今週の市場コーナー
ビットコインは株とともに下落した週となりました。
米国の9月CPIで、コアインフレ率が予想を上回る3.7%になったことで、追加利上げ観測が強まり、米国株が下落しました。それがアジア市場に波及し、韓国のKOSPIは8%安、日経平均は5.2%安となりました。そしてクリプトも同時に売られ、BTCは一時81,000ドルを下回り、先週の安値を割りました。
ETFは金利上昇にそのまま反応して、3週連続の流入が途切れ、10月は合計で流出になるペースになっています。その一方で、StrategyとStriveが(数量はまだ小さいものの)買いを再開しています。
今週は株と一緒に売られましたが、前回のサイクルの前半も似たようなものでした。つまりマクロのリスクで何度か落ちながらも、他のアセットより先に織り込んで、だんだんマクロの不確実性への反応が鈍くなっていく、という動きです。今回もその途中だと見ていて、個人的な見方は変わらず「初期強気相場」に入ったと考えています。
■ This Week in Crypto
1.Borrowing Against Your Stocks Doesn’t Have to Cost Interest
Spout が$2Mドルのストラテジックラウンドを調達しました。Draper Dragon、Anchorage Digital、Flow Traders、Solana Labs などが参加していて、エンジェルとして Solana 共同創業者の Anatoly Yakovenko氏と Raj Gokal氏も入っています。
Spout は、Solana 上でトークン化された米国株を担保にして、金利0%でUSDCを借りられるレンディングプロトコルを開発しています。LTVは50%固定で、例えば、10,000ドル分のトークン化株を預けると5,000ドルのUSDCが借りられます。
金利を取らない代わりに、担保の株に対して毎週 far OTMのカバードコール(権利行使価格が今の株価からかなり上にあるコールオプション)を売り、そのプレミアムを貸し手に渡す仕組みになっています。これまで富裕層やプライムブローカレッジの顧客しか使えなかった仕組みを個人向けに開けた、といえます。
ただし、コールを売っている間に株価が権利行使価格を超えて急騰した場合、その上昇分は借り手のものにはなりません。「0%金利」ではあるものの、コストがゼロというわけではなく、上値を手放す形で払っていることになります。
トークン化株は Spout Finance Inc. が自社で発行する「spAsset」で、米国の規制下のブローカーに保管された株式で1:1で裏付けられているそうです。現在は Solana の Devnet 上で動いていて、メインネットの時期は未定です。
2.Farcaster acquired by Balaji’s Network School, with new ‘social smart contract’ for users
分散型ソーシャルプロトコルの Farcaster が、Balaji Srinivasan氏の Network School に買収されました。
しばらくはNeynarというプロジェクトがFarcasterを買収し運営していましたが、このタイミングで、Neynar共同創業者は離れ、他のメンバーは Network School に加わって開発を続けます。
トークンローンチパッドの Clanker については言及がなく、別の買い手を探す可能性があるそうです。
そしてFarcasterは「Network State Protocol」に名前を変え、オンラインのコミュニティを最終的に物理的なコミュニティにしていく、という方向性を掲げています。
アプリを開いてみると、ユーザは「social smart contract」という新しいルールに同意するかどうかを選ばされます。同意するとアクセス用のNFTがオンチェーンで発行されます。ヘイトスピーチ、詐欺、AI生成コンテンツを自作と偽ることなどが追放の対象になります。同意しない場合は読み取り専用になり、鍵、資金、フォロワー、投稿履歴は別のクライアントに移されます。また、ボット対策として人間であることの確認も段階的に求めていくそうです。
3.Binance.US Seeks $100 Million to Expand Its Crypto Business
報道によると、Binance.US が100Mドルの調達を検討していて、評価額は約1Bドルを目指しているそうです。
2022年に4.5Bドルのプレマネー評価額で、200Mドル以上を調達していたので、今回はその4分の1以下の評価額になります。2023年に Binance 本体が米当局と和解して以降、Binance.US は米国でのシェアを大きく失っていて、今回の調達で巻き返しを狙っています。
調達した資金は、返上した州の送金業ライセンスの一部を取り戻すことや、予測市場など新しい事業に使う計画になっています。また流動性を外部(Binance の国際取引所を含む可能性あり)から引き込むことも検討しているとあります。
4.Multiliquid closes seed round led by Polychain
Multiliquid がシードラウンドを調達しました。Polychain がリードし、Strobe Ventures、CMT Digital、Metalayer Ventures、Generative Ventures、Circle Ventures が参加しています。累計調達額は$8Mドルになります。
Multiliquid は、トークン化資産向けの機関投資家用の流動性プロトコルです。トークン化された国債やMMF、プライベートクレジットなどとステーブルコインを、1つのアトミックなトランザクションで交換できるようにします。
背景として、トークン化ファンドの申込・償還は数日かかるケースが多く、またGENIUS法で決済用ステーブルコインの発行体が保有者に直接利回りを払えなくなったため、利回りのあるトークン化資産と決済用ステーブルコインの間を24時間いつでも行き来できる仕組みが必要になっている、と説明しています。
