今週Twitterで話題になったのが、以下の動画です。
「ウィンクルボス兄弟」という双子を知っている方は多いと思います。ハーバード時代にFacebookのアイデアをマーク・ザッカーバーグに持ちかけ、現在は取引所Geminiの創業者として知られています。その2人が、インターネットセレブの David Portnoy に対して、雑談でBitcoinの仕組みを説明している動画です。
面白いのが、動画の中でウィンクルボス兄弟が以下のように説明をします:
「(SpaceXで宇宙に人を送る計画をしている)イーロン・マスクが、宇宙で金を採掘し金の供給量は変わる。Bitcoinの供給量は変わらない。どちらを選ぶ? 」
そしてDavidは、その場でBitcoinとChainLinkを購入しています。こんな風にセレブの投資が気軽に決まっていることがよく分かります。
最後は「 $Dave というパーソナルトークンを作りたい、エンジニアを紹介して」という話で終わります。
ちなみにエンジニアを必要とせず、ある程度の機能やMonetary Policy(どのくらい発行するか、権利確定はどうするか等のルール)を設定したトークンについては、Roll(https://tryroll.com/)で実現することができます。
■Last Week in Crypto
1.YAM Post-Rescue Attempt Update. At approximately 6PM UTC, on Wed August
DeFiが盛り上がっていますが、YAMというトークンが界隈の注目を集めました。
コード監査をうけていないまま急に登場
YAMのスマートコントラクトにロックされた資金が 0→ $600million(約600億)まで跳ね上がる
コントラクトにバグがあり、トークンの使い道であるガバナンス投票ができなくなる
version 2 へのアップグレードを発表
というのがわずか3日間で起きたためです。上記を少し丁寧に書いていこうと思います。
## そもそもYAMとは何か
YAMは、Ampleforth(AMPL)とyEarn(FYI)を足したトークンの設計がされています。
YAMのコントラクトに対してMKRやwETHなどのトークンをロックすると、報酬としてYAMが配られます。これは農作物を収穫することに例えられ、「ファーミング」と呼ばれています。
そしてAMPLと同様に、総供給量がトークン価格によって変動するようになっています。例えば価格が下がると、目標価格である1YAM = 1ドルに近づけようと、コントラクトが自動で供給量を調整します。この量の調整が定期的にあり、rebase(リベース)と呼ばれています。つまりユーザ視点でみたとき、YAMの価格が下落するとウォレット内の数量が増えることになります。
プレマイン(事前に発行されているトークン)がない、ベンチャーキャピタルの投資もない、というFYIトークンと同様の状況で登場し、FYIの成功事例もあるため、YAMを得ようとする人が殺到しました。
この画像のようにかわいいUIも公開された後は、短期間でさらにロック金額が高まり、0ドルから$600 millionドル(約600億円)の高値へ跳ね上がりました。
このロック金額は、『スマートコントラクトにロックされた合計価値』のため、TVL(Total Value Locked)とよく言われます。
## バグ
YAMのローンチから3日後、リベース・コントラクトのバグによって、投票に使うことができないYAMが予想以上に発行され(予想の10倍以上)、既存ホルダーが投票をしても、意思決定に必要な定数に達することが不可能な状況になってしまいました。
バグ修正が提案されましたが、このバグはガバナンスモデルとも連携していて、提案されたバグ修正を行うことができなかったようです。
Uniswap上のYAM/yCRVプールは影響をうけるので撤退することが推奨され、それ以外のYAMは影響はありませんでしたが、スマートコントラクトにロックされている総額(TVL)は一気に減少しました。
## バージョン2へ
YAMチームは、YAM 2.0を発表し、YAMコントラクトの監査を行うためにGitcoinの助成金を設定しました。この助成金獲得に成功した場合に限り、YAM1.0から移行用のコントラクトをつかってYAM 2.0へ移行することを計画しています。
※これを書いている時点で、Gitcoinでのクラファンが開始されて8時間ですが、1000万円以上集まっていて、目標達成をしました。
## DeFiトレンドとリスク
もし今回のバグが、ロックされた金額そのものに影響していた場合、DeFiの盛り上がりは終わっていただろうと思います。
しかしユーザのリスク許容度が高い界隈であることがわかります。元々COMP等も報酬として得られたあぶく銭のようなものなので、気軽に使えるのだと思います。
このように実際に使ってくれるユーザがたくさんいるからこそ、開発者もフィードバックを速くそして多く得られ、プロダクトやコントラクト(またはトークン)が次々に進化しています。それが他の業界と圧倒的に違う点です。
2.Crypto-native Insurance — Fred Ehrsam
上記でDeFiの少しリスキーな面に触れましたが、クリプト時代の保険は多くの人が考えているテーマです。そこでParadigm Capital(&元Coinbase共同創業者)のFred Ehrsamが、クリプトネイティブ保険についてのブログを書いています。
