マイアミ市の人気
今週は、MiamiCoinについて書いていますが、ここ1年でマイアミという都市がテック企業やVCを中心に人気になってきています。
ゴールドマンサックスやソフトバンクなどがオフィスを構え始め、クリプトではBlockchain.comが本社をニューヨークからマイアミに移転することを発表していますし、取引所FTXもマイアミにオフィスを開設しています。
市長も好かれているそうで、本文中でも書いていますが、色々な取り組みをして面白い都市になっていくかもしれません。
■ Last Week in Crypto
1.’MiamiCoin’ cryptocurrency is a potential game-changer for city revenue - The Washington Post
米国フロリダ州マイアミ市は、MiamiCoin(MIA)によって$7.1Mドル以上の利益を得ている、という話です。面白い話なので、少し細かく見ていきましょう。
まずマイアミ市が独自にコインを作ったわけではなく、CityCoinsというプロジェクトがMiamiCoinを発行しています。
CityCoinsは、「コミュニティが都市を応援でき、個人の貢献者と都市にクリプト報酬を提供する」というプロジェクトで、元Coinbase CTOのBalaji氏などが支援しています。そしてCityCoinsは、Stacksというチェーンを利用しています。
※Stacksは、もともとBlockstackという名前のプロジェクトでしたが、最近リブランドしました。成り立ちは2014年からのプロジェクトで、Bspeak!でも2年前に少し取り上げています。
Bspeak! 2019年7月15日号 SECに承認されたBlockstackのICO
仕組み
「CityCoinsがMiamiCoinを発行しています」と書きましたが、どのように発行されているかというと、ユーザがマイニングをすることができます。
誰でも、STX(Stackのネイティブトークン)をCityCoinコントラクトに送ると、ランダムでMIAをマイニングすることができます。送った量が多いと、マイニングできる確率が高まります。
そしてこの送られたSTXはどうなるのかというと、
30%は、マイアミ市 専用のウォレットに送られて、そこに蓄積されていきます。
70%は、MiamiCoinをすでに持っていてロックしているユーザに配分されます。
資金ロックによる報酬
ユーザがMIAをマイニングできたら、それをロックすることができます。ロックをすると、上で書いたように、後からマイニングに参加する人が送るSTX(上で書いた70%)の配分を受けとることができます。そして、STX報酬をさらにロックするとBTC報酬を得られる仕組みになっています。
資金ロックすることをよく「ステーキング」と呼びますが、Stackでは「Stacking」と名付けているようです。
マイアミ市の決定
上で書いてきたようにMiamiCoinは、CityCoinsのコミュニティが自発的に始めた通貨で、8月にローンチしました。
その後、Stackコミュニティやマイアミ市を支援したい人たちが、MiamicoinマイニングのためにSTXを送り、マイアミ市のための資金が保留されていきました。8月26日には、取引所OkcoinがMiamicoinを上場させています。
そして9月13日に、マイアミ市議会は、それまで貯まっていた保留分を、寄付として受け取ることをに承認したのです。金額は10月3日時点で $9.1M にもなっていて、それをロックすることでSTX報酬も得ることができる状態となっています。
マイアミの市長である Francis Suarez 氏は、「マイアミを暗号通貨イノベーションハブにする」という計画を持っていて、長期的には税金のかからない都市にしたいそうなので、今回のような税収の代わりに収益を上げられる仕組みは大歓迎でしょう。
またMiamiCoinに限らずですが、マイアミがクリプトフレンドリーな都市になってきていて、ビットコインでの決済、税金の支払い、市への手数料の支払いなど、さまざまなことを検討しているそうです。
ちなみにCityCoinsは、次にサンフランシスコに同様のことを実施する予定になっていますが、これもサンフランシスコが承認するまではウォレットに保留されたままになります。
またCityCoinsは、次に応援したい都市をコミュニティが投票できるようにもしています。
2.‘Solcial’ Raises $2.9M to Build Censorship-Free Social Media on Solana
Solcialというプロジェクトが、$2.9Mドルを調達しました。Alameda Research、Solana Foundation、Rarestone Capitalなどが投資をしています。
Solcialは、Solana上で展開するソーシャルメディアのプラットフォームを開発しています。ユーザが自分自身のトークンを簡単に発行でき、誰でも売買ができ、コンテンツでマネタイズできるというプラットフォームです。先週少し書いたBitCloutにも近いと言えます。
12月にローンチ予定になっていて、トークンもローンチするそうです。
3.'Metamask challenger' XDEFI Wallet raises $6 million in new funding
Metamaskのようなブラウザウォレット XDEFI Wallet が、$6Mを調達しました。
Mechanism Capitalがリードし、DeFiance Capital、Alameda Research、Sino Global Capital、Animoca Brands、CoinGecko、Morningstar Venturesなどが参加しています。
SAFTと株式の組み合わせによる調達ということで、将来的にはトークンを発行するそうです。このトークンの設計はDelphi Digitalがやっているらしく、近々セールを実施する予定になっています。
EthereumとEthereum互換チェーンに焦点を当てているMetaMaskとは異なり、ブロックチェーンに依存しないことを売りとしています。
XDEFIは現在、Ethereum、Polygon、Terra、THORChain、Bitcoinなど9つのチェーンに対応していて、今後はAvalanche、Arbitrum、Solanaへの対応を進め、特にL1とL2間のスワップ機能を進化させるそうです。いまは招待制のベータ版で、11月には一般公開される予定になっています。
MetaMaskなどとの差別化については、
トランザクションの処理やチェーンの切り替えがMetaMaskよりも速い
ファーミングへの参加やNFT発行において、別ウォレットよりも優位に立つことができる
と創業者は主張しています。
4.DAO infrastructure platform Layer3 raises $2.5 million in seed funding
DAO向けのツールを提供するLayer3が、$2.5Mドルを調達しました。
