zkSyncのzkEVM
zkSyncのメインネットが、10月28日にローンチ予定になっています。
Ethereum L1と比べて、ガス代も安く、速く処理することができるようになります。
また将来的にzkSyncは、レイヤー3にも目を向けているようです。レイヤー3とは、1年ほど前にStarkNetが言い出した内容で、L2の上にアプリ特化のチェーンが複数たちあがって機能するという構造です。
■ Last Week in Crypto
1.Golden raises $40m Series B led by a16z crypto to build the decentralized protocol for knowledge
データプロトコルを開発するGoldenが、シリーズBで$40Mドルを調達しました。
a16z がリードで、Protocol Labs、OpenSea Venturesや、元Coinbase CTOのBalaji氏などが参加しています。
またa16zからはMarc Andreessen氏とAli Yahya氏が、取締役会に加わっています。
Goldenは、世の中の情報を分散的に取り込むためのインセンティブ付きシステムを開発しています。「web3ウィキペディア」のようなものと言えます。
現在ネットの情報は、個人のブログやニュースサイトなどいろいろなところに散らばっていて、正しい情報にたどり着くには別々なところを検索する必要がしばしばあります。
そこで人類共通の知識データベースをつくり、分散的に、新しい知識や事実をデータとして追加でき、正しいかどうかの検証にインセンティブをつけているのがGoldenです。
インセンティブ付きテストネット
Goldenのトークン総供給の1%が、テストネットのインセンティブに割り当てられ、貢献に応じて配布される予定になっています。
現在は、Goerliテストネット上でアプリが動いていて、貢献すると、テストネットポイントを獲得することができます。
メインネットのローンチ時には、このポイントがトークンに変換される予定のようです。
このテストネットでは、情報を提供したり、他の人から提供された情報をチェックします。例えば「Aさんは、B社のCEOですか?」のような質問が出てきて、正しいかどうかを答えるようなものになっています。
このデータの提出やチェックが正しくなかった場合は、スラッシング(ステークされたトークンの没収)で罰則を与えることで、不正確な情報を防止するようになっています。
また将来的には、ユーザに「評判スコア」がつき、正確なデータを提供したりチェックするユーザの評判スコアが増えていくようになります。
NFTによるレベニューシェア
現実世界の「人」や「企業」のデータは、「パブリックデータNFT」というNFTになります。このNFTの所有権は、データを作り上げた貢献者が一部うけとります。
例えばa16zの「Ali Yahya」という人に関するデータは、Golden上でNFTになり、「Ali Yahyaはa16zのパートナーだ」と関連を付けたり、事実チェックをした人たちが、貢献者としてそのNFTの所有権を一部うけとります。
そして、もし商用ユーザによって「Ali Yahya」のデータが商用に使われたときは、NFTのホルダーに売上がシェアされます。
このモデルによって、「よく使われるデータを早めに作ろう」というインセンティブを作ることができ、かつ「同じ人や企業のデータがダブって追加されること」を防ぎやすくなります。
トークンのモデル
また、Goldenのデータを商用に使いたい企業は、トークンを買ってバーンすることで、データを借りることができます。
現状のページを見ると、フィアットでの支払いが表示されているので、支払いはフィアットでされても、それを使ってトークンが買われてバーンされるものだと思います。
またブログ記事では「フィアットをプロトコルに流れ込ませるメカニズムを作る」とも言っていることからも、法定通貨の売上をトークンに使うように読み取れます。
ちなみにGoldenのように、トークンのインセンティブによってデータをキュレーションするアイデアは、2017年にTCR(Token Curated Registry)として提案されて、いくつかのプロジェクトが採用していましたが、うまくいった例はあまりないと思います。
Goldenの場合は、NFTによるレベニューシェアや評判スコア、APIによるデータの入力など、単なる投票以外のものが加わっているため、分散的に利用されるようになるか注目をしています。
2023年2Qにはメインネットでローンチすることが目標になっています。
2.Resy co-founder Ben Leventhal raises $11 million for new web3 hospitality platform
連続起業家のBen Leventhal氏は、Web3のロイヤリティ・プラットフォーム「Blackbird」のシード資金$11Mドルを調達しました。
USV、Shine Capital、Multicoin Capitalが共同でリードし、Variant、Circle Ventures、IACなどが参加しています。
Leventhal氏は以前、食品メディアEaterと、レストラン予約サービスResyを創業し、Eaterは2013年にVoxに買収され、Resyは2019年にAmerican Expressに買収されている経歴があります。
今回のBlackbirdは、ロイヤリティやメンバーシップを、レストランとその顧客に提供するWeb3プラットフォームと言われています。
詳細はまだ明らかになっていませんが、NFTで会員制サービスを簡単に利用でき、トークンでロイヤリティ(ポイント)を貯めていくようなツールを提供するのかと推測しています。
アメリカで有名なVCであるUSVのブログでは、今回Blackbirdに投資した理由として、「web3のロイヤリティ・プログラム」はクリプトがメインストリートに使われると期待している分野だから、としています。
店を利用して貯まるような「ポイント」は、トークンにすることで流動性が高くなり、かつ別のプラットフォームにまたがって利用しやすくなるためと説明しています。
3.Take the mystery out of DeFi with Exponential
Exponential は、$14Mドルを調達しました。
Paradigmがリードとなり、FTX Ventures、Haun Ventures、Circle Venturesなどが参加しています。
Exponentialは、DeFi投資を簡単にするためのプラットフォームです。カストディアルウォレットを利用するとあるので、「exponentialアカウントに入金してDeFiを使う」ということだと思います。
つまり、metamaskのようなウォレットを使うのではなく、取引所アカウントからDeFiを使う、みたいなイメージになるのかと思います。
そうすることで、リスクの高いブリッジをしないで済み、フィッシング等の詐欺のリスクも下げることができます。
