Argent Wallet
私の好きなウォレットの中で、Argent WalletというEthereumウォレットがありますが、このニュースレターをスポンサーしてくれるということで話をすすめていました。しかしガス代の高騰に伴い、一度ユーザ獲得の動きを弱めて解決策(レイヤー2での仕組み開発)に注力するため延期になりました。Argentは紛失時に復旧する機能があったり、Gas代の肩代わりをしてくれる画期的なスマートコントラクト・ウォレットです(ガス高騰に耐えきれず現在はこの肩代わりを中止しています)が、時期が来たらまた書こうと思います。
クリプトにbullish(強気)な理由
このニュースレターはすでに2年以上毎週書き続けていますが、特に先週分がよく読まれました。最近は新規で読んでくれる方が増えたため、どうして私が暗号通貨/ブロックチェーンに対してポジティブなのか端的に書いていきたいと思います。
1/ 地理的境界がない
シリコンバレーのVCモデルにとらわれず、トークン発行という形で世界中からパブリックに資金調達をしています。開発する側のチームも、世界中から匿名の貢献(開発および資金)をうけ、報酬支払も世界中にインスタントに実施できるため、どの業界よりも地理的分散しています。これは地理的な障壁からこれまでチャンスを掴むことができなかった優秀な人やチームが活躍できることを意味します。
2/ 効率的でオープンなプラットフォーム
DeFiで明らかになっているように、カストディ(保管)、レンディング(貸し借り)、投資、デリバティブ、調達など、米国のGDPの20%を占めるウォール・ストリートの業務が、クリプトインフラの一部で実現できています。テクノロジーとして優れているため今後はより既存金融側から歩み寄らざるを得ません。
さらにWeb3の文脈でいうと、スマコンプラットフォームなどはインターネットと同様に公共インフラのため、プラットフォームリスクが少なくなります(ここでいうプラットフォームリスクとは、民間企業の方針でルールなどが変わってしまうリスクです)。そのため独立した開発者が好むような場所になっています。テック巨人にのみ恩恵があるようなプラットフォームではない公共インフラ上に、開発者が自由にアプリをあげられるようになっています。
3/ リスク許容度の高いユーザが多い
そんな自由なプラットフォーム上には、すでに最近のDeFiブームで明らかになっているように、高いリスクを厭わない一般ユーザが多くいます。リスクを厭わないというよりは、得てきたあぶく銭が多いため、リスク許容度が極端に高い、といったほうが正確かもしれません。そのため開発者がプロダクトを出したその日から多くの人に使ってもらうことができ、フィードバックをすぐに得ることができます。これは他の業界と圧倒的に違う点です。
■Last Week in Crypto
1.DODO: A Revolution in On-Chain Liquidity
UniswapよりベターなAMM(自動マーケットメイカー)のDEXを目指す『DODO』がプレローンチを行いました。アプリはこちらで使うことができますが、まだ出てきたばかりなので、ETH-USDCのペアのみ交換のみできる状態です。今後ガバナンストークンが発行される予定ですが、クジラが一気に保有することを避けたいようで、慎重に配布していくようです。具体的にはまだ明らかになっていません。
ここではDODOについてUniswapとの違いと、DODOの利点について書いていきます。以下のグラフは、DODOとUniswapの価格曲線を比較したものです(条件がすべて同様な場合)
市場価格に近いところでは、DODOの価格カーブが、Uniswapの価格カーブよりもフラットになっていることがわかります。これは大きな金額を交換しても資金プール(流動性)の稼働率が高く、スリッページが少ないことを意味します。
さらに市場価格が変化したときに、オラクルからその情報を取得し、図のように積極的に価格カーブを同じ方向にシフトさせ、市場価格付近の区間がフラットな状態を維持するようにします。アービトラージャーに頼るわけではなく、積極的にこのカーブを移動させることから Proactive とつけているようです(UniswapなどはAutomated Market Maker = AMMと分類されますが、DODOは自らをProactive Market Maker=PMMと呼んでいます)。
## ペアのうち、片方のみの提供ができる
またUniswapとの違いとして、流動性提供者はペアの片方のみの提供がてきます。例えばETH/USDCというペアの場合があるとします。DODOでは、ETHプールとUSDCプールは異なるサイズを持たせることができるため、流動性提供者はUniswapのように両方のトークンを預けるわけではなく、どちらかのトークンを好きな量を預けることができます。
## Impermanent Lossが少ない
最近英語圏でよく使われる言葉 『Impermanent Loss(価格変動損失)』についてはどうでしょうか。『Impermanent Loss』とは、流動性を提供しているトークンを引き出した際に、預けた際よりも損してしまう場合(単純にホールドしていた場合より目減りしてしまう損失)のことを言います。
