ATH(All Time High)の更新
2017年に比べて過熱感がない中、暗号通貨全体の時価総額が初めて $1 trillion (1兆)ドルに達し、BTCも4万ドルを超えました。JPモルガンのアナリストは、ビットコインの価格が長期的には 14万6000ドルに達する可能性があると推測しています。Ethereumも 1300 ドルを突破し、過去最高値に迫っています。
■ Last Week in Crypto
1.https://www.occ.gov/news-issuances/news-releases/2021/nr-occ-2021-2.html
米国の財務省OCCがレターを出し、大きな話題となりました。規制関連のニュースとしてはとてもポジティブな話です。
内容は、「米国の銀行が金融システムの決済インフラとして、パブリック・ブロックチェーンとドルのステーブルコインを使用することを認める」という新ガイダンスです。
さらに金融機関がノードとしてネットワーク維持に参加することも認められます。
ステーブルコインの話題でいうと、利用はここ最近一気に増えていて、先月はステーブルコインのオンチェーン出来高が過去最高となっています。おそらく今月もそれを超える出来高になるはずです。
利用は進んでいますが、この暗号通貨のステーブルコインも、見えないリスクを含んでいます。最近になって新規で読んでくださる人も増えたので、これについて簡単に整理していきたいと思います。
現在の主要なステーブルコインとして、Tetherの発行するUSDT、Cicleの発行するUSDC、MakerDAOで発行するDAI などがありますが、その他にも多くの種類があります。これらどのステーブルコインも、以下のいずれか、または複数のリスクを含んでいるといえます。
(1) 詐欺リスク
(2) 検閲リスク
(3) 価格変動リスク
あまり気にしすぎる必要はないと思いますが、どういうことか書いていきます。
(1) 詐欺リスク
USDTがこれに該当します。銀行口座に保存してあるドルを裏付けに発行されるステーブルコインですが、本当に裏付けが存在しているか確認ができず、真相がわからないタイプです。USDTが詐欺といっているわけではないですし、Tetherも最近では監査は受けていますが、似たようなステーブルコインにはリスクとして把握しておくと良いと思います。
(2)検閲リスク
USDCがこれに該当します。regulated(規制準拠)に運営されて政府から認可された上で、ステーブルコインを発行するタイプです。しかし規制遵守する上でブラックリスト機能があるため、過去に1度あったように、当局の要請により凍結されるリスクを含んでいます。普通に利用している分にはほぼ問題ないはずですが、こちらも認識しておくと良いでしょう。
(3)価格変動リスク
DAIがこれに該当します。暗号通貨を担保に発行されていて、担保となっているETHなど資産価格が一気に下落した場合に、価格乖離が起こるリスクを含んでいます。
スマートコントラクトの安全性は大前提として、何気なく利用するステーブルコインの利用は、上記リスクを1つや2つ自分で選んでいることになります。
Coinbaseは、クリプトスタートアップのRoutefireを非開示の金額で買収しました。これでRoutefireはサービスを停止し、今後Coinbaseの機関投資家向け商品群の開発に参加していくことになります。
Coinbaseは、すでにMicroStrategyなどの大口取引の執行を支援してきましたが、ここ最近さらに機関投資家の関心が高まっているため、このプライムブローカー事業を加速させていくようです。
Coinbase上場後は、M&Aが加速するという予想をよく目にしますが、フィンテック企業や大企業がクリプト系スタートアップを買収したり、逆にクリプト企業がフィンテック企業を買収したりという、業界のM&Aがすごく増えると予想しています。
その理由は、Paypalがウォレット機能も開始し、Libra(今はDiem)のステーブルコインも稼働し、自然と暗号通貨にふれる機会が増えていくと予想されるからです。上で書いた銀行の利用が今年中にされるかは分かりませんが、多くのIT企業が暗号通貨対応をするために、買収や統合を進めていくはずです。
暗号通貨の税計算を自動化するTaxBitが、PayPal Ventures, Coinbase Ventures, Winklevoss Capitalなどから、$ 5 millionドル(約5億円)を調達しました。
TaxBitは2019年1月にローンチし、数千人ユーザが、税金の計算を自動化するのに利用しています。
