Ethereum2.0のアップグレード
Ethereum2.0側の最初のアップグレードであるAltairハードフォークの予定時期(ブロック高)が決まりました。10月27日頃になります。
このアップグレードは、EthereumがPoWからPoSへ移行する『Merge』に向けてのウォームアップと言われています。
Eth2.0側のアップグレードのため、ユーザからしたら特に変化はありません。以前に少し書いたので、気になる人は読んでみてください。
ノードを運用している人は、クライアントのバージョンを新しい規格にアップデートしないと、報酬が受け取れなくなったり、ステークしている分が一部没収されるなどのペナルティがある可能性があります。
そしてこのAltairが完了すれば、次はいよいよETH1.0とETH2.0のマージで、PoSへ移行します。Altairも当初7月と言われていた予定が10月にずれ込んだので、マージも来年夏/秋くらいまでずれ込むかなと思っています。
■ Last Week in Crypto
Rari Capitalの『Fuse』というプロトコルで、許可なしの貸し借りプールを誰でも作れるようになりました。これまでFuseは、一部のプロジェクトが限定でレンディング・プールを作ることができましたが、それを一般開放したことになります。
リストするトークン、利用するオラクル、レートカーブ、手数料、担保比率、参加できる人などを、作成者が定義できます。


AaveやCompoundのように共有プールでなく、各プールが分離されているのでリスク波及しないようになっています。ただその分、時価総額の小さなトークンを扱う「リスクが高いプール」もできてしまうので、Rari Safety Score(RSS)という独自のスコアリングを導入して、ユーザにリスクを知らせやすくするようです。
Fuseの利点
例えばCompoundでは、時価総額の大きな15個のトークンしかサポートされていませんし、追加にはCompoundのガバナンスで承認を得る必要があります。一方Fuseでは、価格フィードがあるトークンなら何でもサポートでき(LPトークンも可能)、マイナーなトークンをもっている人が、流動性や利回りにありつけることになります。
またそれらのホルダー以外に恩恵をうけるのは、時価総額の小さなトークンを持つDAOでしょうか。
例えばあるDAOがガバナンストークンAを発行したとして、
「ガバナンストークンA、DAI、USDC、USDT」のプールを作ります。
ユーザは、ガバナンストークンAを担保にして、DAIなどのステーブルコインを借りることができます。
ガバナンストークンAはまだ時価総額が小さいので、借りてショートされると、価格が一気に下がってしまいます(またはその選択肢があると攻撃のインセンティブになってしまいます)。
そこで逆に、「DAIなどをステーブルコイン担保にガバナンストークンAを借りることはできない」というような設定をすることができます。
Rari Capitalのメリット
上記のようにユーザメリットがありますが、これを開発したRari Capitalにとってのメリットは何でしょうか。
1.より高い利回り
まず1つ目として、イールドアグリゲータであるRari Capitalが、Fuseを利用することで、より高い利回りを提供できるようになります。その結果、流動性が高まり、その流動性を活用するために新たなトークンがFuseを利用しようとするので、良い循環が生まれます。
2. 手数料収入
2つ目はプロトコル収入です。Rari Capitalは、Fuseプールで獲得したすべての貸し手/借り手の利回りに対して、10%の手数料を徴収します。5月時点でTVLあたりの収益は、Aaveより6倍高かったそうですが、これはマイナーなトークンの貸し借りという需要によって、FuseのプールがAaveでは実現できない利回りを提供しているからと言えます。
これまで一般には開放できていませんでしたが、今回許可なしで誰でも利用できることになったことにより、プロトコル収益がより増えていくだろうと思います。
以前書いたOptimismの『レトロアクティブ・パブリック・ファンディング』に更新がありました。2021年7月26日号で、概要を説明しています。
どのプロジェクトがエグジットするかを決める「結果オラクル」を作るために、何度も実験をする予定になっていて、第1回目が開始されます。
まず24人の「バッジホルダー」(8人のOptimismのメンバーと16人のEthereumコミュニティメンバー)が、$1Mドルの割り当てを投票します。このとき投票は quadratic voting という投票になります。
『quadratic voting 』とは、
投票者は、それぞれ複数の投票ポイントを持つ
例えば99ポイントを持ち,これを投票に使う
そして1人に1票を投票するときは1ポイントを使う
同じ1人に複数(例えば9票)投票すると、その2乗(9×9で81)のポイントが消費される
つまり10票は同1人に投票できない(100ポイントが必要になるため)
残り18ポイント(元々の99 - 消費された81)については別の候補に投票ができる
という仕組みです。
あくまで例なので、今回の24人のバッジホルダーが何ポイントの投票権を持つのかは分かりません。そして、24人のバッジホルダーは、Discordの読み取り専用チャンネル #retroactive-public-goods 上で、オープンに議論しています。そして今回の1回目の実験は、3つのフェーズで実施されます。
フェーズ1.候補者選定
推薦期間は10月4日 ~ 10月20日。誰でもプロジェクトを推薦することができます。
