■ Last Week in Crypto
Ethereum 2.0のチェーンにステーキングをするために使われるデポジットコントラクトが、Ethereum 1.0上で公開されました。このアドレスを入金することで、「フェーズ0」のEthereum 2.0(別名ビーコンチェーン)に資金をステーキングすることができます。
そして必要な量のETHが集まれば、ETH2.0フェーズ0のメインネットが2020年12月1日午後12時(UTC)に稼働し始めます。詳しくは Eth2 Launch Pad のページで仕組みを学びながら参加することができますので、そちらを読むことを推奨します。
仕組みとしては Eth2クライアント(特定のソフトウェアを走らせるコンピュータ)がデポジットコントラクトの残高を読み取って、Eth2チェーン上のETHを正しいバリデータやホルダーに割り当てます。ステークした場合の注意としては、Eth2のフェーズ1.5まではロックされたETHにアクセスできなくなります。
Ethereumの共同創設者のVitalik Buterinも約3,200ETH(150万ドル相当)をデポジットしていますが、まだそこまでのETH量は集まっていません。これはレンディングやイールドファーミング等、DeFiの方がステークキングよりも有利で、かつロック解除がいつになるか分からない点が理由かと思います。急ぐ必要もないため、今後数週間の間に徐々にETHがステークされていくと思います。
Eth2.0の今後ですが、フェーズ1(シャードチェーン)は2021年後半に稼働し、フェーズ1.5(レイヤー2のRollupを中心として Eth1 + Eth2 の併用)はうまくいけば2022年に稼働すると言われています。最終フェーズであるフェーズ2は、まだ研究段階でいつになるかは分かりません。
ちなみに今回のETHのステーキングのリターンについては、Launch Padのページに掲載されています。ETHの総ステーク量が 1M ETH未満の場合、利回りは年利15~20%となり、総ステーク量が増えるにつれてリターンは徐々に低下し、10,000,000ETHで年利4.9%となります。
2.Arbiswap: our port of Uniswap V2 on Arbitrum Rollup
Offchain Labs から、誰でもすぐにL2コントラクトを展開できる「Arbitrum Rollup」のテスト版が出ました。これはスケーリング手段である Optimistic Rollup の一種で、Ethereumとは別の階層(オフチェーン)で計算を行うため、Ethereum上でのガスコストを抑えることができます。
今回さらにこのArbitrum Rollupのデモとして、Uniswapを使う『Arbiswap』がでました。記事によると、55倍のガスコスト削減を達成しています:
Ethereum上でUniswapを使ってトークン交換すると、約109,500ガスのコストがかかります。1ブロックあたり1,000万ガス、約13秒あたり1ブロックのコストとなり、つまり、「1秒間に7つのUniswap交換」を処理します。
一方Rollupを使ったArbiswapであれば、Ethereumのガスコストは1スワップあたり1965ガスに削減され、Ethereumでは「1秒間に最大390つのUniswap交換」を処理できることになります(55倍のガス効率)。
またこれだけでなく、今後のArbitrumテストネットのリリースでは、BLS署名のサポートと圧縮機能が追加され、ガス使用量をさらに2倍減らす予定になっています。
このチームが良いのは、ユーザ体験を意識して「トークンブリッジ」機能もつけている点です。ユーザが、EthereumからRollupチェーンに(L1からL2に)トークンを転送したり、戻すことが簡単にできるようになっています。
まだ暗号通貨に触れたことのないユーザが簡単に使えるような状態ではありませんが、向こう6-12ヶ月を考えてみると、スケーリングやプライバシーといった根本的な課題への取り組みである研究開発(eip1159, ETH2.0, L2等)が、これまでの数年間で最も実利用されていくフェーズになると予想できます。2021年はユーザ体験の面で躍進する年となりそうです。
3.Notional Brings Fixed Rates to Ethereum
DeFiのレンディングプロトコルであるNotionalは、1confirmation、IDEO、Parafi、Nascent、Coinbase、Polychainなどから出資・サポートを受け、固定金利レンディングプロトコルをローンチしました。
Notinalでは、fCashと言われるトークンを使います。最初に利用できるfCashは、固定金利を持ったDAIで、fDAIという名前になります。
DAIを貸し出し、固定金利を得たいユーザの利用の流れを書くと:
100DAIを貸し出し、105 fDAIを得る(仮にfDAIの満期が12月1日とする)
12月1日になると、105fDAIを105DAIに戻すことができる
固定金利として5DAIを受け取ったことになる
と表面はシンプルですが、これを実現するために裏では自前のAMMが用意されています。
これは DAI <-> fDAIの交換時のスリッページが少しでもあると、利率に大きく影響するため、独自のAMMを用意しスリッページが少ないようにしています。
このAMMでは、満期が近づくにつれてカーブを平らになる、動的なボンディングカーブを利用し、満期期間が遠くても近くてもスリッページを低く保ちやすくなります。
以前書いたような yield protocol を使ったfyDAIや、UMAのuUSD、またMaindrame や Horizon など、固定金利のプロジェクトも増えてきました。
Aaveなどのユーザの多いDeFiプロトコルは、固定金利の借り入れはありますが、貸し出しのほうは固定金利をサポートしていないため、今後そのような機能がついていくかもしれません。
4.‘Permanent Dropbox’ App Launches on Arweave
『永遠にデータが記録・保持されるDropbox』 を目指し、Arweaveチェーン上でファイルストレージするサービス ArDrive がローンチされました。
ユーザは、Arweaveトークンの価格に応じて一度料金を支払い、文書、写真、動画などのデータを保存でき、そのデータは検閲されず、プラットフォームのルール変更や企業の倒産などを心配することなく、(Arweaveのブロックチェーンが稼働し続けてさえいれば)ウェブ上で永遠に保持されます。Web3.0の文脈で語られるユースケースです。