また新しいDeFi利回りの機会を発見することもできたり、リスク判断ができるように、評価システムもついているようです。
4.NFL superstars back Coolkicks founder's $6 million raise for collectible trading platform
スニーカーチェーンCool Kicksは、web3の利用した取り組み「MynaSwap」のために$6Mドルを調達しました。
投資家には、Avalanche、Polygon Studio、Spartan capital などが投資をしています。
MynaSwapは、現実のスニーカーや時計などを取引するためのプラットフォームで、Avalanche上に開発されています。
Cool Kicksは、コレクター向けのスニーカーチェーン店で、スニーカーを売り買いすることができますが、それをトークンを使って売買できるようにするのが、MynaSwapです。
ユーザーは、現物(たとえばスニーカー)をMynaSwapに送り、品質に問題なければ、物理的にセキュリティの高い保管庫で管理され、それに紐づくトークンが発行されます。そしてトークンの所有者は、MynaSwap上で販売することができます。
スニーカーだけでなく、時計やワインなどのコレクション品のために利用することができます。
Cool Kicksにはすでに持っているアプリのユーザをMynaSwapに移行する予定になっています。ローンチは2022年Q4を目指しています。
5.Announcing Lasso Labs: fundraise & beta availability
Lasso Labs が $4.2Mドルを調達しました。
Electric Capital がリードで、Ethereal Ventures、Village Global、OpenSea、Page One Venturesなどが参加しています。
Lasso は、NFTに関する情報を整理するプラットフォームですが、主に「オフチェーンの情報」を収集して、共有します。
すでに10,000以上のNFTプロジェクトと、関連するオフチェーンデータをインデックス化しています。
招待制のベータ版では、NFTをもっていると得られる特典や、アクセスできるイベント、コミュニティなどの情報をリアルタイムで検索してみることができます。
またNFTホルダーに対するエアドロップがおきたときに、すぐに通知を受け取ることもできるような機能があります。
また分析や、他トークンのおすすめなどの機能もつくようです。
今後、数週間のうちにベータ版へのアクセスを拡大し、機能を追加していく予定になっています。
6.Ex-Coinbase employees raise $5.3 million for web3 infrastructure startup: Exclusive
Coinbaseの元社員2人が、Web3インフラ企業 Scale3 Labs を立ち上げて、$5.3Mドルを調達しました。
Redpoint Venturesがリードし、Suiの開発元Mysten Labs と Howard Universityが投資に参加しています。
Scale3は、ノード運用のバックエンド作業を実施してくれるプラットフォームです。
ノードの更新用のリンクが表示され、それをクリックすると更新の作業を実施することができ、時間を短縮することができます。
記事によれば、ノードを更新するのに約8時間かかるところを、Scale3を使うと、20分未満に短縮できるとあります。
またブロックチェーン開発元からのリアルタイムのアップデートを提供するモニタリングダッシュボードも提供しています。
現在Suiのブロックチェーンをサポートしていて、次にEtheruem、Solana,Aptosがサポートされる予定です。
7.Introducing Thirdwave: The first blockchain discovery engine
Thirdwaveは、$7Mドルを調達しました。
Framework Venturesがリードで、Animoca Brands、Play Ventures、Shima Capital、Hustle Fund、Oceans Venturesなどが参加しています。
Thirdwaveでは、ゲーム開発者やWeb3開発者にむけて、インフラとツールを開発しています。
新しいブロックチェーンのゲームを作ろうとしている人は、何がうまくいって、何がうまくいかないかのフィードバックを見るのが難しいという点があり、それを解決しようとしています。
具体的には、オンチェーンアクティビティや、ソーシャルのデータ、業界ベンチマークなどのデータを分析し、開発チームが見れるようにしています。
8.Decentralized music platform Stems raises $4 million pre-seed round
音楽プラットフォームのStemsは、$4Mドルのプレシード資金を調達しました。
Ideo CoLab Venturesがリードし、Collab+Currency、Village Global、Polygon Studiosなどが参加しています。
Stemsは、アーティストとファンが直接やりとりできる音楽NFTプラットフォームです。アーティストは、ドラム、ギター、など個々の音楽をNFT(stems)にして、それらを合成した音楽を公開することができます。
例えば以下のdearという曲では、7つのNFTが発行されていて、それぞれがギターやドラムなど固有のNFTになっています。
ユーザーはそれをリミックスして新しい音楽NFTを作ることができ、元のアーティストはロイヤリティを受け取ることができます。
また直接は関係ないですが、ソーシャルグラフ Lens のアカウントでログインできるようにもなっていて、Lens も徐々に広がってきているのを感じます。
9.Decentralized machine learning protocol ChainML raises $4M led by IOSG Ventures
ChainMLは、$4Mドルのシード資金を調達しました。IOSG Venturesがリードし、HashKey、SNZなどが参加しています。
機械学習のためのプロトコルで、計算能力を提供したり、機械学習のモデルやデータセットを作ったり共有できるプロトコルのようです。
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以降もSubstackのアーカイブからご覧ください。
ご丁寧なご回答、ありがとうございます! いつも有益な記事、楽しみにしております。
a16zが投資する「web3ウィキペディア」:「2017年にTCR(Token Curated Registry)として提案されて、いくつかのプロジェクトが採用していましたが、うまくいった例はあまりない」とのコメント、大変興味深いです。参加者の絶対数がまだまだ少ないこと、作業の「煩雑さ」、対する「旨味」、こういった点がうまくいかない背景なのでしょうか?