パッションエコノミー
最近は「Web3」という文脈で、新しい人が入ってきているのを感じます。そこで今回は、クリエーターの黄金時代について少し書いていきます。
・現状のモデル
モバイルとソーシャルメディアの普及で、ネット上にクリエーターが増えました。これは最近よく「Web2」などと最近は言われています。
しかしInstagram、Twitter、Facebookなどのプラットフォームは、クリエーターのコンテンツで収益をあげていると言っても過言ではないですが、コンテンツを作り上げるユーザへの還元は0%、YouTubeでも50%程です。
それだけでなく、プラットフォームのアルゴリズム変更に左右されたり、凍結されるというリスクもあります。
この状況を、ネット上のみで活動しているクリエーターに言わせれば、「世界でもっとも売れるマクドナルドの店舗を、活火山の上で運営しているような感覚」なのです。
つまり、いつ噴火してそのビジネスがなくなるかわからない状態(いつルールが変わってマネタイズできなくなるか分からない状態)で、質よりも客の数(ページビュー)を追いかけて商売をやらざるを得ない、ということです。
・今後
もちろんこのモデルがすべてなくなるとは思いませんが、NFTやクリプトのおかげで、プラットフォームリスクが低く、かつ、ページビューではなく生み出した熱狂がそのまま収入になる(= パッションエコノミー)という別のモデルが生まれてきています。
この「プラットフォームリスクが低い」というのは、フォロワーやデータを個人で管理するため、何かあっても別のプラットフォームに移ったり、自分で運用しやすいという意味です。またユーザによるガバナンスが主流になれば、勝手にアルゴリズムやルールが変更されずに済み、対応することができます。
そしてNFTやクリプトで、直接ファンと交流できたりマネタイズできる可能性があるため、インターネットに繋がる80億人の中から、1000人のファンを見つければよく、熱狂的な人がいるなら10人のファンでも十分という、クリエーターにとってはこれまでにない黄金期が近づいてきているのです。
Blitmapにみる未来のエンターテインメント
上とは別の話ですが、Lootで一躍話題になった Dom Hofmann氏については以前このニュースレターで書きました。
そしてLootのほうが有名になりましたが、Domが一番力を入れているのは、Lootの前から進めていた『Blitmap』というプロジェクトなはずで、LootもBlitmapの一部の要素に過ぎないと思っています。
あまり知られていないかもしれませんが、Blitmapは、Ethereumチェーン上ですべて処理されるフルオンチェーンのアートNFTから始まり(半年前)、現在はそのNFTが利用できるゲームを作っているようです。
ゲームといっても、普通のゲームと少し違っていて、Discord上で「ゲーム内の敵キャラクターのデザイン」などのアンケートをとり、ゲームの中身やアートを、コミュニティで決めていっています。
Domの言葉を引用すると、
「背景を設定し、異なる形式のキャラクター主導の物語の例を創って想像力を刺激し、すべてをCC0にして著作権を放棄し、インセンティブを追加します。何が起こるか見てみましょう」
と言っています。
こうした進め方でコミュニティを巻き込んでいる様子をみていると、参加者が一緒に作り上げていくゲームや小説や映画が、次のエンターテインメントの1つのジャンルとなるかもしれない、と思うことがあります。
少しおかしく聞こえるかもしれませんが、未来のハリーポッターは、コミュニティで展開を決めていくかもしれないのです。
■ Last Week in Crypto
1.Burrata Raises $7.75M From Stripe, Variant to Build Identity Data Bridge
Burrataは、決済会社StripeとVCのVariantから7.75Mドルを調達しました。IDEO CoLab、Slow Ventures、Baller、Stratosなども参加しています。
Burrataのソリューション
Burrataは、デジタルIDに関する開発者向けツールを提供するプロジェクトです。
詳細はほとんど書かれていませんが、個人のデータに関連する「デジタルアイデンティティ・トークン」を発行します。そして一度設定すれば、ユーザーのウォレットで保持され、データの再確認や提出なしにKYCを通過できるようになります。
なので、KYCしたいプロジェクトが、個人を特定するサーバーを立ち上げることなく、Burrataのツールを使うことで簡単にコンプライアンス遵守できるということかと思います。また、データは100%ユーザが所有するので、いつでもトークンを取り消すこともできます。
トークン
CEOは「段階的な分散化を検討したい」とコメントしていて、将来的には独自トークンが導入される可能性を示唆しています。しかしBurrataトークンを早々に発行してしまうと、プロジェクトの発展や経済性に支障をきたす可能性がある、と付け加えています。
来年初めには、いくつかDeFiプロジェクトがBurrataの統合を始める予定になってるそうです。
2.https://www.kickstarter.com/articles/the-future-of-crowdfunding-creative-projects
Kickstarterは、クラウドファンディングのための分散型プロトコルを開発する計画を発表ました。
Celoのブロックチェーンを利用し、オープンなプロトコルとして誰でも利用可能になります。Celoを採用したのは、モバイルに注力している点と、カーボンマイナスである点を理由としています。
Kickstarterは新会社を設立して、Kickstarter自体も2022年には新プロトコルの上に移行させるそうです。またこのプロトコルは、Kickstarter社や新会社とは独立したガバナンスをしていくために、ガバナンス組織を作る予定になっています。
