Lootの熱狂
英語圏での話題は Loot で持ちきりでした。何が起きているかを書いていきます。
まず Loot の作った人 Dom について触れておきます。
Dom Hofmann は、アメリカの起業家プログラマーで、ショート動画メディアVineの創業者として有名な人です。最近では、Blitmapという「IPFSなどを利用せず、Ethereumチェーン上で完全に処理するNFT」のプロジェクトを進めています。その Dom が実験的に、Loot というNFTプロジェクトを先週ローンチさせました。
Loot について
Lootは、8つのアイテム(文字)をオンチェーンで保持したNFTです。
そもそもLootという英単語は「戦利品」という意味があり、冒険者をテーマにした以下のアイテムを持つNFTになっています。
武器
胸部装甲
ヘッドアーマー
腰の防具
フットアーマー
ハンドアーマー
首飾り
指輪
そしてアイテムの名前が、以下の写真ようにSVGとして画像に出力されます。
それぞれのレア度はランダムに決定されます。どれがレアかを見たいか人のために、Paradigmの人がまとめて公開しています。
このLootのNFTは全部で8,000個あり、誰でも無料で発行することができたため、”フェアミント”とも言われてます。今はすでにすべてのNFTが発行されています(後述しますが、その後 more loot という NFTが新たに発行できるようになりました)。
LootのNFTはオンチェーンに情報を格納しているため、拡張や派生したプロジェクトを作りやすくなっていて、すぐに多くのオープンソース開発者が熱狂し、Lootをもとにゲームなど好き好きにものを作り始めています。
明らかに強い広がり方をしていたので、以下のツイートにまとめていきましたが、今ではまとめきれないほど広がっています。
ガバナンストークン $AGLD
中でも面白いのは、ガバナンストークンの動きです。Lootのローンチから2日後、Syndicateの創業者 Will が、Lootホルダーが発行できるDAO用のガバナンストークンを(コミュニティとして)作りました。
Loot のNFTを1つもっていると、10,000個の$AGLD(アドベンチャー・ゴールド)を受け取ることができるというものです。これがすぐに価値がつきました。
VCがいるわけでもなく、コアチームに割当てられた分があるわけでもなく、いわゆるフェアローンチであったため、コミュニティの熱気だけで価格・取引高があがっていき、ローンチから2日間も経たずに、OkEXやFTXが上場させるという結果になりました。まるで Yearnの YFIトークンを思い出させるローンチです。そして 10,000 $AGLD の価値は、数日で$50,000 (約500万円)ほどになっています。
ちなみにWillとはSyndicateで関わりがあったので、別のチャットルームで会話したのですが、
「面白そうだと思って、ベンド空港で5時間で$AGLDを書いた」
「今は広がりすぎて手に負えない、(コミュニティにより)勝手に進んでいく😂 」
と言っていました。
コンポーザブルの例
すでに多くのプロジェクトが立ち上がっています。例えば、
Lootmart
Lootのアイテムを、個別の ERC1155 のアイテムにバラすことができ、交換ができるReams
LootのIDを元に、仮想世界の領域(土地)が自動で生成されるもので、ホルダーが発行できるAbstract Loot
Loot のメタデータを元に生成されるアニメーション・アートで、ホルダーが発行することができる
など挙げればきりがありません。
このように拡張性があり、Lootを持っていると後から特典がつくような形になるため、LootのNFT自体も高値で取引されるようになり、フロア価格(最低価格)は 15 ETH ほどになっています。
Lootインスパイア
Lootにヒントを得たものがすぐにでてきました。
例えばMirrorが、1人1個だけフェアローンチNFTを作れるようにするための手法を公開しました。Mirrorのレースに参加したことがあれば(アカウント認証をしたことがあれば)、その情報を使い、文字列をオンチェーンに保持したNFTを発行できる、という仕組みです。
この文字列を、Mirror上でのペンネームにしてもいいし、キャラクターのアイデンティティとしてもいいし、気に入らなければ交換してもいいし、色々と案が出されています。
さらに、xLoot(Extension Loots)のようなコンセプトをマネたものがいくつも出てきています。
そのうち怪しいものもでてくると思いますが、注目すべきは、これがたった数日で、自発的に、かつ偶然に立ち上がっている点で、すでにエコシステムになっています。
more loot (mLoot)
このニュースレター配信の前日ですが、Lootを8000個だけでなく、さらに広げるために、1316005個まで more loot (mLoot)というNFTを作れるようになりました。この上限はEthereumのブロック数が10増えるごとに増していく動的な供給量となっています。
1-8000までのオリジナルLootを優先する動きはあまりなく、more loot(mLoot)をもっている人が$AGLDと同じように発行できる$ASLV(アドベンチャー・シルバー)を作ろうという提案もされていて、どんどん状況が変わってきています。
EtherscanでのNFT発行について
Lootや、上記で書いてきたような派生NFTは、発行するwebページが用意されていません。そこで直接コントラクトを利用する必要がありますが、Etherscanからコントラクトに直接トランザクションを作ってNFTを発行する方法がすっかり主流となりました。
どうやってやるのかを聞かれたので、more loot を例に流れを以下に書きます。
Etherscanでコントラクトのページを開きます。more loot の場合は、上のツイートにリンクがあります。
「Contract」のタブをクリック
「Write Contract」のタブをクリック
「Connect to Web3」をクリックしてウォレットを接続