クリプトネイティブ保険を設計するのに、多くの課題がありますが、特に「保険を払い出すかどうかの決定」を手動で支払うか or プログラムで自動で判定するか、という点は難しい問いです。プログラムで判定して、計算、支払いがプロセスはすべて自動になるとスムーズですが、プログラムで定義できるものは、そもそもバグや脆弱性にならずに防げるものなので、自動ですべての範囲をカバーするというのは難しいです。
今ある保険プロジェクトとして代表的なのは、Nexus MutualとOpynです。
Nexus Mutualは成長していますが、今ロックされている資産額は $43 millionで、DeFi全体の $4000 - 5000 million という資産基盤に比べればまだ相対的に小さいです。しかし実績として1件ですが、bZxの攻撃のときに保険支払いが実施されています。
Opynはよりプログラムによる制御で、価格へのカバレッジに使うことができますが、使用率はまだ低い(~100万ドル)です。
記事内では、「クリプトネイティブの保険は構築が難しいが、数兆ドルのグローバル商取引をサポートする可能性を秘めていて、今は機が熟している」としています。
3.Chi Gastoken (CHI) price, marketcap, chart, and info
ガス価格が史上最高値を更新し、ガストークンの価格も高騰しています。1inchのChi ガストークン(CHI)は過去30日間で1900%上昇し、Gastoken(GST2)も700%上昇しています。
※1inchは、DEXをまとめてベストレートで交換する「アグリゲータ」と呼ばれるサービスです。
## ガストークンとは
このガストークンとは、Ethereumの手数料であるガスをトークン化したもので、手数料コストを削減するために換金することができます。ガス代が低いときにトークンをためておき、(現在のように)ガス代が高いときにはバーンをすれば、最大50%のリファンドを受け取ることができます。
CHIガストークン(CHI)は1inchとCurveの取引でのみ換金可能で、換金にかかる費用が10%減るというメリットがあります。また 1inch EARNとMooniswap にもプールすることができ、1inchチームがガス代削減の需要に合わせて買い戻しを実行しているため、かなり高い金利になっています(一時期は年利500%)。
Gastoken(GST2)は、Ethereum全体で使用できるガストークンです。
上記のようなガストークンは、ガスの払い戻しに使用されることを目的としていますが、Ethereumのガス価格の上昇に対して、投機としてガストークンを利用している人もいます。
## 現状と今後
ガス代の高騰は、ICOブーム時期の過去最高を超えています。当時と大きく違うのは、コントラクトでできることが多様化し、インフラも整い、プロダクトも増えた結果、ユーザが自分のウォレットからできることが増えている点です。
またガス代に悲鳴をあげているのはユーザだけでなく、例えばガス代を肩代わりしていたArgentも、肩代わりを中止するアナウンスをしました。また私の周りの開発者でも「NFTのサービスが使い物にならない」と嘆いている人もいます。2020年中に、競争力のある設計がされたスマコンプラットフォームがいくつかローンチされるので、用途に応じて使われていくと思います。
ちなみに上記の(1)で書いたYAMは、最初少し遊びで出している感じもあり、YAMそのものではなく、それによる影響によって経済的な利益を得るために作ったのではないかと思うほどでした。ガストークンをロングしたり、流動性マイニング(ファーミング)に使えるトークンを絞って、その対象トークンをロングするだけでも、YAMを作って話題を集める動機になりうるからです。
3.Band Protocol Partners with CoinMarketCap to Launch Earn Campaign | by Kevin Lu | Band Protocol
CoinMarketCapが、教育キャンペーンを実施しています。8日間行われ、動画を見てクイズに成功したユーザに対して、$160,000ドル(約1600万円)相当のBANDトークンが均等に配布されるものです。
同様のものでCoinbaseの「Coinbase Earn」がありますが、Coinbase Earnは 数億ドルの売上に貢献したそうです。トークンをもらうために新規ユーザが増えたり、より幅の広いポートフォリオを持ち出したためです。
CoinListでも同様に、動画を見てクイズに正解すると、$5ドル分のOrchid(OXT)が得られるということも実施しています。
今後もトークンをもつプロジェクトと提携し、教育報酬を元にユーザ獲得していく取引所が増えるはずです。
Celoが Summaを買収しました。これは Celoのブロックチェーンと、他のブロックチェーン間をブリッジする狙いのためです。
Summaは tBTCを開発していたチームで、相互運用性を実現するためのアーキテクチャには定評のあるエンジニアリングチームです(#87 Bspeak! 2019年8月19日号でも書いています)
Celoはモバイルで使えるステーブルコインを発行するチェーンですが、今後いろいろなチェーンのトークンを担保にして、トラストレスに(つまりある事業体に頼ることなく)ステーブルコインを発行できるようになっていきます。ここでいうステーブルコインとは必ずしもドルにペグするものだけでなく、別の国や地域の通貨、コミュティ通貨やバスケット通貨というのも含まれます。
5.Binance Launches 14.8% APY Stablecoin Savings Products, Receive a Random DeFi Token Bonus!