そして今後数週間のうちに、このプロトコルの技術と計画をまとめたホワイトペーパーを発表すると記載されています。
既存のテック企業がどんどんと進出してきていることが感じられますし、クラウドファンディングと、ボーダーレスなお金は相性が良いので期待をしています。気になる人は、上のブログ記事からメーリングリストに登録することもできます。
3.A16z invests $36 million in a startup created by four ex-Meta engineers
元Facebookのエンジニア4人が設立したMysten Labsは、a16zなどから$36Mドルを調達しました。
Mysten Labsは、クリプトおよびブロックチェーンのインフラ技術のスタートアップです。どういうことかというと、製品やサービスを作って収益を得るのではなく、色々なトークンを保有し、その価値が高めることで利益を得ようと考えているようです。
具体的には、技術を提供しその代わりにトークンを受け取り、お互いにメリットのある関係を作る、というビジネスモデルになっていて、すでにCeloやSommelierと協力しています。
メンバーは、元々FacecookのときにNoviウォレットでR&Dディレクターやエンジニアをやっていた人たちで構成されている技術集団です。
4.Polygon acquires ZK-rollups startup Mir Protocol for $400 million
Polygon(旧Matic)は、Mir Protocolを$400Mドルで買収しました。
Polygonが8月にHermez Networkを$250Mで買収して、今後もゼロ知識証明(ZK-proof)技術に$1B投資をすると前にBspeak!で書いた通りですが、その一環になります。
Mirについて
Mirは、ゼロ知識証明(ZK-proof)技術を利用したEthereumのスケーリング・スタートアップです。ゼロ知識証明において、証明を高速で生成し、かつ1回の証明でより多くの取引を検証できる「Plonky2」という技術を開発しています。
いわく「Plonky2は、普通のノートパソコンで0.17秒という速さで、証明を生成することができ、45キロバイトというサイズの証明で、Ethereum上で実用的に使える」そうです。
ディール内容
今回の取引内容は、19,000 MATICトークンと$100MのUSDCとなっていて、合計$400Mドルになります。この分は、3年間の権利確定期間(vesting)があって、Mirチームは成果物に基づいて3年間にわたって資金を引き出すことができるという契約になっているようです。
そしてMirは、Polygon Zeroにリブランディングし、彼らのzkp技術を元にしたzkロールアップを開発し、来年中には完成する予定になっています。ちなみにこの前買収したPolygon HermezチームのzkEVMも、来年の半ばにはローンチできる予定だそうです。
5.Voltz, the Interest Rate Swap AMM, Announces it’s $6m Seed Round Led by Framework Ventures
Voltzは、$6Mドルのシードラウンドを発表しました。
投資家は、Framework Venturesがリードで、Coinbase Ventures、Amber Group、Wintermute、Robot Ventures、Mgnr、Entrepreneur First、Backed、NEMO、AaveのStani氏、SynthetixのKain氏、BanklessのDavid氏とRyan氏、RibbonのJulian Koh氏などが参加しています。
Voltz概要
金利スワップすることができ、かつ資本効率の高いAMMを開発します。ユーザとしては、利回りを固定できたり、レバレッジをかけることができます。
DeFiでいうとElementやSenseなどがありますが、AMMの方式でやるのは以前かいたTempusがあり、競合となります。
読んだ感じ、これらとVoltzの違いとしては、資産を流動性プールにいれるAMMとは異なって、バーチャルAMM(vAMM)を価格発見のためだけに利用し、原資産はvAMMの外で、別のプログラム(Margin Engine)で管理されます。
このマージンエンジンは、トレーダーや流動性プロバイダーが利用できるレバレッジを決めて、プロトコルの担保を管理します。
そしてvAMMの部分が Uniswap v3 のような集中流動性を利用する設計となっている点も、既存プロジェクトとは異なっていて、資産効率を高めようとしています。
そして2022年1Qにテストネットをローンチする予定になっています。金利スワップの市場は、既存金融で何兆ドルもの取引量があり、DeFiにおいてもここをとろうするプロトコルの競争が激しくなってきました。
主に機関投資家のために、無担保のクリプトローンを可能にするプロトコル JellyFi が、$4.4Mを調達しました。
Lemniscapがリードし、ParaFi Capital、Tioga Capital、White Star Capital、DeFiance Capital、True Ventures、Digital Currency Group、Genesis、Divergence Ventures、AngelDAOなどが参加しました。
JellyFiでの借り入れ
主要なDeFiレンディングプロトコルでは、借りるために過剰担保(オーバーコラテラル)が必要で、資産効率がよくありません。
そこで JellyFiでは、借り手は審査に合格する必要があるようにして、デフォルトリスクを下げ、過剰担保ではなくても借りられるようにしようとしています。
審査の結果、借り手がホワイトリストに登録されると、JellyFiはセキュリティを強化するために、借り手ごとに1つのプールのみを使用します。
