let’s Talk ENS Migration (Post-Mortem)
ENS開発者は、ENSの脆弱性に対応するため(ドメイン名レジストリの移行)に、約140 ETHを使い修正が完了しました。
2019年11月にセキュリティ研究者のSam Sunが明らかにしたバグで「販売/移転したアドレスの所有権を取り戻すことができてしまう」という脆弱性です。この脆弱性が悪用されなかったとENS開発者チームは伝えています。
Sam Sunは色々なところでバグを見つけていて、0xの脆弱性も見つけて報告していたのもこの人です。(脆弱性についてはBspeak! 2019年7月22日号で説明)他にも Livepeer、Curve.fi、Authereumなどの重大なバグを見つけています。
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#95 Bspeak! 2019年10月14日号 OpenLibra/Unipig/マルチコラテラルDAI
#94 Bspeak! 2019年10月7日号 暗号通貨を評価するCrypto Ratings Council/BraveのVPN0
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#92 Bspeak! 2019年9月23日号 2100アルファ版/Binanceと中国市場
これ以前もSubstackページよりご覧いただけます。