資金調達
今週分もいろいろなプロジェクトについて書いています。マクロ環境は相変わらずチャレンジングな状況が続いていて、クリプト市場全体も落ち込んでいますが、新しいプロジェクトが調達をして開発を続けていることがわかります。
資金調達についていえば、バブルのときよりもバリュエーションが落ち着き、web2からの起業家も増え、良い状態だと思っています。
また、トークンよりもまずは株式で調達するところが増えています。SAFE + トークンのサイドレター(もしトークン発行されたら、株式保有者が一部を受け取れる or 買える)という形での調達です。トークンには法的な不透明さもあるため、より柔軟にしておくためというのが理由と言えると思います。
■ Last Week in Crypto
1.Block Green raises $3.7M in seed funding to drive Bitcoin’s green revolution
ビットコインのレンディングプロトコル Block Green が $3.7Mドルを調達しました。
Peter Thiel氏のFounders Fundがリードで、Coinbase Ventures、Dao5などが参加しています。
Block Greenは「ビットコインDeFi」を作ることが目標です。
「ビットコインDeFi」がどういう意味かというと、ビットコインのマイナーが、ハッシュパワーを担保にビットコインを借りることができます。つまり将来のビットコインの獲得量を担保にすることができます。
そしてビットコインのホルダーは、自分のビットコインを貸し出して、マイナーが獲得したビットコインの一部を利子として受け取ることができます。
Block Greenは、ビットコインのマイニングを持続可能にすることが目的です。最近はビットコイン価格が低迷して、エネルギー価格も急騰しているため、他にもマイナーの資金を助ける動きが出ていて、ちょうど先週はMaple Financeがビットコインマイナーのための融資ファンドを$300Mで発表しています。
2.Announcing Decentralized, Programmable Cloud Wallets and $13mm in Funding
Litプロトコルが、$13Mドルを調達しました。
1kxをリードに、6thManVentures、A Capital、Enaic Ventures、Figment、Filecoin、the LAO、Lattice Capital、OpenSea Ventures、Slow Ventures、Spaceship、Valhalla Ventures、Village Globalが参加しています。
Lit Protocolは、分散型web上でのアクセス制御のプロトコルを作っています。今回の調達とあわせて、分散型クラウドウォレットの仕組み「Programmable Key Pairs」(PKP)も発表しています。
PKPは、スマートコントラクトに関連付けることができる公開鍵と秘密鍵のペアで、これを使って「ユーザーが分散型クラウドで署名できる」アプリを開発することができます。
具体的には、開発者が Lit の PKPを使うことで以下のようなことができるようになります。
DeFi取引の自動化
プライベートなメッセージとソーシャルネットワーク
ソーシャルリカバリーのあるウォレット
検証可能なクロスチェーンオラクル
アプリ所有権を表すNFT
等
少し前ですが、NFT所有者だけが分散ウェブ上にウェブサイトに絵をかけるというというウェブサイトNFTの例も出していました。


またLitはネットワークの分散化を進めていく予定になっています。
3.Hyperlane Raises $18.5m in Seed Financing to build the Interchain Highway
Hyperlaneが$18.5Mドルを調達しました。Variantがリードで、Galaxy Ventures、Coinfund、Circle、Figment、Blockdaemon、Kraken Ventures、NFXなどが参加しています。
Hyperlaneは、異なるチェーンにまたがって利用できるアプリを作りやすくするための開発者ツールを作っています。
具体的には、オンチェーンAPIを用意して、それを使うことで異なるブロックチェーン間で通信したり、情報を参照することができます。
創業者はcLabsでCeloプロトコルを作ったエンジニアで、アドバイザーにはCosmosの共同開発者Zaki Manian氏が入っています。
アプリがセキュリティレベルを選ぶ
異なるブロックチェーン間のメッセージングは、Hyperlaneのバリデーターが担当します。このバリデータは(Hyperlaneがサポートする各チェーン上のスマートコントラクトで実装された)PoSによって選ばれます。
バリデータがメッセージの改ざんや検閲を行おうとした場合は、ステークされたトークンが没収されます。
またPoSのセキュリティに加えて、さらにセキュリティを高めたいアプリは、特定のバリデータ(sovereignバリデータ)を選んで固定することもできます。このように開発者ニーズに応じて、アプリ固有のセキュリティをカスタマイズできるようにすることで、障害が起きても影響の範囲が限定されるようになっています。
クロスチェーン通信のプロトコルということで、LayerZero や Axelar などが競合になると思いますが、それぞれでアプローチやトレードオフが違います。
またブリッジだけの用途でいえば、最近でてきた Succinct Labs も注目していて、IBCのアプローチの検証部分を、zkSNARK を使って効率化しようとしています。
(検証するのが簡単な)証明を生成して、それを送信先チェーン側のライトクライアントが効率的に検証することができるようにするというものです。
4.Bain Crypto leads $6.5 million round for MEV infrastructure provider Skip
MEVのインフラプロバイダのSkip Protocolは、シードラウンドで$6.5Mドルを調達しました。