近年米国では、所得を申告する用紙(1040 form)に、暗号通貨の欄が追加されています。「2020年中に、受取、販売、送信、交換、またはそれ以外の方法で暗号通貨の利益を得ましたか」という質問に yes/no で答える欄になっています。
画像:Fortune
4.Ethereum's Layer 2 scaling solution Optimism plans to release its preliminary mainnet on January 15
Ethereumのレイヤ2技術を開発するOptimismは、1月15日にメインネット準備版をリリースする予定と発表をしました。最初は Synthetix を使って行われます。
このリリースはまだ準備版で、停止やバグが発生する可能性があるため、コアチームが最初の6ヶ月間は管理者キーを持ちます。
その後メインネットのパブリック版またはコミュニティ版が、3月15日にリリースされる予定になっています。
Optimismのソリューションを試すことを発表している他のプロジェクトとしては、UniswapとChainlinkがありますが、使い勝手の良いものであれば非常に大きな一歩となります。というのも最近は、担保としている資産額もあがり追加でステーブルコインを発行したり、追加でファーミングしたり、DEXで交換したり、というチェーンの活動が増えているため、ガス代が高い状態が続いているからです。
ちなみに上記のような理由もあって、L2を使ったDEXであるLoopring(LRC)や、より速いブロックチェーンである Solana(SOL), Avalanche(AVAX), NEAR(NEAR) などへの期待が高まり、それぞれのトークンが高騰しているようです。Ethereum上の改善と、その他のチェーンでの開発が同時進行しています。
5.Announcing the Internet Computer “Mainnet” and a 20-Year Roadmap
DFINITYのメインネットがローンチしました。DFINITYについては過去に少しに書いていますので、そちらもご覧ください。
今回のローンチでは、ものすごい長いブログポストが出されていますが、今後20年間というこれまた長い期間での予想が書かれています。
創業者のDominic Williams氏いわく「20年後には、テック巨人が独占する閉じた経済圏よりも、オープン・インターネットが大きくなるだろう」と予想し、UberやGoogle Photos、TikTokのようなアプリの分散型アプリバージョン(オープン・バージョン)が開発される可能性があるとしています。
例えば、Uberのようなサービスの分散型版(オープン・バージョン)であれば、早期利用者(この場合では運転手と乗った人)にサービスのガバナンストークンで報酬を与えることもできる、と書いています。
確かにこういったものはすでに金融分野では出てきていますが、より一般的なコンシューマアプリでも導入されていくと良いと思います。
またTwitter、Facebook、TikTokなどがドナルド・トランプ氏のアカウントを一時停止したことが話題になっていますが、遠くない将来に、分散ネットワークの上に「検閲されず、自由で止められないアプリ」という需要が増えることになると思います。
6.CoinDesk Acquires TradeBlock, the World’s Leading Crypto Index Provider
クリプト市場のデータ会社であるTradeBlockが、メディアCoinDeskに買収されました。以前にa16zやDCGなどから資金調達を行ったTradeBlockですが、CoinDeskの子会社となります。しかしCoinDeskはDCG(Degital Currency Group)の子会社のため、実質DCG傘下となります。
CoinDeskは今後、データに特化した新しい商品を提供するためにTradeBookを利用します。
ウォール街がどんどんクリプトに入ってきていますが、それに伴い、機関投資家の参加を可能にするデータとツールを揃えようと動いている企業が増えています。
DCG(Degital Currency Group)のビジネス
ちなみにこのDCGというのは、暗号通貨のユニコーン企業といえる巨大グループです。Grayscale, Genesis, CoinDeskの3つの事業に加え、投資部門があります。少しこれらの事業について簡単に書いていきます。
1. Grayscale