DODOでは、裁定取引(アービトラージ)を促すことで、流動性提供者がトークンを引き出すときに預けた分を取り返すことをある程度保証しています。どういうことかというと、ユーザがベーストークン(ETH/USDCのペアの場合はETH)を購入する際、価格をわずかに上昇させることで、アービトラージャーがベーストークンのETHを売って利益を得られるよう動機づけられます。このアビトラによって、プール内のトークンの数が、常に流動性提供者から提供されたトークンの数とほぼ同じになるため、流動性提供者(LP)が引き出しの際にImpermanent Loss(価格変動損失)するリスクが低減されると言われています。
## 出金手数料
流動性を提供してプールした人が出金する際に、出金があまりにも大きく、価格カーブが変化しすぎて他の流動性提供者の利益に影響あたえる可能性がある場合には、アルゴリズムによって出金手数料が徴収されます。これは残っているすべての流動性提供者に分配されます。とはいっても通常のこの手数料は0であり、あくまで流動性が大きく低下している状態のみ適応されます。
## 入金報酬
プールの流動性の不足している際に、流動性を提供すると「入金報酬」が分配されます。この報酬の源泉はトレーダーのスリッページ分から提供されます。
## 今後激化するAMMの競争
出来高だけみるとUniswapが支配的になると思われていましたが、いくつか追随するプロジェクトが出てきています。最近の流動性マイニングの流行りから分かるように、あぶく銭を持て余した LP(流動性提供者)たちはインセンティブに正直に動くため、すぐにプラットフォームを移り変わります。前のメルマガで書いたようにUniswapが資金調達して開発を加速させ、トークン検討をするのも理解できる状況です。
また今週Dragonfly Researchの記事では「Uniswapがアンバンドル化されるのは必然に思う」とHaseeb Qureshi氏が書いています。包括的な内容なので、記事を読むことを推奨しますが、Uniswapの持つ以下の機能が、より良いものに分解できるという内容です。
流動性提供
固定の手数料(固定の0.3%)
常時利用可能
価格設定
勝手な憶測ですが、この記事のタイミング的に、1inchに出資をしているDragonfly Capitalは、DODOにも出資の話を進めているのだろうと思います。
2.1INCH token and liquidity mining announcement
ちょうと上記を書いた後に、1inch.Exchangeが「1 INCHトークン」を発行することを発表しました。1inchが最近発表したDEXである「Mooniswap」上で、特定のペアに流動性を提供した人に一部が配られます。提供した時間とサイズを元に配られることになりますが、対象となるのはETH-USDCなどの一部のペアです。
1INCHトークンの存在意義として、ガバナンスがあげられていますが、「ネットワークのセキュリティのためステーク」も書かれています。これはどういうことなのかまだ明らかになっていませんが、今後数週間のうちに発表があるようです。
1INCHの割当は、1inch.Exchangeに出資しているVC(ベンチャー・キャピタル)やアドバイザーにも多く配分がされていて、一般の流動性提供者に渡るのは全体のごく一部(2%)になっていて、批判の声も少なくありません。とはいっても1inch自体は良いプロダクトですし、新しいことを次々と展開している強いチームなので、今後どのようにトークンを利用してくるか楽しみではあります。
3.yinsure.finance a new insurance primitive
一躍話題になってyEarnですが、創始者のAndre Cronje氏が「yinsure.finance」と呼ばれる「トークン化された保険」を計画していることを発表しました。ちょうど先週のメルマガでもクリプトネイティブの保険について書いたばかりです。
具体的な数値などはまだForumで議論中ですが、デザインとしては以下のようになります。
トークン保有者が、資産(トークン)をvaultというコントラクトに預けることで保険のかかった新しいトークンを得ることができます。例えば、USDTに保険をかけたい場合は、USDTをコントラクトにロックすると、yiUSDTをうけとり、それが保険対象になります。
この預けた人には 0.1%の開始手数料がとられ、毎週、追加で0.01%の手数料が差し引かれます。
このユーザから支払われる手数料(保険料)は、保険を提供したい側の人たちが流動性を提供することで得ることができます。
保険に入ったユーザが保険金の請求し、それが承認されると、保険を提供したい側の人たちが作った流動性プールから差し引かれ、請求者に支払われます。
4.BlockFi Raises $50M Series C Led by Morgan Creek Digital
BlockFiは、Winklevoss Capitalや、大学の基金などから$ 50 millionドルのシリーズCの資金調達を完了しました。Bitcoinクレジットカードのローンチを予定していて、2年以内にIPOすることも視野にいれているようです。