フェーズ2: バッジホルダーによる投票
投票期間は10月21日 ~ 10月27日
フェーズ3: 配布
得票数に比例してプロジェクトに報酬が支払われます。
この実験は1ヵ月で終わりますが、終了後は現在のバッジホルダーは引退し、振り返りを記事にして発表し、それに基づいて再度、方法を変えていきます。なので、実験の2回目以降はやり方が変わる可能性があります。
3.Announcing: Infinity, the “FTX of NFTs”
Infinityという新しいNFTマーケットプレイスがローンチしました。「0x_b1」などのNFTインフルエンサーたちが、すでにこのプロジェクトを応援しているようです。
Infinityは、Openseaからユーザを奪おうとしているようで、OpenSeaを利用したことあるユーザに、独自トークンをエアドロップをしています。供給の10%という大きな割合がこのエアドロップに割り当てられています。またエアドロップされたユーザは、Infinity上で取引を行うことを条件として獲得できるようになっています。
InfinityはOpenSeaのスマートコントラクトの一部を再利用しているそうですが、その理由としては、
コントラクトは監査/検証されていて、信頼性が高いため
OpenSeaですでにリストしているユーザは、特に新しい設定がいらず、OpenSeaにもNFTをリストし続けることができるため
としています。
ヴァンパイア・アタック
去年トークン報酬をインセンティブに、Uniswapから流動性をとりにいったSushiswapに似ているという声もあります。英語圏で、vampire attacks(ヴァンパイア・アタック) と呼ばれるものです。
Uniswapは最終的にトークンを発行し、流動性を奪い返したわけですが、今回の件でいうと、Openseaが独自トークンを発行するか注目が集まっています。
4.Manifold Announces Verified NFT Studio, Funding from a16z and Initialized
NFTクリエーター向けのツールを開発するManifoldが、a16zなどからシードラウンドで資金を調達しました。NFTクリエーターが、技術的なスキルなしに、NFTの発行と認証を自分自身でできるサービスです。
またManifoldは、これまで有名なクリエーターと面白い機能のNFTを一緒に作ってきていて、今後それらを誰でも利用できるようにしていく予定になっています。そのため a16z の Chris Dixon氏はブログで、アーティストが作品に機能を追加するためのコードを利用できる「App Store」と例えています。
具体的には、「Manifold Studio」というサービスを発表し、一般向けに公開していく予定になっています。
これまでの例
利用の有名な例でいうと、アーティストのplpleasrとFortuneが、Manifoldを利用してNFTをつくりました。Manifoldのおかげで、あるアドレスの購入者には拡張版が送られ、それ以外のアドレスの購入者には別バージョンが送られるようにできたそうです。
また最近の例として、PakのNFTゲーム「Lost Poets」も、Manifoldスマートコントラクトを利用しました。そして$ASHというトークンの保有者であれば1時間早くLost Poetsのミントができる、という機能を組み込んでいます。
プログラマブルNFT
マッドドッグ・ジョーンズのREPLICATORというNFTでは、NFTに組み込まれたスマートコントラクトを利用し、約1年かけて新しいNFTを生み出し続けるという、自己生成するNFTを作っています。
土台となっているReplicatorコントラクトは、色々なコントラクトと組み合わせることができるため、指定したイベントや結果に対してNFTがリアルタイムに反応することができます。
例えば、「天気に反応するNFT」、「チェーン上の履歴に反応するNFT」、「ウォレットの中身に反応するNFT」、などもできると言われています。
5.Dapper Labs acquires CGI influencer developer Brud
Dapper Labsが、バーチャルインフルエンサーを作成する Brud を買収しました。この買収により、DAOに特化した新たなビジネスユニットを構築することができるとしています。
Brudは、Instagramで307万人のフォロワーをもつ人気インフルエンサー『Lil Miquela』のアカウントを運営していることで知られています。
Brudの創業者であるTrevor McFedriesは、「Friends With Benefits」(FWB)というDAOも運営しています。$FWBはクリプトに限らず、テックとカルチャーのコミュニティになっていて、よく話題にあがるDAOです。
そんな創業者を含めたBrudチームは、Flowチェーン上のDAO運営やガバナンスをするためのオープンソースのツールを開発していくそうです。
6.TikTok competitor Chingari raises $19 million to develop a ‘social token’
インドの短編動画共有プラットフォーム「Chingari」は、プライベートのトークンセールで$19Mドルを調達しました。$GARIという名前のトークンをSolanaチェーン上でローンチ予定になっています。
