今週の市場コーナー
BTCは週間-4%の約77,300ドル、9月中旬以来の安値となりました。
起きたことは2つです。まずBinanceから6.36Bドルが盗まれました。史上最大のハックで、FBIによると、北朝鮮のTraderTraitorの手口とされています。TetherやCircleなどによって約3Bドルは凍結済みで、かつBinanceは全額補填すると発表しています。
さらに米国株の暴落もありました。Intelが-29%、Alphabetは前日に-12%、Nasdaqは-2.9%で、6月以来の大きさの下落となっています。AI投資がいつ回収できるのかという不安が主因です。
この2つの悪いニュースが同じ週に来ても、BTCは-4%で収まっているのをみると、クリプトの売り手が減っていると考えられます。
FTX破綻のときと似た構図で、あのときも取引所の問題がBTCの底になりましたが、今回のBinanceの史上最大ハックも弱気相場のフィナーレにふさわしいイベントのように思えます。
また見ているラインとしては、76,100ドル付近の50週移動平均線と、75,000ドルのサポートで、とくに50週線を維持できれば、2023年の初期強気相場に似た展開になる可能性が高まるとみています。逆にここを割ると、上が重くなります。
それと今週は、アメリカの中間選挙があり、そこが転換点になるかもしれません。(過去10回の中間選挙では、すべて1年後にS&P500が上がっています。)
■ This Week in Crypto
1.Intercontinental Exchange and Trade[XYZ] to Bring Hyperliquid-Based Perpetual Markets Onshore
NYSEの親会社であるICE(Intercontinental Exchange)が、Hyperliquid上で最大のHIP-3デプロイヤーであるTrade[XYZ]と、同社の無期限先物マーケットを米国内に持ち込む契約を結んだことを発表しました。ICEはTrade[XYZ]の規制下マーケットの独占オペレーターとなり、Trade[XYZ]への戦略的投資も行っています。
ICEとTrade[XYZ]は、Hyperliquidを基盤にした新しい専用のマーケット・清算の仕組みを作り、KYC/AMLに準拠した規制下のパーペチュアルを運営するために、規制当局の承認を求めていきます。
Trade[XYZ]は現在、米国外のユーザー向けに、株式・株価指数・コモディティ・通貨を参照する無期限先物に24時間365日アクセスできるようにしていて、Hyperliquidがインフラを、Trade[XYZ]がプロダクトの設計・実装を担っています。
ICEが狙っているのは、「短期のエクスポージャーを24時間求めるリテールトレーダー」という、米国の規制下の取引所ではまだ十分にサービスされていない層です。ICEの参加者の99%以上は機関投資家なので、リテール向けのパーペチュアルは既存の機関向け先物・清算事業とは別の専用の規制構造で運営される予定です。
具体的には、今年初めにICEが戦略的投資をしたOKXとのジョイントベンチャーなど、リテールトレーダーが既に使っているプラットフォーム経由を想定しているようです。
2.Hyperliquid says Kraken parent Payward to be first CFTC-regulated HIP-3 deployer
Hyperliquidが、Krakenの親会社であるPaywardを、CFTC規制下で初のHIP-3デプロイヤーにする意向を発表しました。
HIP-3は、HYPEをステークした事業者が独自の無期限先物マーケットをHyperliquid上に展開できる仕組みですが、今回開発中の「許可型マーケット」機能では、デプロイヤーがオンチェーンの許可リストで市場へのアクセスを制限できるようになります。これによって、規制された事業者がHyperliquidのインフラを使いながら、要件を満たしたうえで米国向けの無期限先物を提供できる可能性があります。
具体的には、PaywardのCFTC規制下の指定契約市場(DCM)兼清算機関(DCO)であるBitnomialがデプロイヤーとなり、承認されればCFTC登録のFCMであるNinjaTrader Clearingが顧客口座を扱う構成になっています。
この機能はすでにテストネットで利用可能になっていて、Paywardの展開は規制当局の承認待ちです。許可制の具体的な仕組み(KYCをどう組み込むかなど)はまだ明らかになっていません。
Hyperliquidは自らを「大きな金融システムを支える中立的なインフラレイヤー」と位置づけていて、各デプロイヤーが自身のマーケットの管理と責任を持つ形になっています。
上の件と合わせると、Hyperliquidを基盤に米国の規制下でパーペチュアルを提供しようとする動きが、同じ週に2つ出てきたことになります。
Hot WheelsのガチャプラットフォームであるRip Carsが、$1.5Mドルのストラテジックラウンドを完了したことを発表しました。DBA、Colosseum、Kyle Samani氏(Multicoin Capital)などが参加しています。
Rip Carsは、Solana上でデジタルのミステリーパックを開封すると、実物の在庫に裏付けられたHot Wheelsのダイキャストカーが当たる、というサービスです。当たった車はデジタルで保有したり、プラットフォームに売り戻したり、実物を取り寄せたりすることができます。
7月にはMetaDAO上でICOを実施していて、$250Kドルの上限に対して$31.9Mドルのコミットが集まったことで話題になりました。今回の調達で、「世界最大のコレクティブルHot Wheelsマーケットプレイス」の開発を進めるとしています。
オンチェーンの金利スワップ取引所であるRates Exchangeが、Coinbase Venturesから出資を受けたことを発表しました。金額は明かされていません。
Rates Exchangeは、金利・FX・固定金利の株式パープなどをトレード・ヘッジするための、ミリ秒レベルの遅延で動くフルオンチェーンのオーダーブック取引所です。
まずは金利から始めていて、AaveやMorphoなどのレンディングプロトコルに資産を預けたまま、変動金利のエクスポージャーを一定期間の固定金利と交換することができます。借り手は借入コストを固定し、貸し手はより高い固定利回りを得て、トレーダーは将来の金利に対してポジションを取る、という使い方になっています。
今回の出資で、機関投資家向けのオンチェーンでのヘッジやスワップへのアクセスを拡大していくとしています。
5.PhotonPay Raises $40M Series C to Scale Its Stablecoin-Centric Financial OS