「Claim」を選んで、tokenIdに数字を入力し、「Write」をクリックし、txを発行する(more loot の場合は、8001 - 1316005までの数字)
高すぎるガス代が表示された場合は、すでにそのtokenIdは使われて発行されている
となります。
怪しいものも出てくると思いますし、あくまで流れを書いたもので、アドバイスするものではありません。特に責任はとれないことをご了承ください🙏
■ Last Week in Crypto
1.Parcel raises $2.5M to build treasury management protocol for DAOs
DAOのためのトレジャリー管理のプロトコルを開発しているParcelが、$2.5Mを調達しました。Dragonfly Capitalがリードし、Scalar Capital、A Capital、Compound、Consensysなどが参加しています。またエクイティによる調達になっています。
DAOやオープンソースのプロジェクトが、Parcelを使って決済や財務管理を自動化できるようにすることを目指しています。現在はSynthetix、Compound、Aave、FWBなどDAOが、Parcelを利用しています。
具体的な機能としては、給与計算、助成金の払い出し、エアドロップの実行を支援するツールなどがあります。(まだスケーリングできないので大きな金額の少数のトランザクションに限定しています)。また長期的には、Parcelはネットワークを分散化し、独自のDAOとトークンを立ち上げる予定になっています。
Parcel以外にも、DAO向けのサービスやツールは今後もどんどん増えていくと予想できます。
2.UXD Raises $3M to Bring Algorithmic Stablecoins to Solana
UXDプロトコルが、Multicoin Capitalをリードに$3Mドルを調達しました。Alameda Research、Defiance Capital、CMS Holdingsなどが参加しています。UXDは稲見建人さんという方が創業者となっています。
Solana上のアルゴリズム型ステーブルコインで、デルタニュートラルのポジションによって価格安定させます。
デルタニュートラルのポジションと書くと難しくみえますが、考え方はシンプルです。
仕組み
例えば、100ドル分のステーブルコインを作りたい場合、以下のような流れになります。
ユーザーが100ドル分のBTCを、UXDプロトコルのコントラクトに預ける
UXDプロトコルが、100ドル分のステーブルコイン(100 UXD)を発行する
UXDプロトコルが、預かったBTCをデリバティブのDEXに転送し、100ドル分のショートポジションを取る(無期限先物で、デルタニュートラルのポジションを作ってヘッジする)
これでBTC価格が下がっても上がっても、それをヘッジするポジションを持つことによって相殺されるため、損益は0を保つ、ということになります。
ステーブルコインを戻す際は、100 UXD を UXD Protocol のコントラクト(Vault)に送ることで100ドル相当のBTCを取り戻すことができます。
コントラクトにUXDを送る
デリバティブのDEX上で持っていたデルタニュートラルポジションが解消される
UXDプロトコルがUXDをバーンして、同額のBTCがアンロックされる
となります。
デリバティブのDEXと書いている部分は、SolanaのDEXであるMango Marketsを利用しているそうです。Solanaのように、オンチェーンで動くデリバティブ取引所が捌けるような環境だからこそできる設計だと思います。
今後は、10 - 11月頃にガバナンストークンセールを予定しているそうです。
3.DeFi Analytics Community UniWhales Raises $2.2M for DAO Transition
投資コミュニティのUniWhalesは、DAOへ移行するために、$2.2Mを調達しました。Signum Capitalや、Polygonの Sandeepなどが参加しています。
このプロジェクトは当初、Uniswapでの大口の取引を知らせるためのTelegramのアラートチャンネルとして始まっています。
それが人気になり、トークンを使ったクローズドなサービスを開始し、エンジニアや投資家が集まるDeFiコミュニティとなりました。いま会員になるには、5,000個のUniWhalesトークンをもっている必要があり、約3,700ドルが必要になります。
Drip
そして今回調達をして開発する一つは、Polygon上でSuperFluidを使ったオンチェーンのアフィリエイト・マーケットプレイス「Drip」です。
アフィリエイトリンクを生成するとNFTが生成され、SuperFluidを使ってアフィリエイトにお金を流すようにしています。
4.Ethereum scaling solution Arbitrum launches mainnet, raises $120 million
Arbitrumの開発元であるOffchain Labsは、Arbitrum Oneという名前のメインネットを立ち上げました。また、シリーズBで120Mドルを調達したことも発表しました。
Polychain Capital、Ribbit Capital、Pantera Capital、Alameda Researchなどが参加していて、エクイティによる調達になっています。
今までは開発者のみがテストすることができましたが、今はユーザーがアプリを利用できるようになっています。
収益モデル
いろいろと読んでいると、現在の収益モデルは、Arbitrumにルーティングされるトランザクション料金になっていて、トークン化のつもりはないようです。しかし最終的な目標は、コミュニティが意思決定していく分散化システムであり、トークンを発行することも視野にあったようにも読み取れます。
今後どうなるかは分かりませんが、いずれにしても管理者権限を徐々に分散させて運営していく計画になっています。
5.Syndicate Raises $20M Series A to Scale Community-Driven Invest..