投資家には、Alameda Research、Solana Capital、Kraken、Republic Crypto、Galaxy Digital、Blackpine、NGC、Coinfund、LD Capital、Borderless Capital、AU21、Cultur3 Capital、Long Term Ventures、Afton Capital、CSP DAOなどが参加しています。
$GARIトークン
GARIトークンは、クリエイターとファンの間で商品やNFTの売買などに利用されます。またユーザーは、プラットフォーム上でコンテンツを視聴したりアップロードしたりすると、GARIトークンを受け取ることができるようになるようです。
またGARIトークンを使って、クリエイターの特別コンテンツにアクセスできたり、クリエイターとの音声通話やビデオ通話ができる権利を購入したりすることができるようになる予定になっています。
個人がプラットフォーム上で動画を売買することも可能で、これらのコンテンツがSolana上のNFTで表現されます。
ちなみにこのChingariは、インドで「TikTok」が禁止された際に大きくユーザを伸ばし、すでに8,000万人のユーザーがいるそうです。
7.DeFi project Strips Finance raises $8.5 million in new funding
Strips Financeが、$8.5Mドルを調達しました。Multicoin Capitalがリードし、Sequoia Capital India、Fabric Ventures、Morningstar Capitalなども参加しています。
Strips Financeは、金利を取引するDEXを開発していて、変動金利を固定金利と交換することができます。EthereumのL2であるArbitrum上に開発されていて、来月にもオープンになる予定です。
普通のAMMではなく、バーチャルAMM(vAMM)モデルを採用しています。vAMMモデルでは、流動性提供者は必要なく、スマートコントラクトに保管される担保に基づいて取引を行うことができます。Perpetual protocolというプロトコルも同様の形をとっているため、そちらのライトペーパーがわかりやすいです。
STRPトークンは今週ローンチされますが、用途としては、
STRPをステークしてプロトコルの手数料を得る
Stripsの保険プールの利益を受け取る
新しい金利マーケットを作るために、STRP-USDCのLPトークンをデポジットする
など、ガバナンスに加えて上記のような役割をもっています。
8.ThorChain-based DEX ThorSwap raises $3.75 million in token sale
クロスチェーン流動性プロトコルThorChain上のDEXであるThorSwapは、プライベートのトークンセールで$3.75Mドルを調達しました。
IDEO CoLab Venturesがリードし、True Ventures、Sanctor Capital、THORChain、Nine Realms、Proof Group、0xVentures、Qi Capitalなどが参加しています。
ThorSwapは、ビットコイン、イーサリアム、Binance Smart Chainなど、20以上の異なるブロックチェーンで、トークンを交換することができます。今回のプライベートトークンセールはThorSwapの最初の資金調達で、10月中にIDOでさらに資金調達をする予定になっています。
クロスチェーンのアグリゲーターも増えてきましたが、それほどニーズは明らかです。
9.Crypto staking platform Stader Labs raises $4 million in seed funding
インド拠点のStader Labsが、$4Mドルを調達しました。Pantera Capitalがリードし、Coinbase Ventures、True Ventures、Jump Capital、Huobi Ventures、TerraForm Labs、Solana Foundation、Near Foundationなどが参加し、SAFTによる調達になっています。
Staderはステーキングを楽に、かつリターンを最大化してくれるサービスです。バリデータを調査したり、報酬を受け取るボタンを押すという手間を省き、Staderがベストなステーキングサービスプロバイダーを選んで、自動で利回り最適化を行います。
ビジネスモデルとしては、ステーキングサービスプロバイダーから分配金をうけとり、高利回りの戦略を提供するステーカーからは追加料金を徴収する予定になっています。
現在、TerraチェーンのLUNAステーキングを、テスト版として対応しています。今後数カ月の間に、SOL、ETH、DOT、MATIC、NEARのステーキングを追加する予定になっています。将来的には機関投資家へのサービス提供も予定しています。
10.PowerLoom Seed Round + Boost. We are excited to announce a $3.1M
PowerLoomプロトコルが、Blockchain Capitalなどから$3.1Mドルを調達しました。
Filecoinなどの分散データ・ストレージを補完するプロトコルです。中央集権的なデータ・スナップショットのサービスへの依存をなくすことが目標のようです。
今後 PowerLoom の運用を民主化しインセンティブを与えるような方向を目指している、とあるので、独自トークンを導入する予定なのだと思います。
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