今週の市場コーナー
BTCは先週の高騰から価格をあまり下げずにキープしています。まだ利上げのリスクがありますが、市場の雰囲気は変わり始めていて、ようやくブルマーケットの入口に差しかかったように思えます。急にATHを目指すものではなく、おそらくゆっくりした変化になると思っていますが、数年単位で見れば、大きな相場の初期段階に入った可能性があると考えています。今回はおもにマクロ環境の変化を見ていきます。
先週書いた財務省の長期債の買戻し倍増をきっかけに、BTCなどのリスク資産は高騰しました。市場がみていたストーリーとしては、長期金利の上昇を抑えるために、いずれFedが国債を買い、米国版のYCC(イールドカーブ・コントロール)があるのではないかというものです。
しかし先週あったジャクソンホールでのFed議長の講演(Warsh議長になって初講演)は、市場の期待に反してほとんどインフレの話でした。さらにそこで「物価安定が最優先であり、必要なら利上げもある」というトーンの内容だったため(9月に利上げする予想が30%から50%まであがり)BTCは少し下落しました。
整理すると次のような構図になっています。1) 財務省は長期金利を抑えにいき、2) Fedは短期金利を上げる可能性を示している、そしてこの2つは方向が逆なため、先週の市場が織り込んでいた「Fedも金融緩和の方向にのる」という前提が、このジャクソンホールの講演で一旦は後退したことになります。
中長期のテーマ
しかし中長期でみると、「銀行資本規制の緩和」というより大きなテーマがあります。
2008年以降続いてきた「流動性の出し手はFed」という体制からの転換です。Fedの影響力を減らし、いわゆる「静かなFed」にしていき、その代わり銀行に国債を持たせ、貸出を伸ばす余地を増やすというものです。
銀行がバランスシートを拡大して国債購入や貸し出しを増やせば、流通するマネーが増えます。(つまり民間版QEともいえます。)実際にどこまで実現するかはまだわかりませんが、市場が注目しだしたマクロの体制変更です。
この銀行規制の緩和は、財務省の買戻しと同じ方向の話です。どちらもFedに頼らず、財務省と民間銀行で長期金利を抑え、流動性を出すという路線です。市場が先週見ていた「Fedも買う」という期待は一旦は消えましたが、Fed抜きの路線自体は消えていません。
BTCは多くのアセットよりも先にグローバルな流動性環境を織り込んできたので、先週の高騰からみて、市場がこの体制変更を意識し始めたと示しているように見えます。
(ただ銀行が、緩和で生まれた余力を国債と貸出に振り向けるか分からないことや、Fedの利上げで相殺される可能性はあります)
今後のイベントとしては、先週から変わらずですが、9月9日に財務省の買戻しがあり、9月15日にCLARITY Actの上院クローチャー採決、その翌日9月16日にFOMCとなります。
■ This Week in Crypto
Entropy(EntropyIO)が、Ribbit Capitalがリードするラウンドで$14Mドルを調達しました。
Hyperliquidの「HIP-3」をつかって、グローバル株式、株価指数、コモディティ、未上場(プレIPO)企業のパーペチュアル(無期限先物)を提供しています。
HIP-3では、独自の資産、リスクパラメータ、オラクル、フロントエンドを定義しつつ、Hyperliquidのマッチングエンジンや決済インフラ、既存トレーダーの流動性をそのまま利用できます。
最初の目玉となるマーケットは、Anthropicのバリュエーションを取引できるプレIPO市場(ANTH)です。未上場企業は株数が公開されていないため、1株あたりの価格ではなく、時価総額そのものを取引する形になっています。
独自の仕組みとして、板の執行可能な流動性に応じて、外部のオラクル価格と自らの板の価格の重みを変える「流動性加重オラクル」を開発しています。
板が厚いときはEntropy自身の板が最大95%の重みを持ち、流動性がなくなると外部の参照価格が優先されるため、薄い板でオラクル価格を安く動かすことができないようになっています。
2.City Protocol Raises $11M to Bring Structured Investment Products Onchain
City Protocol が、シードとプレAラウンドで合計$11Mドルを調達しました。Dragonfly、Jump Crypto、CMT Digital、Stratified Capital、Adaverse、Miranaが参加しています。
City Protocolは、クオンツ戦略やアービトラージ、プライベートクレジットなどの投資戦略を、オンチェーンで簡単にローンチ・販売できる「ストラクチャード商品(仕組み商品)」にするためのインフラを開発しています。
投資商品を作るには、戦略そのものに加えて、カストディ、執行、会計、評価、運用、販売などのインフラが必要で、オンチェーンにしてもこれらはバラバラのプロトコルに散らばったままになりがちです。City Protocolはこれを、投資戦略をトークン化する「Tokenization」、監査済みのコントラクトで入出金や会計・償還を管理する「Vault」、ローンチから満期までのテンプレートを提供する「Issuance & Operations」の3つのモジュールにまとめていて、アセットマネージャーは戦略ごとに金融プラットフォームを新しく作るのではなく、既存のインフラに接続するだけで商品を出せるようになります。
このインフラをつかった「Venzo」は、クオンツヘッジ、取引所間アービトラージ、プライベートクレジット、オンチェーン利回りの4つの戦略vaultを運用していて、TVLは合計$30Mドルです。
次のプロダクトとして、資産をユーザ自身のウォレットに置いたまま、事前に公開されたルールに従って自動で購入・リバランスされる「テーマ型ポートフォリオ」を準備していて、著名投資家の保有情報を追いかけるポートフォリオや、宇宙・金属・EVなどのセクター別ポートフォリオが予定されています。