対応しているトークン化ファンドには Wellington Management、VanEck、Janus Henderson、Fasanara のものがあり、ステーブルコインはUSDCなどに対応しています。
5.Fission Raises $10M Series A Led by Pantera Capital to Bring Liquidity to Digital Private Markets
Fission が$10MドルのシリーズAを調達しました。Pantera Capital がリードし、Circle Ventures、New Form、gumi Cryptos Capital、Borderless Capital、GTSのCEOである Ari Rubenstein氏などが参加しています。
Fission は、トークン化されたファンド向けの流動性レイヤーを開発しています。ファンドのトークン化は進んでいるものの、償還は定期的なウィンドウでしかできず、セカンダリの流動性も乏しい、という問題があります。Fission は、適格な投資家がファンドの償還サイクルを待たずに資金にアクセスできるようにします。
プライベートクレジットやオルタナティブなど、機関投資家向けのトークン化ファンドを対象にしていて、投資家の適格性や譲渡制限などの規制要件に沿った設計になっています。すでに数百万ドル規模の償還を処理しているそうです。
6.Tether Invests in AIsa to Expand Its Push into AI-Powered Payments and Programmable Money
Tether が、AIsa への戦略的投資を発表しました。金額は公開されていません。
AIsa は、AIエージェントがデータ、ソフトウェア、計算リソースにアクセスして支払いまで行えるようにするプラットフォームです。
普通AIエージェントのためのデータやツールごとにアカウントや契約が必要になり、結局人間が先にセットアップしないといけない、という問題がありますが、AIsa は、1つのAPIキーでAIモデル、データ、API、SaaSツール、計算リソースにつなげられるようにし、利用量に応じて法定通貨かステーブルコインで課金します。企業側は支出上限を設定できます。
AIsa によると、すでに25万以上のエージェントが動いていて、1億件以上のトランザクションを処理し、5,000以上のAPI・スキル・モデルに1つのキーでアクセスできるそうです。前回のラウンドは Alibaba と Tribe Capital が共同リードしていました。
Zaria が$5.2Mドルのシードを調達しました。Lightspeed がリードしています。
Zaria は、ストラクチャードファイナンスとデジタル資産担保ローン向けのリアルタイムインフラを開発しています。
従来のストラクチャードファイナンスでは担保の確認を定期的なバッチ処理で行っていますが、証券担保やデジタル資産担保、トークン化されたレンディングでは、リアルタイムの監視や自動マージンコールが必要になってきています。
Zaria は、OCC(米通貨監督庁)に「Zaria National Trust Bank」という信託業務に限定した特別目的の国法銀行の免許を申請中です。認可されれば、取引のライフサイクル全体を1つの連邦規制下の受託者で完結できるようになります。
プラットフォームはすでに Ledn、Maple、Galaxy、Kraken、Figure などと稼働していて、フォワードフローのローン売却プログラム、証券化で使われています。
8.DATA Network joins Sui and Walrus to scale the supply chain for AI training data
Sui Foundation が、DATA Foundation の DATA Network に$30Mドルを投資することを発表しました。
DATA Foundation は、もともと Story Protocol だったプロジェクトで、今年6月にAI学習データに焦点を移してリブランドしていました。
Cosmos SDKをつかった独自チェーンでしたが、それを廃止し、Sui 上のプロトコルとして動くようになり、またWalrusが DATA Foundation のアプリのデフォルトのストレージレイヤーになる予定です。
「Trace」は、AI学習データのオンチェーン登録簿で、各データの出どころと権利を記録し、提供者への支払いもします。これまでに2.5億件以上の登録があり、1日平均300万件以上のレシートを処理しているそうです。Trace に書き込んでいるアプリには Kled、Numo、Oto があります。
Sui 側の説明としては、インターネット上の公開データはすでに取り尽くされていて、次に必要なのは人から同意付きで集めた実世界のデータであり、EU AI法や訴訟によって来歴の証明がAIラボの調達要件になっている、ということです。
Sui では各データセットとそのライセンスをオブジェクトとしてトークンのように管理でき、Walrus を使うことで元ファイルの暗号化されたコピーを保存して、ライセンスを持つ買い手だけが読めるようにします。
$DATA トークンは1:1で Sui 上のプロトコルに引き継がれ、ロック中やベスティング中のポジションもそのまま移行します。
ぜひ今週分をシェアお願いします🎉
☕ Twitter: @CoffeeTimesTW
☕ バックナンバー: Substackのアーカイブからご覧ください。
本ニュースレターは情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産・金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