先週トークンセールで $30 million(約30億円)を集めたNEARですが、NEARチェーンはEthereumチェーンと相互運用可能であることを1つの特徴としています。この記事ではそのEthereumとの橋渡しの技術である「レインボーブリッジ」がどのように実現されるかが説明されています。
チェーンの状態を記録しその証明を送るProverと、その証明を検証するクライアントを、それぞれのチェーンに稼働させることで動作します。
わかりやすいのはトークンをEthereumチェーンからNEARチェーンに移動させる例です。Ethereum上の例えばDAIがあるとします。それをブリッジを渡って移動させるためには、2つの追加のコントラクトを用意します。
Ethereum上の「TokenLockerコントラクト」
NEAR上の「MintableFungibleTokenコントラクト」
ユーザーが 5 DAIをEthereumからNEARに転送したい場合、まずこの5 DAIをTokenLockerコントラクトでロックします(つまりコントラクトのアドレスにDAIを送ります)。するとNEAR上のMintableFungibleTokenコントラクト5 nearDAIを発行され、NEAR上で流通されます。
Ethereum側に戻したい場合は、NEAR上のMintableFungibleTokenコントラクトで5 nearDAIをバーンすることで、Ethereum上のTokenLockerで5 DAIのロックが解除されます。
ガス代の高騰もあり、Ethereum2.0がフル稼働するまでの数年間の間に、より速く安いスマートコントラクトチェーンの需要が出てくる可能性があります。したがっていかにEthereumとの互換性をもたせるかは新興チェーンにとって重要な要素です。
6.Flux Has Arrived: Why The Time For Open Prediction Markets Starts Now
上で書いた NEARチェーン上の最初のプロジェクトとして予測市場プロトコルのFluxがローンチしました。
元々はFluxは、Ethereum上で開発をしていて、当時は『MakerDAO + Augur + 0x』を使って、スタートアップ情報に特化した予測市場でした。例えばスタートアップのマイルストーンやスキャンダルなどについて予想市場を作れるようにすることで、未上場のスタートアップの透明性が高まるような期待がされていました。
その後、Ethereumの性能に課題を感じ、NEAR上での開発に移行しました。移行後の現状ではスタートアップ情報だけでなく、Esportsやクリプト系の予測市場も作れるようにしています。現在はアーリー・アクセスに申込むことができます。
7.Tether goes live on the OMG Network to combat congestion on Ethereum
Ethereum上のレイヤー2スケーリングソリューションを提供するOMG Networkは、TetherがOMG上で稼働したことを発表しました。Ethereumの混雑やガス代の削減、取引速度の向上が目的で、OMGトークンの価格も高騰(+110%)しています。OMGを統合しているBitfinexなどの取引所では、USDTをより速く安くで入出金できるようになっています。
dYdXは、レイヤー2のスケーリングソリューションであるStarkWareのSTARKExを利用することを発表しました。年末までにdYdX上の無期限契約に適用する予定です。
dYdXは、「取引所に資産を預ける必要なくBTC/USDやETH/USD無期限契約といったデリバティブ取引ができるDEX」ですが、この計画がうまくいけば、BitMEXやBinance Futureなどの中央集権型取引所が提供するものと同様のスピードで取引できるようになります。
ちなみにSTARKExは何かというと、オフチェーンでマッチングした取引の結果を、いくつかまとめて後にEthereumチェーン上で送り、チェーン上ではその証明のみを検証するという手法です。これにより、ブロックチェーン上の動き(トランザクションや検証など)を減らすため、取引に必要なガスの量が減らすことができ、フロントランを防ぐことも期待されます。
※フロントランとは、ブロックチェーンに透明性があることを逆手に取り、人のトランザクションをみて、先回りするトランザクションを作って利益を得るような攻撃です。
9.Eth2 Medalla Testnet Incident. Complete account of the incident which
先週稼働したETH2のテストネットMedallaにインシデントがあり、一時停止しました。記事内でPrysmチームは教訓を共有していて、今回のインシデントによってETH2のフェーズ0のローンチのスケジュールに影響を与えることはないと考えているようですが、2021年に延期される可能性もあると思っています。
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以降もSubstackページからご覧ください。