ParaFi Capitalがリードし、Electric Capital、Lattice Capital、6th Man Ventures、などが参加しています。
Layer3は、誰もがなるべく簡単にDAOへ貢献できるようにするためのツールを開発しています。
Layer3のDAOツール
現状DAOに貢献するには、DiscordやTelegramなどのチャネルでタスクを見つけたり、常に情報を追う必要があります。そのためパートタイムで参加することが難しい場合もあります。
そこでLayer3は、DAOの賞金のかけられたタスクをリストアップし、コミュニティの人たちが自分のスキルに合ったものを選べるようにします。そしてタスクを完了すると、正しく行われたかどうかをLayer3が検証し、貢献者に対してトークンで報酬を与えることができるというプラットフォームになっています。
Layer3は、与えられた報酬(グラントなど)のうち一部を手数料として受け取ります。つまりDAOのネイティブトークンで受け取ることになります。現在はBancor、Rari Capital、Index CoopなどのプロジェクトがLayer3を利用しているそうです。
5.Crypto treasury management platform Coinshift raises $2.5 million
これもまたDAO向けのサービスですが、MultiSafeが「Coinshift」にリブランドし、さらに$2.5Mドルを調達したことを発表しました。
投資家にはSequoia Capital India、Weekend Fund、ConsenSys Mesh、DeFi Alliance、Ethereal Ventures、Fintech Collective、Gnosisなどが参加していて、エクイティによる調達になっています。
暗号通貨の資金の管理や、利回りを得るための配分などの機能をリリースする予定です。現在はConsenSys、Balancer、Uniswapなどが助成金の支払いにCoinshiftを使っています。
ちなみにCoinshitのCEOは、以前少しBspeak!でも書いた「Parcel」の元共同設立者です。ParcelもDAO向けツールで若干似ているのですが、CoinshiftはDAOだけでないクリプト企業も対象としている、というのが大きな違いになるそうです。
また長期的には、「CoinshiftもDAOになることを計画している」とのことなので、今回の調達はエクイティでしたが、将来的にはトークンが発行されるのだろうと思います。
Eternalというプロジェクトが4.5Mを調達しました。以前は Y Combinator から支援を受けていますが、今回はCoinbase Ventures、Dapper Labs、NFXなどから投資をうけています。
サイトをみればすぐ分かりますが、NBA Top Shot のゲームストリーマー版といって良さそうです。ストリーマーは、Twitchのなどソーシャルメディアからの動画をNFTにして販売することができ、ファンとクリエーターが交流することができます。そしてNBA Top Shot と同様にFlowチェーン上で開発されています。
7.Social Token Site Roll Gets Boost With $10M Series A Led by IOSG Ventures
ソーシャルトークンを簡単に発行できるプラットフォーム Roll が$10Mを調達しました。IOSG Venturesがリードで、Animoca Brands、Alchemy、Huobi Ventures、Weekend Fund、Mischief Fund、Audacityなどが参加しています。
Rollでは、個人がソーシャルトークンをつかって、投資家に見返りを設定して、資金調達を行うことができます。
1年前ですが、Rollを使った有名な例は2つあります。
1つは Kerman Kohlが、$KERMANの販売し、$23,000ほど調達しました。Kermanはニュースレターとその他の収益を使って、このトークンを買い戻してバーンするという設計をしています。
2つ目は、現Showtime創業者のAlex氏のトークンです。3年間、Alex氏が得た収入の15%をトークン保有者へ配布するなどの特典をつけています。
ここ最近は、ソーシャル、クリエーター、コミュニティ、DAO、といったカテゴリに資金が集まるようになってきました。
8.Angle Labs Raises $5M To Build Derivatives-Backed Stablecoins For A More Inclusive DeFi
ユーロなどの通貨にペッグされたステーブルコインを開発するAngle Protocolが、a16z などから $5Mを調達しました。
Angleは、まず初めにEthereum上でユーロのステーブルコイン(agEUR)をローンチ予定になっていて、10月か11月を予定しているそうです。
その後、米ドル、スイスフラン、英国ポンド、日本円、韓国ウォンといった各ステーブルコインをローンチし、インデックスや通貨のバスケットなどのステーブル資産も作る計画がされています。
9.Blockchain Startup Swash Raises $4M to Make Data Monetization Click
自分のデータを自分で管理し、そこから収入を得ることを可能にする「Swash」が$4Mドルを調達しました。KuCoin、 Outlier Ventures、Streamrなどが投資をしています。
Swashはブラウザエクステンションを提供していて、Swashをいれてネットを利用していると少額の収入を得ることができるようになっています。
SWASHトークン
SwashのユーザーデータはData Unionsに集約されて、広告会社やマーケティング会社、ヘッジファンドなど、さまざまな買い手が購入することができます。その利益はData Unionsのメンバーに分配されます。
今はStreamrの$DATAトークンを使って上記の支払いがされていますが、今後SWASHトークンが導入される予定になっていて、今年中にはローンチされているそうです。
人々のデータを、同意を得て入手する方法になっていて、そのために経済的なインセンティブを与えています。広告を選択式にして収益を得られるブラウザBraveおよびBATトークンと、実現したいことは近いです。
10.Revolut to Launch Crypto Token: Sources
フィンテック企業で暗号通貨も対応しているRevolutが、独自トークンを発行を検討しているという記事です。まだ噂にすぎない話ですが、BinanceのBNBのような取引所トークンのようなモデルを考えているそうです。
またRevolutユーザーがトークンを獲得する形を考えているようで、似たようなケースだとWirexやNexoがトークンを発行しています。
Revolutの収益の20%は、クリプト関連のサービスが占めているらしく、今後も力を入れていくと思います。
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