JellyFiでの貸し出し
一方で貸す側ですが、流動性提供者(LP)が過剰担保のレンディングよりも高いリターンを得ることができる予定だそうです。そうでないと貸す側が集まらず、モデルが成立しないので、この辺りはトークンによるインセンティブも加えるのかと想定しています。
さらに貸し手は、自分でリスク評価して、貸し手を選んだり、貸し出しのレートを決めることができるようになるそうです。
来年も続々と、プロ向け、機関投資家向けのDeFiが増えていく予想をしています。
7.Announcing Zeta’s $8.5M Funding Round, led by Jump Capital
Solana上のデリバティブ(オプションと先物)のプロトコル Zeta が、$8.5Mを調達しました。
Jump Capitalがリードし、Race Capital、Electric Capital、DACM、Airtree Ventures、Amber Group、Wintermute、Sino Global Capital、Genesis Block Ventures、QCP Capital、Alameda Research、Solana Capital、MGNR、3kVC、Orthogonal Trading、LedgerPrime、SkyVision Capitalが参加しています。
Zetaは、Solanaのハッカソンで優勝した、オプションと先物のプラットフォームになります。機能としては、オプションの自動執行、アンダーコラテラルのトレード、クロスマージン、リアルタイム清算、即時決済などが含まれる予定になっています。
裏側ではSerum(オーダーブック&マッチングエンジン)とPyth(オラクル)を統合していていて、テストネットで触ることができますが、メインネットも間もなくローンチ予定になっています。
8.Messari Launches Governance Portal as DAOs Inch Toward Mainstream
リサーチ・メディアMessariは、DAO内の提案や投票などの情報をまとめるガバナンスアグリゲーター「Messari Governor」をリリースしました。
Messari Governorは、提案の内容やステータスの管理を、一画面で見ることができます。またユーザーはウォレットをつなげて、投票することもできるそうです。
このプラットフォームは無料でご利用できますが、プレミアム機能の提供も予定しているそうです。
9.Closed round, new identity, announcing $STARLY token
Flowチェーン上のNFTローンチパッド & マーケットプレイスであるStarlyは、Spartan Groupなどから $6.1Mドルを調達しました。
他にもDapper Labs、Animoca Brands、LD Capital、Double Peak、Axia8、Youbi Capital、KuCoin Labs、Shima.capital、SkyVision Capitalなどの投資家が参加しています。
ユーザーがNFTを集めたり交換することができるローンチパッドとマーケットプレイスになっていて、売り買いにゲーミフィケーションの要素を含めるそうです。そして同時にSTARLYトークンも発表し、IDOが12月20日に予定されています。
10.Palm NFT Studio raises $27 million in Series B led by Microsoft's M12
Palm NFT Studioは、$27Mドルを調達しました。
マイクロソフトのベンチャーファンドM12がリードで、ワーナー・ブラザーズ、Griffin Gaming Partners、RRE、Third Kind Venture Capital、Sfermion、The LAO、SK Inc.も参加しています。
この会社の立ち上げには、ConsenSysの創業者ジョセフ・ルービン氏や、PegaSysの共同創業者ダニエル・ヘイマン氏、映画プロデューサーのデビッド・ヘイマンなど複数の人が関わっています。
何をしているかというと、NFT配布を支援したり、そのための技術を開発しています。
例えば、英国のアーティスト、ダミアン・ハースト氏と協力して、1万のNFTを発行したり、ワーナー・ブラザース傘下の企業のイベントのために80万のNFTを無料でドロップしたりなど、多い数のNFTを発行する案件を得意としているようです。
これらは、彼らが開発に関わっているEthereumのサイドチェーン「Palm Network」を使って、ガス代を抑えながら発行しています。
今後Palm NFT Studioは、今後も大企業との取引を続けていき、スタートアップや個人のクリエイターにも力を入れていく予定になっています。
11.Alameda Research Leads $35M Round in Crypto Investment Platform Stacked
投資プラットフォームであるStackedは、Alameda ResearchとMirana Venturesがリードで$35Mドルを調達しました。他にも、Fidelity Internationalのベンチャーキャピタル部門、DRW Venture Capital、Alumni Ventures、Jump Capitalが参加しました。
Stackedのプラットフォームを利用することで、ヘッジファンド、インデックス、資産運用会社などの中から投資商品を選ぶことができ、目標に合わせた投資アドバイスを受けることもできます。
現在ウェブベースで運営されていますが、今後6ヶ月以内にモバイル化を予定しています。また来年初頭に一般投資家向けに、リスク調整したクリプトポートフォリオの提供を開始する予定です。
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