取引所の戦略として、DeFiトークンやプロトコルを何かしらの形でサービスに利用するシーンが増えてきました。Binanceも、14日間資金をロックすると利率を得られる貯金商品『Binance Savings』にBUSD, USDT, USDCを追加し、DeFiトークンボーナスを付与し始めます。
上記の表は、年利 7.4%に加えて、さらに年利 7.4%分のDeFiトークンが加算されて、年利 14.8% になっています。このDeFiトークンのボーナスは、以下の12種類(COMP、MKR、SNX、BAL、LEND、REN、BNT、LRC、KNC、KAVA、RUNE、YFI)からランダムに付与されます。
6.Token Sales Are Back in 2020
先週書いたスマコンプラットフォームNEARのセールが完了し、30millionを調達しました。当日は参加者が多く、CoinListのサーバが落ち、翌日に延期されましたが、その延期後の時間でもサーバが落ち、参加できない人が多くいました。
救済措置として、すでに参加する表明をした人に対しては、3000NEAR(約10万円ほど)を上限として、参加できるコミュニティセールを行うそうです。またCoinListは、NEARコミュニティに対して$750,000を寄付し、コミュニティグラント等に使われます。
7.JPMorgan set to lead investment in ConsenSys via convertible note
JPモルガンが数ヶ月前から資金調達を試みているEthereumのインフラ企業ConsenSysに向けて $20 millionドルの投資を計画していると、TheBlockが報じています。
他の投資家との$50 millionドルの転換社債の取引の一部で、かつConsenSysが、JPMorganのQuorumアセットのメンテナンスとサポートを引き継ぐことになります。
8.Coinbase to Offer Bitcoin-Backed Loans to US Customers
Coinbaseがこの秋から、ビットコインを担保にしお金を借りることのできるキャッシュローンを提供する予定です。年8%利息のサービスになっています。
またCoinbaseは、暗号通貨とブロックチェーンを支持する団体「Blockchain Association(ブロックチェーン協会)」を脱退し、アルトコインも積極的に上場し始め、保守的なスタンスから変わりつつあります。
9.MicroStrategy Buys $250M in Bitcoin, Calling the Crypto 'Superior to Cash'
MicroStrategyは、データを組み合わせて可視化するソフトウェア(いわゆるBI プラットフォーム)を提供する上場企業ですが、ビットコインを購入することを発表しました。上場企業が投資戦略の一環としてビットコインを購入したのは初めてのことです。
総額で $250 millionドル(21454 BTC)を購入し、MicroStrategyのCEOは、「現金を保有するよりも長期的な価値向上の可能性がある魅力的な投資資産である」と述べています。
米国では、4人の議員がアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)にレターを送り、同庁にステーキング報酬への課税に対するスタンスを再度考えてほしい、と求めました。現在の規則では、ステーキング報酬を受け取った時に課税とみなされますが、レターでは「報酬を受け取った時ではなく、売却された時に課税にすべき」と主張しています。
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☕ バックナンバー
#138 Bspeak! 2020年8月10日号 Uniswapはトークン発行するか/NEARのトークンセール 等
#137 Bspeak! 2020年8月3日号 FTXのデリバティブDEX『Serum』発表 等
#136 Bspeak! 2020年7月27日号 yUSDのリリースと流動性マイニング/ETH2.0のレビュー
#135 Bspeak!2020年7月20日号 Republic上の利益シェアトークン/ CoinList Seedの開始
#134 Bspeak! 2020年7月13日号Coinbaseはトークンを発行するのか/ Anchorによる安定金利の貯蓄DeFi
以降もSubstackページからご覧ください。