香港拠点のフィンテック企業PhotonPayが、シリーズCで$40Mドルを調達しました。
Blockchain Capitalがリードし、新規投資家としてSBI Groupが参加、既存投資家のIDG Capital、GL Ventures、Lightspeed Factionも追加出資しています。
PhotonPayは2015年創業で、企業向けに「ステーブルコイン中心のFinancial OS」を開発しています。マルチアセットウォレット、国際送金、為替、現地決済、カード発行を1つのAPIファーストのシステムにまとめていて、ステーブルコインの流動性を既存の銀行・清算・カードネットワークとつなぎ、企業が日常の決済や国際送金にステーブルコインを使えるようにします。
2026年8月時点で年間換算のトランザクション量は$65Bドルに達していて、100社以上の企業・プラットフォームパートナーに組み込み型でも提供しています。また5月にはMastercardと、トークン化したPhotonPayカードを使ってAIエージェントが決済を開始する実証を完了しています。
調達資金は、ウォレットの強化、グローバルなカード発行の拡大、主要市場での現地清算の強化、AIエージェント向けの実行レイヤーの開発、コンプライアンス体制と新規市場への進出に使われます。
6.Y Combinator-backed Mochatrade raises $5.5 million to offer US stock perpetuals to Indian traders
Y Combinator出身のMochatradeが、シードで$5.5Mドルを調達しました。CoinFundがリードし、Coinbase VenturesやZero Knowledge VenturesのGPであるNicky Montana氏が参加しています。
Mochatradeは、インドのトレーダー向けに、米国株価に連動した無期限先物を提供するプラットフォームです。ユーザーはUPI経由でルピーで入金し、NvidiaやTesla、Appleなどの株価にレバレッジをかけてロング・ショートし、ルピーで出金できます。株式そのものを保有したり、米国の証券口座を開く必要はありません。
同様のプロダクトは、Hyperliquidやインドの取引所(CoinDCX、Delta、CoinSwitchなど)にもありますが、オフショアの取引所はドル建てステーブルコインの残高が前提で、インドの取引所はクリプト中心のため、「米国株をトレードしたいインドの株式トレーダー」向けには作られていない、というのが同社の主張です。
今後は米国株オプションやソーシャルトレーディング機能の追加も予定しています。
7.Birch Hill Raises $4 Million Seed Round Led by Multicoin Capital to Bring U.S. Credit Onchain
ニューヨーク拠点のBirch Hillが、シードで$4Mドルを調達しました。Multicoin Capitalがリードし、ParaFi Capital、Castle Island Ventures、Nascentが参加しています。累計の調達額は$6.5Mドルになります。
Birch Hillは、米国のクレジット(融資債権)をオンチェーンに持ち込むための、規制に沿った道筋を開発している金融サービス企業です。クレジットの審査・組成・販売を1社で担うことで、従来の案件よりも低コスト・低摩擦でオンチェーン化することを目指しています。
事業はVaults、Strategies、Enterpriseの3部門に分かれていて、VaultsではMorphoの公式キュレーターとしてボールトのリスクパラメータを設定し、Strategiesでは「Birch Hill Absolute Value」というオンチェーンのクレジット戦略を運用しています。EnterpriseではFINRAにブローカーディーラー登録を申請中で、承認後は認定投資家向けにプライベートクレジットの募集を行う予定です。
将来的には、集合住宅・農業・エネルギー向けのローンから始めて、米国のローンのプールを証券化し、オンチェーンで保有できるようにするとしています。8月にはSECのCrypto Task Forceとも面会しています。
8.Exclusive: Predicate raises $8M for tokenization compliance
オンチェーンのコンプライアンス基盤を開発するPredicateが、シリーズAで$8Mドルを調達しました。Blockchain Capitalがリードし、Paxos、1kx、Tribe Capitalが参加しています。累計の調達額は$15Mドルです。
Predicateは、デジタル資産の発行体がコンプライアンスのルールを資産自体に埋め込み、自社システムの外(パブリックチェーン上)で取引されるときにもそのルールを強制できるようにするツールです。金融機関が資産をパブリックチェーンに載せる際、自社の管理外で取引されてもコンプライアンス管理を維持しなければならない、という課題に対応しています。
これまでに$1Bドル以上の取引量をスクリーニングし、600万件以上のトランザクションをカスタムのコンプライアンスポリシーに照らして評価、10万件以上の非準拠トランザクションをブロックしたと主張しています。
9.Canton-based trading platform Cancore raises $7.2 million at $60 million token valuation
Canton上の取引プラットフォームCancoreが、シードで$7.2Mドルを調達しました。発行予定のCNRXトークンのFDV $60Mドルの評価で、SAFTによる調達になっています。
Paper Ventures、dao5、ArkStream Capital、X Ventures、MH Ventures、Proof of Talkが参加しています。
Cancoreは、機関投資家向けのチェーンであるCanton上の資産(トークン化されたRWAなど)を、パブリックチェーン上のステーブルコインやDeFiの流動性とつなぐ「トークン化金融のための流動性OS」を開発しています。
4月からCantonメインネットで稼働していて、Canton、Ethereum、Arbitrum、BNB Chain、Robinhood Chain、Tronをまたいで取引できます。今後BaseとSolanaにも対応予定です。
手数料は取引の片側ごとに0.5%で、流動性プールの利益の20%をプロトコルが受け取り、残りの80%がLPに分配されます。
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