Grayscale は、数billionドルもの運用資産を持つ資産運用企業です。ビットコインの価格と連動した投資信託である「GBTC」を2013年から提供しています。収益は公開されていませんが、 四半期ごとにサマリーレポートが公開されていて、運用資産とファンドの手数料(2-3%)から見積もると、年間$150 millionドル以上の収益となります。
2. Genesis
Genesisの中でも Lending 事業では、投資機関に対してローンを提供しています。規模としては業界最大です。こちらも四半期ごとにサマリーレポートを提供していますが、2020年第3四半期には$5.2 billionドルもの融資を新規で追加しています。稼働中のローン総額は$2.1 billionドルであり、仮に利子を2%とすると、年間$40millionの収益になります。
このLendingの他に Genesis Trading事業とGenesis Custody事業もあります。
3. CoinDesk
有名なメディアであるCoinDeskです。このメディアの収益の大半は毎年5月にNYで行われるイベントConsensusからきていると言われています。(チケット料+スポンサー)
一般チケットが15万円くらいするものでしたが、今年のConsensus2021はオンラインで開催するようで、$49という価格になっていました。
4. 投資部門
DCGの投資部門は、トークンにも投資しますし、ベンチャー株式にも投資をしています。サイトにポートフォリオがありますが、すごい数を投資していることがわかります。
上記のように収益構造は巨大企業といえると思います。今年はCoinbaseとBlockFiがIPOすると言われていますが、他にクリプト関連でIPOする企業があるとすればDCGだと思っています。
7.NFTX & PUNK now available on Uniswap
NFTXがローンチしました。NFTXは、NFTをERC20トークン化できるプラットフォームです。NFTをERC20にすることで、例えばゲームのNFTをUniswapなどのDEXで交換プールを作って簡単に取引できたり、価格発見されやすくなります。
これらのERC20トークンを、NFTX上では「ファンド」と名付けられていますが、2種類のファンドがあります。
D1ファンド
これが上で書いたNFTをラッピングしたERC20トークンです。例えば、Aさんが 2つの PUNK-ZOMBIE トークン(ERC20)をもっていれば、いつでもCryptoPunksというゲームのキャラクター2つ(NFT)と交換することができます。
D2ファンド
これは、上のD1ファンドを組み合わせたBalancerのプールになっています。例えば、AVASTRは、3つのD1ファンド(AVASTR-BASIC、AVASTR-RANK-30、AVASTR-RANK-60)がバスケットになったトークンになります。
NFTXのスマートコントラクトは、NFTX DAOで管理されています(DAOはAragonというツールで運営されています)。そこにガバナンストークンであるNFTXトークンが導入され、保有者が合意した場合にNFTXスマートコントラクトを変更することができます。
利点
最初に書いた交換しやすくなる/価格発見がされやすくなる、という利点の他に以下のような使い道が考えられます。
NFTをERC20化することで、DeFiプロトコルを使うことができます。なので、例えばNFTをローンにお金を借りる、という使い方がされるかもしれません。
現在ユーザーが ERC20 → NFT に戻すと、受け取るNFTはランダムに選択されるため、ランダムパックやガチャのように機能することができます。また NFTXのスマートコントラクトを拡張して、ユーザーが希望するNFTを選択できるようにすることも可能です。
NFTXトークンは、2021年の1Qか2Qには流動性マイニングプログラムも予定しています。
8.Mask Network ITO Announcement: Loopring
Mask Networkを利用すると、Twitter上からトークンを交換することができますが、トークンセール&配布の手法であるITO(Initial Twitter Offering)が発表されています。
そしてLoopringが最初にITOを実施することを発表し、開始時点の価格から30%ディスカウントされて販売がされます。今回は普通のERC20ですが、今後はNFTやパーソナル・トークンなどで利用される可能性があると思います。
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