Arweaveの創設者Sam Williamsは「Dropboxに情報をアップロードしたとしても、10年,20年後にはビジネスモデルが変わるかもしれず保存されたデータはどうなるのか分からないが、ArDriveではシステムが変わることはない」と潜在需要を説いています。
結局のところ、ユーザの選択次第ではありますが、特定の集団が望むような需要はあると思います。
現段階では、このArDriveはArweaveトークンを保有していないと利用できませんが、半年以内には法定通貨で利用できるようになる予定です。またMac、Windows、Linux用のArDriveのデスクトップアプリが12月にリリースされ、2021年の第1四半期にはモバイルアプリも予定されています。
ちなみに元となるチェーンであるArweaveは、 a16z, USV, Coinbase Ventures等のVCが出資しているチェーンですが、Arweave上のアプリが増えるように、アプリ開発者に利益がシェアされるインセンティブモデルが最近追加されました。
これは Profit Sharing Token(PST)という「利益共有トークン」を開発者が作れるという機能です。ユーザがアプリを使ってArweaveネットワーク上のトランザクションを生成させるたびに、(ARトークンによる)少額のチップがアプリ作成者に送られる仕組みを追加することができます。
GYSR(Geyser)がローンチされ、$GYSRトークンの配布が始まりました。$GYSRトークンの価値はさておき、GYSR自体は面白く、イールドファーミングを簡単に実施できるプラットフォームです。
カスタマイズができますし、監査済み/運用済みのコードを使うことになるので、自前で構築するよりもセキュアに流動性の確保とトークンの配布ができるようになります。今後フェアローンチ系のプロジェクトやDAOが増えてくると、Money Legoの大切なパーツになるかもしれません。
今回GYSR(Geyser)自身が、まず$GYSRの配布を開始したわけですが、$GYSRトークンを使って報酬をブーストすることができ、今後のGeyserを使って行われるイールドファーミングも$GYSRトークンで報酬を乗算することができる予定です。
6. Caro-Kann: Introducing $ROOK, Liquidity Mining & Arbitrage Mining | by KeeperDAO
KeeperDAOのトークンの配布も始まりました。3ヶ月間の流動性マイニングで、$ROOKというDAOトークンが配布されていきます。
先週書いたようなDeFi系のKeeperの役割を行うためのコミュニティで、その原資となる資金を提供すると報酬を得ることができる仕組みになっています。今回は、keeperが行うアクティビティに対しても$ROOKを配布し(アービトラージ・マイニングと名付けられています)、keeperの参加者を増やそうとしています。
7.Hong Kong's SFC will require all crypto exchanges to be regulated
香港の証券先物委員会(SFC)は、香港で営業しているすべての取引所に規制準拠を義務付けることになるそうです。セキュリティトークンでなくとも、すべてのプラットフォームに適用されると言われれています。
香港の取引所は既存ルールか、新しいライセンス制のルールのどちらかで規制/監督される必要があるため、拠点を変える取引所も出てくるかもしれません。
3週間前に書いた, ETH2.0のステーキングをサポートするLidoですが、詳細が発表されました。少しだけ書いていきます。
そもそもETH2.0に今ステーキングすると、いつまでロックされるか分からない、かつ32ETH単位でしか参加できないという課題があり、それを解決したいのがLidoです。
LidoのスマートコントラクトにETHをデポジットすると、stETHというトークンを受け取ります(3週間前に書いたときにはbETHでしたが、名前が変わったようです)。
これがETH2.0のビーコンチェーンのステークされたETH残高を表し、ビーコンチェーン上でトランザクションが有効になると、ETHに交換できるようになります。それまでは現Ethereums上で取引したり交換することが可能です。
Lidoの構成要素
Lidoの構成要素を大まかに説明すると、1) ステイキングプールのコントラクト、2)ノードオペレーター、3)オラクル、4) DAOによって構成されています。
1)ステーキングプール・コントラクト
ETHのデポジット、引き出し、stETHトークンのミントとバーン
ノードオペレータへの資金の委譲
オラクルコントラクトからの更新の受け入れ
などを担当します。ユーザはこのコントラクトに対して、ETHを送ることで stETHを受け取ります。
2)ノードオペレーター
LidoのEth1でデポジットされたETHを使って、Eth2のビーコンチェーンでバリデータとしてステーキングします。このノードオペレーター選定に関しては、LidoのDAOが正当なものを選び、それらのアドレスをNodeOperatorsRegistryコントラクトに追加して維持されます。
3)オラクル
オラクルは、Eth2のビーコンチェーン上のバリデータの残高をモニターするコントラクトです。報酬により残高が増加したり、ステーキングのペナルティで残高が減少したりすることがあるためです。このオラクルも、DAOによってアサインされます。
4)LidoのDAO
単一障害点をなくすために、パラメータのガバナンスを、分散型コミュニティ(DAO)で決めていくことになります。Eth2 のステーキングは変更される可能性もあるため、Lidoはアップグレード可能である必要がありますし、ガバナンスに悪意が反映されないようにすることは必要です。
またステーキング報酬が発生した際には、一部(最初は10%)をサービス手数料として、半分をノードオペレーターに、半分をLido DAOに渡ります。(stETHをミントすることになります)。
そして万が一スラッシュがあった際の保険としての資金と、今後の開発資金に使用することができることになっています。
画像:Primer(PDF)
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