ETHの新規発行をしぼる『Tapered Issuance Burn』
#448 Bspeak! 2026年8月10日号
ステーキング報酬の議論
Ethereumで新たな提案「EIP-8363」が出され、賛否両論を呼んでいます。
この提案は、「ETHのステーキング比率が上昇するにつれて、バリデーター報酬のバーン比率を段階的に引き上げ、ステーキング比率が約50%に達すると、新規発行による利回りをゼロにする」という内容です。
「Tapered Issuance Burn」と呼ばれ、約18カ月かけて導入する想定です。提案者にはEthereum FoundationのJustin Drake氏などが含まれていて、ステーキングされるETHの量を市場メカニズムによって抑制するとともに、非ステーカーの希薄化を軽減できると主張しています。
過去にも発行量を削減する提案はされていましたが、今回の提案はより洗練されています。

一方で、DeFiプロジェクトの創業者などを中心に反対の声が多くあります。
ステーキング利回りは、DeFi市場の基準金利なので、リキッドステーキングトークン、レンディングプロトコル、資本配分などを支えている、というものです。そしてその報酬を削減すれば、実質利回りがゼロに近づき、担保資産やオンチェーン上の活動がEthereum以外へ流出する可能性があると警告しています。
またETHがステーキングによって「ネイティブに収益を生む資産」であることが、Bitcoinなどに対する大きな競争優位性であり、機関投資家にとっても重要な魅力だと主張する人たちもいます。
Aave創設者のStani氏、ether.fi創業者のMike氏が先頭にたってEIP-8363に反対しており、利回りの予測可能性を損ない、収益を生む資産としてのETHへの需要を低下させると警告しています。
たしかにEthereumが機関投資家の取り込みを強化しているタイミングで、この特徴を弱めるべきではないのかもしれません。またこのEIP-8363は今後のHegotaハードフォークへの採用候補にすぎず、現時点では正式な採用が決まったわけではありません。
相場コーナー
最近取り上げているように、ベアマーケットの「時間による投げ売り」局面に入っています。何ヶ月も上がらないことで投資家が少しずつ諦めていき、まだサイクル下値を更新する可能性がのこっています。そのきっかけとなるのがStrategyなのかClarityなのかわかりませんが、以下でカバーしていきます。
まずマクロについてです。先週は雇用統計の発表があり、市場予想の+8万人に対して-2.3万人と、「労働市場の減速」が数字ではっきり確認される形になりました。そのため、織り込まれていた9月利上げの可能性が下がり、クリプト・株ともに上昇しました。
ただまだ9月利上げの可能性がなくなったわけではなく、8/12発表のCPIでインフレ再加速が確認されれば、利上げの可能性はすぐに復活します。原油高の影響がどこまで物価に波及しているかが焦点です。
ちなみに現物ETFへの資金流入は、先週+7.5億ドルとなり、4月以来最高ペースに回復しています。
・Strategy
Strategyは、先週1,638 BTC($104Mドル)を売りました。平均$63.9kとなっています。この資金は、配当支払いのため、また一部はSTRCを自社買いにつかわれています。つまりSTRCを$100に戻すための買いです。
BTCを売ってまで何とか戻そうとしているSTRCは、$94ドルまで回復し、ここ最近では一番戻しています。しかし依然としてディスカウントで取引されていて、BTCが再び大きく下落したときには、STRCへの信頼が悪化し、STRCをもどすためにStrategyはさらにBTCを売却する可能性があります。これが底につながる大きな急落になるかもしれません。
・Clarity法
結局Clarity法は、夏の休会に入る前に採決するのは間に合いませんでしたが、なんとか討論終結(クローチャー)動議を提出しました。そのため上院は、夏の休会明けすぐの9月15日に、このクローチャーを採決する予定です。
(クローチャーとは、議論を打ち切って採決に進むための手続きで、通常の51票ではなく、60票が必要になります)
なお、ここを通ってもClarity法自体が可決されるわけではなく、法案の審議入りに向けた手続きが前進することになります。
業界では今回の動きを「重要な前進だ」と評価する一方で、Galaxy Researchなどは2026年中に成立する確率を50%から30%へ引き下げています。Polymarketでも今年成立確率は20%前後まで下がっています。
11月の中間選挙に関心が移る前に、Clarity法を審議・採決できる期間は限られているためです。
■ This Week in Crypto
1.DePIN project Vangrid raises $9 million in token round to build spatial data network for physical AI
空間データに特化したDePINプロジェクトのVangridがシードラウンドで$9Mドルを調達しました。
HashKey、Borderless、Crypto.com Capital、Animoca Brands、Gate Labs、Mapleblock Capitalなどが参加していて、将来のトークンによる調達(SAFT)になっています。トークンは今年後半にローンチ予定です。