Bain Capital Cryptoがリードで、Galaxy Digital、Robot Ventures、Jump Cryptoが参加しています。
MEV(Miner Extractable Value)については何度か書いたことがありますが、マイナーやバリデーターが、トランザクションの順番を入れ替えたり、新しい注文したりして得る利益のことです。
Skipプロトコルは、CosmosエコシステムでのMEVの機会をバリデータとステーカーで共有できるようにし、また悪いタイプのMEVを軽減することを目的としています。
Skipプロトコルの仕組み
Cosmosエコシステムのユーザは、Skipプロトコル経由でトランザクションを作ると、チップを上乗せすることができます。このチップを元に、ブロックに含まれるトランザクションが決まります。
オークションで勝てなかったトランザクションとチップは、他のトレーダーやバリデーターには見えません。
このチップの分は、バリデータ、ステーカー間で共有されるため、バリデータとしてはステーキング報酬が高くなり、トレーダーとしても悪いMEVに影響されず戦略を実行しやすくなると言えます。
5.A Letter From E.G. Galano, Co-Founder of Infura
ブロックチェーンインフラのツール Infura は、来年早々に分散型インフラプロトコルを立ち上げる予定だそうです。
Infuraのおかげで、コストのかかるフルノードを実行せずにEthereumチェーンにDappsを接続することができるため、これがないとDappsが使えないというくらいに利用されているインフラです。
エコシステム全体としてInfuraに頼りすぎているという懸念(と批判)が長年あるため、分散型ネットワークの構築を発表した、ということかと思います。
単一障害点がない、ブロックチェーンAPIを提供できるネットワークが目標ですが、トークンを導入して、パーミッションレスに誰でも参加できるネットワークになるのか、許可制のネットワークになるのかはまだ明らかになっていません。
インフラ運営できる人は、早期アクセスプログラムに申し込むことができます。
6.Grand Theft Auto creator backs web3 gaming studio in $7.6 million round
ブロックチェーンゲーム企業 Random Games が $7.6Mドルを調達しました。
Grand Theft Autoのクリエイターの1人であるDavid Jones氏と、Resolute Ventures、Asymmetricがリードしています。
Random Gamesは、Random Gamesは、元任天堂の役員Tony Harman氏と、スタートレックやパイレーツオブカリビアンを手がけたWyeth Ridgway氏が設立した企業です。
まずは UNIOVERSE という「コミュニティ所有」のゲームと世界観を作っています。
UNIOVERSEでは、コミュニティがゲーム内のキャラなどを自由に使って、他のゲームやマンガ、グッズなどを作ることができ、権利的にはそこから収益を得ることも許されています。
また関連のゲーム間で互換性を持つNFTも、登場する予定になっています。
7.We raised $2M to build the future of socially-powered NFT investing
ソーシャル機能のついたNFT投資アプリ Sintra が、$2Mドルを調達しました。
Lemniscapがリードし、FTX Ventures、Chorus One Ventures、Big Brain Holdingsなどが参加しています。
分析やメッセージ機能があり、NFT投資家でつながることができます。
今でているベータ版では、絵文字で反応したり質問をすることができ、NFTの交換や購入の機能も今後サポートされる予定です。分割購入もできるようになります。
8.Integral V1: Real-Time Finance for Web3 Teams
Web3ファイナンスプラットフォーム Integral は、$8.5Mドルを調達しました。Electric Capitalがリードとなっています。
Integral はリアルタイムの会計、管理、分析ができるプラットフォームになっていて、web3企業がメインのユーザになります。組織の複数のウォレット、取引所のアカウント、カストディなどに接続して、リアルタイムに分析データを見て管理することができます。
9.Crypto.com invests in web3 back-office platform Headquarters’ $5 million raise
Headquarters は、$5Mドルの資金調達を完了しました。
Crypto.com Capital、Forge Ventures、MassMutual Venturesがリードで、Saison Capital、500 Startups、Longhash Venturesなどが参加しています。
トークンの管理を簡単にして、人的ミスを減らすことを目的としています。
ウォレット間の資金を追跡するための残高管理ツールがあり、ウォレットが会計処理に対応できるようにトランザクションのラベリングとフィルタリングもすることができます。
10.A16z Leads $51.5M Round for Web3 Fraud Protection Startup Sardine
sardineのシリーズBで$51.5Mドルを調達しました。
a16zがリードで、XYZ、Nyca Partners、Sound Ventures、Activant Capital、Visa、Google Ventures、Eric Schmidt、Ventures、ConsenSys、Uniswap Labs Venturesなどが参加しています。
Sardineについては去年触れていますが、リアルタイムの不正検知をするプロダクトを開発しています。
アカウント開設のときや資金調達のときなどに、取引内容を監視して不正を検知することができ、FTX や Blockchain.com などですでに使われているようです。
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