縁があって前に投資家として迎え入れて頂いたSyndicateが、a16zがリードのシリーズAで$20Mを調達しました。Coinbase Venturesや、スヌープ・ドッグなど、150以上の投資家が参加しています。
SyndicateはDAOのためのインフラ(プロトコル、ツール、UI、法的枠組み等)+ ソーシャル層を開発していて、いくつかのDAOが利用しています。
DAOやトークンが可能にするのは、一見奇妙に見えるインセンティブ設計やコーディネーションの調整です。世界中のどこからでも(オンラインで)コミュニティが資本を集めて、管理・分配をコードで管理できるようになります。
インターネットネイティブなお金やDAOの登場で、投資におけるVCやコミュニティの役割も変わっていくだろうと思います。
日本からのプライベート投資が身近になるように今後も支援していきますし、Syndicateを利用する詳細が決まったら、このニュースレターでアナウンスするつもりです。
6.Igniting the team and community to build the standard communication protocol for web3 together
XMTPが、a16z などから $20 MドルのシリーズAを調達したことを発表しました。
XMTPは、ウォレット間の通信プロトコルになります。ユースケースとしては、
認証されたウォレットやコントラクトからの認証メッセージができる
プロトコルやDappsなどで問題が発生したときに、ウォレットに直接メッセージを送ることができる
インセンティブを使って、スパムや迷惑メッセージを防ぐ設計ができる
などですが、EPNSと競合することになるかもしれません。EPNSにしてもXMTPにしても、メッセージのプロトコルは利便性を上げる上で大切な要素になると思います。
7.Avalanche-based DeFi protocol Trader Joe raises $5 million in token sale
Avalanche上のDeFiプロトコル Trader Joe が、トークンセールで$5Mドルを調達しました。速い開発を優先して、開発チームは匿名でやってるプロジェクトだそうです。
DeFiance Capital、GBV Capital、Mechanism Capital、Three Arrows Capital、Delphi Digitalなどが参加しています。
Avalancheに投資しているVCたちや関係者が、利用を増やすために積極的に投資して盛り上げたいというのが伝わってきます。他のL1でも同じ構造になっていて、例えばMulticoinやAlamedaなどは、Solana上のプロジェクトに積極投資していることが分かります。
8.Institutional NFT Interest Heats Up as Three Arrows Capital Launches ‘Starry Night’ Fund
最近有名になっているVCの Three Arrows Capital は、NFT専用ファンド「Starry Night Capital」をローンチしたことを発表しました。
NFTコレクターを名乗るVincent Van Dough氏がこのファンドを発表しています。
アートやコレクターグッズへの投資に加えて、「NFT教育ポータル」を立ち上げ、新しいアーティストのプロモーションを実施して、年末までにNFTの物理的なギャラリースペースを開く予定になっています。
この発表の前から、 Three Arrows Capital は、CryptoPunksなどのNFTを集めてると言われていましたが、今回で正式に発表したことになります。
さらにStarry Nightのローンチ直後、Nansenのデータによると、Alameda Researchに関連するアドレスが、Ringer、Fidenza、Subscapeを含むArt Blocks Curated NFTのトリオを合計614ETH(約 $ 2M)で取得していたそうです。
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以降もSubstackページからご覧ください。
ご質問よろしいでしょうか
more lootを手順通りしたのですが、Metamaskuとの連携!?がうまくいってないようなのですが理由などわかりますでしょうか。
WriteをしてViewを確認すると下記の表示となり
Sorry, We are unable to locate this TxnHash
待ってみると
Writeの横に下記が表示されます。
Transaction was not mined within 50 blocks, please make sure your transaction was properly sent. Be aware that it might still be mined!
何か可能性がありそうなことが御座いましたらご教授頂ければ幸いです。