Oro が、$3Mドルの戦略的ラウンドを調達しました。累計調達額は$4Mドルになります。MH VenturesとMapleblock Capitalが共同リードし、M2M Capital、Archer Capital、X21 Digitalが参加しています。
Oroは、ドバイ拠点のスタートアップで、「〇〇したい」という普通の言葉での指示をAIが解釈し、複数ステップのオンチェーン取引に変換して実行するプロダクトを開発しています。Aave、Uniswap、Lido、Morpho、Kamino、Raydiumなどのプロトコルに対応していて、Oro自体はユーザの資産をカストディせず、トランザクションはユーザ自身のウォレットで承認・署名する仕組みになっています。
すでに35万人以上のアクティブユーザがいて、80以上の言語に対応していると主張しています。
今後6〜12ヶ月で1,000万人のアクティブユーザを目指していて、iOS/Androidのネイティブアプリや、他のプラットフォームがOroをインテント・ルーティングのレイヤーとして組み込めるB2Bインフラの開発を計画しています。
プライバシー特化のブロックチェーン Beldex が、$8Mドルを調達しました。累計調達額は$36Mドルになります。
Sigma Capitalがリードし、NTC、Nxgen、Digital Consensus Fund、EAK Venturesが参加しています。
Beldexは、プライバシー重視のL1で、匿名送金ができるBeldex Wallet、暗号化メッセージングのBChat、分散型のプライベートネットワークであるBelNet、Beldex Browser、人が読める名前をウォレットやメッセージングで使えるBeldex Name Service(BNS)などのプロダクト群を開発しています。
今回の資金は、開発者向けツール、機密性の高いアプリケーション、プロトコルのセキュリティ、AIインフラなどに投資されます。具体的には、開発者がシールドされた(内容が秘匿された)スマートコントラクトや、暗号化されたAIエージェントのアイデンティティを組み込めるインフラレイヤーを開発していくとしています。
YZi Labs(元Binance Labs)が、インキュベーションプログラム「EASY Residency」のシーズン4に採択した24社への投資を発表しました。各社が$500Kドルずつ受け取っているようです。
今回のコホートの中心は「グローバル金融インフラの次のレイヤー」で、ステーブルコイン決済、オンチェーンFX、機関投資家向けの市場インフラ、プライバシー、クレジット、AIネイティブな取引執行などがテーマになっています。24社は以下の通りです。
Aile:USD以外の地域ステーブルコイン向けの、パーミッションレスなオンチェーンFXレイヤー
Alloco:機関投資家向けのオンチェーンETF発行プラットフォーム
D0:オンチェーンの取引・投資プラットフォームが、新興国のローカルな決済手段で入金を受け付けられるようにするインフラ
De¹:シミュレーションと実際の取引執行をつなぐ、オンチェーンの「金融ワールドモデル」を開発
ElfomoFi:プロのマーケットメイカー、LP、トレーダーをつなぐ「Prop-AMM」インフラ
Facto:利回りのつくステーブルコイン残高から、資金を移動したり事前入金したりせずに、普段使っている決済手段でそのまま支払えるようにする決済ミドルウェア
FinTax:企業・金融機関・政府向けの、暗号資産の会計・税務・コンプライアンスのインフラ
Kravata:ラテンアメリカ向けの規制対応済みステーブルコインインフラ
Liquorice:インテント/RFQ型のマーケットメイカー向けの「在庫クレジット」レイヤー
Meddcom AI:100以上の血液バイオマーカー、エピジェネティック検査、100以上の接続デバイスのデータを統合する、AIを使った予防医療・長寿プラットフォーム
Nara:クロスボーダー決済向けのプログラマブルなクレジットレイヤーで、フィンテック企業が24時間いつでも流動性を借りて返済できる
Neutral Trade:ボールトインフラを通じてプロのトレーディング戦略をトークン化し、資本の出し手とトレーダーをつなぐ
Nexroute:BNB ChainでのMEVの知見を、DeFiの取引執行インフラに転用するインフラ
Nxos:輸出入業者や、法定通貨でサプライヤーに支払うWeb3企業など、TradFiとクリプトの間で事業をする企業向けのステーブルコイン・ネオバンク
Primus:パブリックブロックチェーン上の機関投資家向け金融に、機密性・検証可能性・コンプライアンスを両立させるプライバシーインフラ
Roostoo:強化学習で訓練した数千のクオンツモデルを持つ「AIトレーディングエージェント工場」
SmartX:オンチェーンのソーシャルトレーディングを検証済みかつ実行可能なものにする
Spectrum:クリプトから法定通貨への24時間365日の清算コアで、クリプトを銀行送金やカード送金にルーティング
Surgepay:海外在住のインド人が、WhatsApp経由でインド国内の請求書をそのまま支払えるサービス。
ViFi Labs:ナイラ、レアル、ペソなどの新興国通貨向けのオンチェーンFX取引所
xAPI:AIエージェントが1つのキーでWeb上のAPIを見つけ、支払い、呼び出せるAPIマーケットプレイス
XHunt:クリエイターの実際の影響力を計測し、それを収益機会につなげるAIネイティブなインフラ
XStable:レバレッジ付きの金とFXの取引をオンチェーンで提供
Zerodrift:企業ソフトウェア向けのエージェント型セキュリティインフラ
ぜひ今週分をシェアお願いします🎉
☕ Twitter: @CoffeeTimesTW
☕ バックナンバー: Substackのアーカイブからご覧ください。