Vangridは、ユーザが地理空間データを提供して報酬を得られるネットワークを開発しています。ユーザがスマホで実世界の写真をとると、それが3Dの空間モデルに構築され、オンチェーンで検証される仕組みです。
買い手は、特定のロケーションの空間データを依頼し、検証済みデータを納品したユーザに報酬が支払われます。
想定している顧客としては、「フィジカルAI」の企業で、地上レベルで継続的に更新される空間データが必要になるとしています。また、GPSが使えない場所で活動する防衛・政府機関にも利用される可能性があるそうです。
Base上に開発されていて、データの検証にはEthereum Attestation Serviceを使用しています。
2.Nomura’s Laser Digital backs ZIGChain for onchain private credit push in UAE
野村グループのデジタル資産部門であるLaser Digitalが、UAE拠点のL1ブロックチェーンZIGChainへの戦略的投資を発表しました。金額は明かされていませんが、報道によると数百万ドル規模とみられています。
この提携は、プライベートクレジット市場をオンチェーン化することを目的としていて、イスラム法(シャリア)に準拠したプロダクトも含まれる予定です。
ZIGChainの共同創業者によると、中東のプライベートクレジット市場には「資金を必要とする側は銀行から調達できず、資金を持つ側はそうした機会の存在を知らない」という両面の課題があり、知っていたとしても高い手数料と参入障壁のある大型ファンド経由でしかアクセスできないため、これを民主化するとしています。
今回の提携では、機関投資家向けのオンチェーン・ボールトプロダクト群に対して、リスクフレームワークの設計とガバナンスを提供していく予定です。両社ともドバイに拠点を置いていることも、提携のきっかけになったそうです。
3.Bundle Raises US$5.5M to Launch the World’s First Networked Rewards Platform
Bundleが、プレシードラウンドで$5.5Mドルを調達しました。
Ethereumの共同創業者Joe Lubin氏が設立したEthereal VenturesとFurther Venturesがリードし、Nascent、GSR、Scenius Capital、Anchorage Digital、Nuwa Capitalなどが参加しています。
Bundleは、複数のブランドがインセンティブ予算を持ち寄って共有の報酬プールを作る「ネットワーク型リワードプラットフォーム」を開発しています。
値引きやキャッシュバックの代わりに、ユーザは購入や友達紹介などのアクションでチケットを獲得し、共有プールの大きな報酬を狙える仕組みです。単独では大きな報酬を用意できない中小企業でも、大企業並みのマーケティング施策を打てるようになるとしています。
ユーザやブランドにとっては、Web2のような体験ですが、報酬の分配にはステーブルコインの決済インフラが使われていて、低コストのグローバル送金とライセンスを持つPSP経由の出金を可能にしています。
5市場・5社でのパイロットでは、1,000人以上の当選者に合計$100,000ドルを分配し、従来のインセンティブ施策と比べ、最大4倍のコンバージョン向上を記録したそうです。まずはシンガポール、ベトナム、フィリピンでローンチする予定で、すでに50以上のブランドが参加を決めています。
4.Yellow Card Secures $40 Million in Strategic Funding to Further Global Expansion
ステーブルコイン決済インフラのYellow Cardが、戦略的ラウンドで$40Mドルを調達しました。
Standard CharteredのSC Ventures、Sony Innovation Fund、Polychain Capital、Blockchain Capitalなどが参加していて、累計の調達額は$120Mドルを超えました。
Yellow Cardは、アフリカを起点に、USDと50以上の現地通貨をまたぐ送金インフラを開発している企業です。すでにネットワーク全体で$10Bドル以上のトランザクションを処理し、北米・欧州・アフリカの22の法域でライセンスや登録を取得しています。VisaやMastercard、PayPal、Coinbaseとも提携しています。
今回の資金は、企業向けのドル口座プロダクト「Global USD Accounts」の拡大に使われます。これは、ドルの保有、ステーブルコインの保有・交換、トレジャリー管理、50カ国以上の現地通貨での回収・支払いを、1つの口座で完結できるプロダクトで、すでにVisaやWestern Unionなどの顧客に利用されています。
今後は、ラテンアメリカとアジア太平洋でのプレゼンスを強化し、グローバル展開に必要な現地決済レールと通貨カバレッジを拡大していく予定です。
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